21.新月の夜
カイリ殿下の後宮見学ツアーを終えてから、なんの音沙汰もないまま数日が過ぎ去ろうとしていた
最近色々なことがあったなぁ……
カイリ殿下はあれからどうしているだろう……
自然と胸元のペンダントに手が伸びる
今まで、外の人に会うこともなかったし、別に興味もなかった。けど、ほぼ毎日のように会っていたのに、急にパタリと音沙汰が無くなるのは、何故か寂しく感じてしまう
今夜は新月だ
月の光が無い夜は闇に飲まれるようで少し苦手だったりする
そんな夜は、あおいお姉様が私の手を握って眠るまで一緒にいてくれた
はぁ……。
エリちゃんのところでこっそり一緒に寝ようかな……
と考えていると、コンコンっとドアをノックしてエリちゃんが現れた
「先程フェン様が使いにいらっしゃいまして、今夜カイリ殿下がいらっしゃると仰ってるのですが……」
「が?」
「なんでも、相当お疲れなようなので、一晩かくまって欲しいとのことなんです」
「かくまう?誰を?」
一応確認しておこう
「カイリ殿下です」
「かくまうって誰から?」
「わかりません……」
「………。」
そんな重大そうな任務、もっと他に適任がいるんじゃないの?
この教会には客間と言われるものがない
誰もが入れる礼拝堂は別として、中庭からこちらの居住区は、結界があるので、そもそも誰もが立ち入れる場所では無いからだ
陛下がお泊まりできるような場所ではないんだけど……
「お部屋……どうするんだろ……」
気になることを告げると、エリちゃんも
「それが……ユミさんが……」
と、言いかけるとコンコンっとドアをノックしてユミさんが現れた
「みさき様」
なんだろう。なんか、いやな予感がする
「今晩は新月です。体調はいかがですか?」
「一応今のところなんともないです」
「カイリ殿下がこれからいらっしゃるとのことですので、ついでに一緒に居ていただくとよろしいかと存じます」
「いや。あの、ユミさん。この家には客間的なものがなかったように記憶してるんですが」
「カイリ殿下もお疲れの様だと聞いておりますので、一緒にお眠りになられるのがよろしいかと」
「はい???」
「それでは、エリ、お部屋の準備をしますので、一緒にこちらへ」
そういうと2人は部屋から出て行った