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45.トキ殿下の生い立ち

「王家の者が継ぐ魔力は大きすぎる。精霊の加護の元に命を受けた僕達は、生まれたばかりの体では制御しきれないほど強い魔力を持って生まれる。だから、生後は特殊なフラスコで個々に育てられ、1ヶ月で5歳くらい成長するんだ」


「特殊な育ち方するんですね?!」

私の知っている子育ての形とは全く違っていて、全然想像がつかない


「そうだね……。産まれたばかりの僕は魔力の制御が出来なかったから、触れるもの全て僕の魔力で毒されていった……母親も例外ではなかったんだよ」


「生まれた時から離れようとしなかった僕とカイリを無理やり引き剥がしてフラスコに入れようとした者、その魔力を抑えようとした者、カイリと引き剥がされて、泣きわめく僕を抱き上げた母親を、僕はこの魔力で次々と殺してしまった……」


「え?!!」

なんか、悪役っぽい!!


「僕に触れると、その魔力が人を毒する。だから、僕が幼い頃はずっとカイリと手を繋いでいたんだ。」


そう言って、トキ殿下は自分の手を見つめた


「双子は対をなす存在だからね。カイリの魔力特性は聞いているかい?」


「はい。教えてもらいました。魔力を他のものに変化させたりすることが出来るって」


「そうだね。そして、僕の魔力特性は『毒』魔力自体が人体に害をなす物になりかねない。カイリは僕の毒も無毒な魔力に置換してしまえる」


「フラスコから出ると、魔力を自分である程度制御できるようになるくらいに成長していたけれど、僕は自分が触れたものが全て毒されていくようで、怖くて何も触れられなかったんだ」


「そして、しばらくして、僕は王妃を殺した罪で監禁された。罪状は取ってつけたものなのかもしれない。ただ、僕の魔力を朝廷の役人達が恐れて、自分に害のないところに閉じ込めておきたかっただけかもしれない。」


「もぅ、魔力はコントロールできるようになったから、問題は無いんだけど、周りの目はそうではないからね……」



「そんなこと…!きちんとわかってもらえるんじゃないですか?!」


「いいや……」

トキ殿下は首を横に振る


「噂は独り歩きするものさ。今となっては国中の人が僕を恐れている。だから、僕はこうして自主的に幽閉生活を送ってるって訳なんだ。それがこの国の人々の心の平穏を守ることにも繋がる」


『危険な人物は、牢に幽閉されています』という体裁だけで安心を得ているとか不思議だ……

その人のことを何にも知らないのに、人は噂に飲み込まれる


「自主的ってことは、別に今は誰からも罪に問われてはいないってことですよね??じゃぁ……」


トキ殿下はまたもや首を横に振り、


「今でも僕は少し怖いんだ……人に触れるのが……」


そう言ってトキ殿下は手袋をつけた指を組んだ


「その手袋……」

聞いちゃいけないのかな?と思ってたけど、なんだか、思ったことが素直に口から言葉になって出てしまう


「ん?これかい?これは、僕の魔力を抑制するために、フラスコを出た時からつけられていた拘束具の一種だよ」


「こうそくぐ?」


「そう。触れたものに魔力を及ばさないようにするためのもの。かな?」


「なんで……?ですかぁ?」

なんだか、頭がぼーっとしてきた。そんなにズケズケ聞くはず無かったのに、口からどんどん言葉が出てくる……


「大切なものを、傷つけたくないからだよ」


そう言って、トキ殿下は、私を真っ直ぐに見つめた。甘く痺れるその視線から目をそらすことが出来ない


(ぁ……どうしよう……ちから…入らなぃ……)


意識がふわふわした私をトキ殿下が脇から優しく抱きとめる


「そろそろ香が効いてきたかな?」


「?」

香?なにそれ。私、今、何も考えずに言われたことに反応しちゃうんですけど!?


「僕のことを少しは知って貰えたかな?次は君のことを教えてくれるかい?」


「はぃ……」


「みさきのことは、カイリから全部聞いているよ。でも、もっと教えて欲しいな~?」

そう言って私の頭を自分の胸元に引き寄せる


「みさきはどうやって異世界から来たの?」

「分かり……ません」


「じゃぁ、先代のマリアだって言うあおいさんが今どこにいるかわかる?」


あおいお姉様……どこにいるの?いつの間にかいなくなっていた……なんで?……なんで……


「わからない……です……」

考えたら涙がポロッと流れた。


「そぅか……」

そう言って私の頭を優しく撫で、涙をスルッと指で拭った

「じゃあ、ちょっと話題を変えようね」

「カイリのことは好きかい?」


え?なんでここでそんな……急に……

「………す……キ……」

ちょっと待って……正直すぎるでしょ?私!!


「素直でいい子だね」

「じゃあ、カイリに、触れられるのは嫌じゃない?」


「……ぅん」

トキ殿下の言葉が気持ちいい……何この感覚

その言葉がもっと欲しくって、どんどん話してしまう……


「じゃぁ、僕に触れられるのは?嫌じゃない?」

そう言って私の頬をトキ殿下の手が優しく包む


「ャ……じゃ……なぃ……」


「ん。そうか…」

目を細めて柔らかく微笑むトキ殿下を、ぼーっと眺める


「君は……恥ずかしがり屋さんの割には、だいぶトロトロになったね?」

そう言いながら、力なくうっすら開いた私の唇を指でなぞる


ゾクゾクする。ても、嫌なゾクゾクではなくて、むしろ……


「魔法が効きすぎるのもちょっとアレだね……」


そう言うと。どんどんトキ殿下の顔が近づいてきた


「ぁ……っ……」

完全に抵抗できない私は、なされるがまま


トキ殿下の唇が私の唇と重なる

そのまま口が触れるか触れないかの距離で

『おやすみ』

と囁かれ、その言葉とともに眠りに落ちた

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