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53.ハグと私と緊張と……

2人に送られて教会に帰ってきた私は

今、

トキ殿下の腕の中におさまって身動きが取れないでいた




カイリ殿下は後宮の方の様子を見に戻って行った


トキ殿下に付き添われながら部屋に到着する

カイリ殿下がお部屋訪問に来るのは大分慣れたと思ったけど、トキ殿下が私の生活空間にいるのは、なんだか不思議だ


あれ?でも、幽閉生活してるのに、結構自由に出歩くのかな?


「ここに来て大丈夫なんですか?」

「ん?あぁ。カイリがアレコレ手を回してくれちゃったから、大人しく外に出ることに。ね。」

そう言って、トキ殿下はソファーに座った


引きこもり辞めたんだ……


「なので……」

と言いながら殿下は私の手を強めに引き寄せる


「うわっ!!」

私はバランスを崩して、そのままトキ殿下に抱きついた

「すみませんっ!!」

慌てて離れようとしたけど、トキ殿下にしっかり抱きとめられていて、動けない


「あの……離して………欲しいのですが……」

「ん?なんで?」


いやいや。不可抗力で抱きついたままホールドされるって、心の準備というものが~…


そして、とても短いはずだけど、体感はとても長い時間が過ぎて今に至っている



「あの……いつまでこのままなんでしょうか……」


このドキドキに耐えられない

顔を上げたらトキ殿下に肌が触れ合う位置で目が合ってしまうし、かと言って、この抱きついたままの姿勢では私の恥ずかしいメーターが振り切ってしまう


「あ。苦しかった?」

そう言ってトキ殿下は腕のホールドを緩めて、私を少し体から離してくれた


開放されると思って油断した私は、そのまま腕から逃れようとソファーから降りるように体勢を整えた



トキ殿下は立ち上がろうとした私を開放してくれる訳ではなく、そのままバックハグをキメた


「ええっ!あのっ!!」

「ん?こっちの方が好きなのかなと思って」


いえいえ違います

離して貰える気配は無く、私は前のめりにうつむきながら、これからどうやってこの緊張に耐えれば良いか考えることにした


「う~ん……そうじゃないよ。こっち。」

と言いながら、トキ殿下は、私の目元を片手で覆いながら自分に背を預けるように私の姿勢を変えた


ひゃぁぁ!!!

トキ殿下の体温を背中に感じながら、私の顔の上には、トキ殿下の顔がある


目元を覆っていた片手を頭の上にずらし、サラサラと髪を撫でながら呟いた


「君が恥ずかしがり屋さんなのはわかっていたけど、もう少し慣れてくれると嬉しいな」


慣れるって何にですか!?

そもそも、私の生活にこんなに人と密着して触れ合うという習慣は無いのですがっ……


「まぁ、でも、カイリが嫌われたって言うのもわかる気がするな……クスッ」

そう言うと、トキ殿下はクスクスと笑いを堪えながら呟く


「先日は随分素直だったのにね?」


あぁぁぁあぁぁぁ……

恥ずかしさの思い出を引っ張り出さないでくださいぃーっ!

行き場のない手で顔を覆った


「とりあえず、力を抜いてもっと僕に甘えればいい」


甘えるって……苦手です……

そういえば、アルバさん達がトキ殿下に甘え方を教わると良いという話をしていたのを思い出した


「あのぉ……ルイ君とルカ君って、昔からあんな感じじゃなかったんですか?」


「ん?ルゥ達はまぁ、境遇も魔力もちょっと特殊だから仕方がなかったけど、僕にとっては可愛い弟だからね」

「2人には人の心の声が筒抜けみたいなものだから、周りを遠ざけてしまうのは仕方がなかっただろうね」


その2人をどうやって甘々にしたんだろう……


「アルバさんが、トキ殿下は甘えさせ上手だと言ってました」


「え?そうなのかい?別に普通だと思うけど……」


トキ殿下は後ろから抱きすくめていた私を軽く抱き上げ、自分の膝の上にのせると

「それがお好みなら……」

私の頬をトキ殿下の指先がなぞる

「僕は歓迎だけど?」

そう言って顔をすっと上向きにさせられて、トキ殿下とバッチリ目が合う

真っ直ぐ見つめてくる紫色の綺麗な瞳


わわわわわわわっ!!


目線が泳ぐ


「あ……あの……っ……!」

私は力なく抵抗する


すると、トキ殿下は柔らかく微笑み、

「そんな表情も可愛いけど、まずは……」

そう言って私を下ろし、普通にソファーの上に座らせてくれた

並んで座っているトキ殿下は、私の手をそっと握る


「この緊張を解かないとね」


ようやく開放されたわりには、ドキドキが止まりません

緊張するなという方が無理な話で

トキ殿下の手のひらの上で転がされてるだけですハイ


このまま手は離して貰えないのだろうか……


緊張は解ける訳もなく、ドキドキは少しおさまりつつ、無言に耐えられない私は、トキ殿下の方をチラリと見た


「ん?」


「いえ……」


誰か、トークの話題をください……


「フフッ……」

いきなりトキ殿下は笑いだした


「ごめんごめん。いつまでそんなにガチガチに緊張したままなのかなって思ってたんだけど、何も喋らなかったらもっと緊張するね?」


クスクス笑いながら話すトキ殿下は、とても楽しそうだ


「そうだ。明日一緒に出掛けようか?」

「え?どこへ?ですか?」


唐突な提案に驚くと


「ん~どこに行くとか全然考えてないけど……」

「どこか景色が良い所にしようか。どうだい?」


「はい。」

どう答えればいいのか分からず、ぶっきらぼうに答えてしまった


「じゃあ明日また迎えに来るよ」

そう言って握っていた私の手をすくい上げると、指にチュッとキスを落として部屋を去っていった



トキ殿下……距離感近すぎて私の心臓がもたない

こうして私のお出かけが決まった


結局あの噴水は何だったんだろう

トキ殿下の攻撃がすごすぎて、すっかり忘れていた


お姉様の声がした

あれも一体なんだったのか……

頭痛は不思議と消えていた



うーーん。

考えても私に分かることはなくて

とりあえず寝て明日のお出かけに備えることにした

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