38.訪問
言われた通り支度を終えると、フェンさんが迎えに来た。どうやら、朝の議会が長引いているらしい
フェンさんの手を取って、空間転移で移動する
到着した場所は、見たこともない石造りのどっしりとした塔だった
「ここは……」
辺りを見回しながら私がつぶやく
「ここは地下牢の入口です」
「え?!わわわわ!!わたしっ!!牢屋入りですか??!!」
フェンさんは真面目な顔で首を横に振った
「いいえ。違います」
(びっくりしたーー!)
とりあえずホッとした
「こちらには、自主的に幽閉されているカイリ殿下のご兄弟のトキ殿下がいらっしゃいます」
(んんっ??)
すいません……私の理解力が及ばなくて理解できないです
「自主的に??」
「はい。トキ殿下がご自身で望まれております」
そういえば、前に幽閉されている双子の兄弟がいるって言ってたような……
「トキ殿下はカイリ殿下の双子のご兄弟であらせられます。ちなみに、王位をお2人で継がれる予定です」
待って待って、王位を次ぐのに、自主的に幽閉って、意味わからないんですけどー!!
フェンさんは地下牢へ繋がる階段の門をあけ、トコトコと階段を降りていく
私はその後をついて階段を降りていった
螺旋に続く階段を何周か降り終えると、更に鉄格子の門が現れた
「ここから先は特殊な空間の結界が施されておまして、登録された魔力の者しか通れない仕組みになっております」
そう言って、脇にある石版に手をかざすように促された
私が石版に触れると、魔法陣が浮かび上がり、少し光ると、元の石版に戻った
フェンさんは、それを見届けると
「少しお下がり頂けますか?」
と言って、私と石版の距離を離すと、石版に触れ、何か呪文を唱えている
程なくしてフェンさんが手を離し、1歩下がると、一面に大きな紋様がパッと浮かび上がって消えた
何が起こってるか分からないけど、結界ってことは、きっとフェンさんの魔法が施されてる場所なんだということにしておこう
「これで登録が出来ましたので、以降はどこからでもいらっしゃることが出来ます」
えっと、私一人ではどこからどこへも自由には来れませんが~?
すると、鉄格子が開き、道が開かれた
「御手をよろしいでしょうか?」
そう言って手が差し出される
私はその手を取り、フェンさんに続いて行くと、一瞬空間が歪んだような錯覚に囚われ、天地が分からなくなった
あれ?っと思った時には既に何事も無かったように感覚が戻った
「御加減はいかがでしょうか?」
「ちょっとクラっとしたけど、今は大丈夫です」
「それならよろしゅうございました」
そう言って手を離し、階段の先に進むと、今度は扉が現れた
「こちらで少しお待ちください。カイリ殿下がいらっしゃる予定ですので」
フェンさんはそう言って、扉の脇にある石版を見つめる
(もしや、ここからくるの?)
そう思っていると、予想通りその石版からカイリ殿下が現れた
「すまない。待たせたな」
「いえ。今来たところでございます」
フェンさんと短い挨拶をかわし、扉に手をかける
ガチャっと開いた扉の先は、地下の幽閉施設……だと思っていたのに、そこは私の想像を超えた空間が広がっていた