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22.カイリ殿下お疲れモード

夜が深まると、夜空の闇もいっそう濃くなる

なんだか息苦しく感じるのは気のせいなんだろうけど、気持ちが不安定になるのは否めない


私の体調の悪さを危惧して、大人しく寝ているようにと、ユミさんに寝室に缶ずめにされているけど、眠れるわけない。これから訪問客が来るのだから……


ちょっとお水を……


部屋のドアを開けると、そこにはユミさんが水差しを持って立っており、その後ろにはカイリ殿下の姿が見えた


「どこに行かれるのですか?」

ユミさんの尋問にあう


「あの、お水を……」

「今、丁度お持ちしたところですので」


そう言って、中へ引き戻される


ソファーに座り、お水を少し飲むと、ユミさんは私の目の前に座り

「やはり顔色があまり良くありませんね」

と言って、私の手を軽く握る


少しすると、「それでは、ごゆっくりお休みになってください」


そう言って部屋を去っていった


うぅ……休まるわけないです……

このまま、さあ、おやすみなさい!と、寝るか、一晩このまま語りつくして夜を明かすか……

そんなことを思いながらカイリ殿下を見ると、あちらも、ものすごい疲れた様子でソファーにもたれていた


「あの……かくまうって聞いてるんですが、どういうことなんでしょうか……?」

私は会話を選択した


「弟達が帰ってきたんだが、朝から晩まで傍から離れない。挙句、夜は私のところで寝るものだから、私の気が休まらない……」


「弟いたんですか?」

「あぁ。王家は男児に限ってだが、必ず双子が生まれる。2人の王がそれぞれの魔力を精霊に捧げ、祈ることで母体に命が宿る」

「え?双子?!」

「そうだ。2人で王として国を収めるのが習わしだ。」


ということは……

「カイリ殿下にも双子の兄弟がいたりするんですか?」

「あぁ。いるぞ。今は幽閉されていて、外には出てこないがな」


いるんだ!!ても幽閉?なんで??!

私はカイリ殿下についても、この国についても、全くなんにも知らないことを思い知った


「はぁ……。」

カイリ殿下は深いため息を吐きながら、独り言のように近況を吐露した


「都市の報告を終えたら、旅の思い出話をわんさと述べはじめ、生返事をしようもんなら、『聞いてる?!!』とたしなめられ仕事にならん。風呂も一緒、寝る時も川の字でサンドイッチにされ、挙句寝相の悪い奴らに蹴られまくって眠れん」

「後宮の私室で休もうと、こっそり向かったら、鬼電してくるんだ…あいつら……。フェンを上手く使いやがって……くそっ」


そんなに着いてこられても、ある意味きちんと付き合っちゃうのがカイリ殿下の、優しいとこなんだろうな~弟くんめっちゃブラコンじゃん


「弟くんたち寂しいんじゃないですか?」


「まぁな……。幼い頃から地方の統治を整える仕事をしている。それが故に滅多に王都に帰ってこないのでな。帰ってきた時くらい甘えさせてやりたいんだが……。」

「はぁ………。」


ため息が止まらない殿下にかける言葉が見つからない


「それより、体調が良くないそうだな?」

「あ。いえ、私は別に!!」

そう言って手をパタパタ振るが、その手を握られてしまう


「魔力がだいぶ乱れているな。月がなにか影響するのか?」


「よく分かりません。でも、新月の夜は落ち着かなくて…光のない空に飲み込まれてしまいそうで怖いんです……」


私は正直に報告した

すると、カイリ殿下は、机の上に申し訳程度に置いてある飴玉を1つ選んで包みを開け、手のひらにのせると口元に近ずけ、何やらボソボソ呟いた


なんか、似たような光景前にも見た気がする……


過去を思い出して、私が動揺を隠せないでいると、私の唇に飴玉を押し付けて「飲み込め」と命じた


飲み込めるサイズの飴玉じゃない……喉に詰まっちゃうよ……


拒否権は無いので、口を開けて飴玉を受け入れると、口の中でトロッと溶けて広がった


「……んっ………」


飴が甘いのか、込められた魔力が甘いのか、その甘美な刺激で脳が痺れる


ゴクリと飲み込むと、体が少し暖かくなる感じがした


カイリ殿下の魔法の力なのか、ただ眠いだけなのか、頭がボーッとしてきた

眠気に囚われはじめて、フワフワとした空気が気持ちいい

これだから寝落ちは辞められない


「おい。ここで寝るな」

カイリ殿下が、私を揺すって起こそうとするけど、私はこの眠気とちょっと戦ってる気持ちよさに抗うことは出来ない


「まぁ、良い。眠れるようなら眠った方がいい。」

頭を撫でてくる手が気持ちいい

そのままカイリ殿下にもたれて、まどろみを堪能していると、私を抱き抱え、ベッドに運んでくれる


カイリ殿下に触れていると気持ちいい。このまま幸せに眠りにつきたい

私はベッドに寝かされ、離れていく殿下を抱きとめて、抱き枕にして夢の世界に旅立った


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