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20.隠れた私室

壁掛けを通って来たところは小さなお部屋だった


大きな天蓋つきのベッドが置かれていて、調度品の類は飾られていない


目につくのは、サイドボードに置かれた特殊な形の電話だった


私がキョロキョロ辺りを観察していると、


「ここは私の私室として後宮内に用意してある場所だ」


と、説明された


見渡しても扉は無い、

出入りできるのは、おそらく空間転移の魔法だけなのかもしれない


壁には先程と同じ国の地図のような壁掛けが飾られていた


ベッドに腰掛けるよう促され、私がちょこんと腰掛けると、自身も隣に腰を下ろし、私に語りかけた


「後宮はどうだ?」


ここは後宮と言っていいのか?と思いつつ返事をする


「意外でした。皆さん自由で、楽しそうで、いがみ合いとかしないのかなぁって」


「皆、仲が良い。大概ガーデンパーティーだの、お茶会だのと言う言い訳をつけて、皆でワイワイ騒いでいるぞ。みさきにとっても、悪い環境では無いと思うが……。まぁ、無理にとは言わない」


前に、後宮に来ないかというのは、遊びに来ないかではなくて、やはり、住まないかというお誘いだったのか……いや、わかってはいたんだけど……


すると、カイリ殿下は、ベッドにそのままパタリと寝転ぶと、珍しく沢山語り始めた


「宮廷は息苦しい。私欲と思惑(しわく)が渦巻いている。妬み、ひがみ、騙し合いなんて日常茶飯事だ。人を貶め、自分の手柄と据えることしか考えてないような役人が山のようにいる……」


「この世の魔力の穢れは全て宮廷で生まれてるのではないかと思うほどだ……」


「魔力が強い者が生み出す負のエネルギーは他に与える影響も大きい。その魔力にあてられて体調を崩すくらいのもので済めば良いが、呑まれて攻撃的な感情に支配されると、国家が崩れかねん……」


カイリ殿下は天井を眺めながら、でも心はもっと遠くを見つめているようだった


「でも、その魔力を浄化するためにクリスタルがあって、私がいるのではないかと思うのですが……」


私は、自分が教えられてきた役割を口にした


すると、殿下は横向きになって体を縮め、私を見上げる

その視線はどこか寂しそうで、苦しそうだった


「そうだな……」

そうつぶやいて目を細めると、私の指をなぞるように手を重ねてくる



なんか……ドキドキするんですけど

「……カイリ殿下……ちょっと………あ……の」


『ジリジリジリジリ!!!!!!!』


なに!?なになに??!!!

びっくりして立ち上がる

私が怯えている様子に目を丸くした殿下は

ふぅ-っと息を吐いて起き上がり、電話のようなものに触れる


「……………。」

出たくない。みたいな空気が伝わってくる


「………………。」


「はぁ……。わかった。そのうち戻る」


電話に触れたま会話が終わったようだった

きっと魔法での通信機器なのだろう


「ゆっくりしていたいのだが、あいつらが帰ってきた……。仕方がないから王宮に戻らねばならない」


ものすごくめんどくさい。という表情で壁掛けの地図の前に立ち、


「行くぞ……。」


と言って、私を教会まで送り届けてくれた



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