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57.トキ帰宅

トキ帰宅


トキは帰都すると、みさきを送り届けて王宮に帰った


「お帰りなさいませ」

ロイの出迎えに片手で答え、そのままカイリの元に歩を向ける


ガチャ


部屋のドアを開けると、カイリが机の上の山のような資料に目を通していた


「ただいま」

声をかけるとチラッとこちらに目線を送り、再度手元の資料を、読み始めた


「で?どうだった?」

カイリは手元の資料に目線を落としたまま、今日の様子を尋ねてくる


「馬で少し散歩にでたんだけど……。カイリがみさきと出会ったという森に遭遇したよ」


「?!」

カイリは手元の資料を手放し、こちらに注目した


「まさか、僕があの森に出会えるとは思ってもみなかったよ。泉には何の魔術的なものも施されてはいなかった……ただ……」


「ただ?」


「声がした気がしたんだ。女性の声だった。何を言っているかは分からなかったんだけどね」


森での出来事を思い返しながらカイリに報告する


「あの森にある泉は先代のマリアである、あおいの魔力で出来た泉らしい」

カイリも泉のことを思い返しているようだった


みさきに出会うきっかけとなった泉

なんの引力だろうか、そこに引き寄せられた


「僕達はみさきをあおいさんに託されたのかもしれないね?」

トキはポツリと呟いた


泉で聞こえた女性の声はきっとあおいの声だろう。あおいのことを何も知らないにもかかわらず、そんな気がしてならない


その声の主の感情だけが頭に響いていた

みさきを案ずる、その気持ちだけが……


みさきにまとわりついていた恐怖の思念は、ただ、怖がっていただけなのか、それとも外的な要因なのか、はたまた、何かの導きなのか……


「で、みさきの様子はどうだ?」

「気になるなら自分で様子見に行ったら?」


「………」

カイリは、先日みさきが体調を崩す原因を作ってしまったことをまだ気にしている


「そうだね~。馬に乗るの慣れないんだろうけど、わりとすんなり僕に身を預けてくれたよ」


昨日までは、抱きしめるとカチコチに緊張して、微塵も心を許してくれなかったにもかかわらず、今日はみさきの方から抱きついて来たことに驚いた


彼女の信頼を得ることが出来たのか否か……

どちらにせよ、ああして甘えてくれるのは素直に嬉しい



「魔力特性を知ったみさきが、自分を避けたらどうしよう。とか、出発前までしょぼくれていた奴はどこのどいつだったか?」

カイリは、いつぞやの仕返しのように単語を選んだ


トキはカイリの座っている椅子の肘掛に軽く座ると、肩に肘を置いた


「みさきは僕にはだいぶ甘えてくれるようになったけど、カイリはまだ嫌われたままかな?」

と言って、横目でちらっとカイリを覗く


「……。」


(あ。いじけた……)


「ちょっと意地悪言い過ぎたね。ゴメンゴメン。カイリが渡したペンダント、ずっと握ってたよ。みさきは多分無意識だと思うんだけど」


「そうか」


ぶっきらぼうな物言いだけど、表情はどこか安心した様子だ


カイリの肩に手を回し、ポンポンと頭を撫でる


案外ヤキモチ焼きで、案外寂しがり屋で、それでいて人のことを考えすぎる優しい兄弟を、癒し、癒されるのはお互いだけなのだ


これからは2人一緒にいることを許された

その幸せを感じていた

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