34.解呪
カイリが、封印を解こうと決めると
「みさき様は、光の加護をお持ちです。自然界における光の力を自身の魔力としてお使いになることが出来るはずなのですが、ご自身で魔力操作ができません。」
「今宵は月が出ておりますので、月の光の力も借りることができましょう」
そう言って、ユミは部屋をあとにして行った
「ルカ。みさきにかかった封印を無効化することは出来るか?」
カイリは、まずルカに相談し、解呪の糸口を見つけようとした
ルカはみさきの額の文様に触れると
「封印が何重にもかかってる」
と、分析した
「1番深い記憶の封印は触れられない。でも、今眠っているみさきを起こすことは出来ると思う。ただ、入口は開いてもどこにみさきがいるか探さないと……」
そう言ってルイの方を見た
ルイの魔法属性は幻術だが、その魔法は、人の心の隙や、魔力に干渉して作用するものだ
「そうだね。そこからはボクの出番だね」
そう言ってルイはルカの手を握って、カイリに反対の手を差し出す
カイリはルイの手をとり、反対の手をみさきと繋ぐ
ルカもみさきの手を握り、4人で円を描くように手を繋いで目を閉じた
ルカの魔法でみさきの封印にほころびを作る
異物を拒むように押し出されるところを、ルイの魔法でみさきの心に干渉して道を開き、カイリはその冷たくて広い海の中を手探りで進んで行く
暗い海の中に漂うみさきの気配を手繰り寄せる
(どこだ!?どこにいる……?)
すると、海の底にゆっくりと沈んで行くみさきの姿を見つけた
水の流れが激しく、なかなか近づけない
海の中にたゆたうみさきの目は、虚ろで何も光を宿してはいない
(救ってやりたい)
そう思った
(目を覚まして欲しい)
そう強く願った
流れにあらがっていると、海の中に一筋の光がキラリと差し込む
その光が柔らかく辺りを包むと、水の流れは穏やかになり、その隙にみさきの体に触れた
すると、激しい気泡が湧き上がり、その泡に勢い良く押し出されるように浮上した
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はっ!と目が覚めると、夜明け前の薄明があたりを包んでいた
カイリの左手に繋がっているルイを見ると、大分魔力を削られてはいるが、無事なようだ
2人の無事をサッと確認して、右手に繋がっているみさきに意識を集中する。
まだ体は冷たいが、表情は穏やかに眠っている
あとは目を覚ました時にどこまで記憶が開放されるか……大丈夫だろうか……
朝日が昇り、陽光が差し込むベッドでみさきが目を覚ます
「……良かった……」
いつもと変わらない表情に安心した
知らなかったこの国の過去……宮廷の資料でもそんなことはどこにも記されていなかった
多くの者の記憶を操れる。そんな大掛かりな魔法がほんとにかかっているとしたら……
カイリは前王朝について、調べ直す必要性を感じた