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171 ★番外編★ 猫との遭遇4

え?まさか?

この…………ねこ???


たどり着いたところには、私の身長より大きな檻と、その中に丸々と太った巨大なデブ猫が収まっていた


ええっ?

わたしが見た猫はちっちゃかった気がしたんだけど?


「檻は特殊な結界となっております。私が解除しない限りは逃げ出すことはないでしょう」

状態を確認したフェンさんがカイリ陛下に報告した


トキ陛下と手をしっかり繋いだまま、カイリ陛下が、檻に近づく


「みさきはあまり近づくな。」

後を追って猫に近づこうとした私をカイリ陛下が止めた


「みさき様。危険かもしれませんので、私のそばを離れないでください」

ロイさんが半歩先に出て言った


私は少し離れたところから、猫と陛下方を見守った


カイリ陛下は、猫をじっと見つめ、しばらくすると口を開いた

「トキの魔力は、さぞ、美味かっただろうな?」

ヤバい。口調は淡々としてるけど、カイリ陛下の目が座ってる……こ……こわっ…


「さて、猫よ?」

圧が……

声色は落ち着いているけど、発された言葉には重力が何倍にも働いてるのかってくらいに重かった


「返して、貰おうか?」

カイリ陛下、だいぶお怒り……というか、トキ陛下の時間が返されなかったら、国が消し飛ぶんではないか?と言うくらいの負の魔力が溢れている


隣の少年トキ陛下は、カイリ陛下の手を握ったま猫を見つめている


猫は焦ったのか、逃げ出したいのか、檻をカリカリと引っかいたり、かじったり、必死の形相で、とにかく今すぐ檻を開けてくれと言わんばかりの行動を見せている


「逃げるなよ?」

とどめを刺すような切れ味の良い言霊が猫に刺さる

猫は「ニャ~」と返事をすると、さっきの必死さを見せず、きちんと足を揃えて、おすわりをしてスタンバった


「ロイ。みさきを頼む」

「フェン。開けろ」


カイリ陛下は、2人に目配せし、短く指示を出した

2人はコクリと頷いて、フェンさんが檻を開けた


すると、猫は勢いよく飛び出し、トキ陛下に向かって一直線に駆けた


そして、パクリとトキ陛下に噛み付いた


眩い光が場を埋めつくして、目を開けていられない

ギュッと目をつぶって、恐る恐る目を開ける

トキ陛下は、何が起こったか分からない様子で


「どうしたの?」

と、みんなを順番に見渡している


も、戻った!!!


さっきまでの巨大な猫はどこにも居なくて、代わりに、私が見た小さなやせ細った猫が1匹、トキ陛下の目の前でペッチョリお腹を地面に着けていた


ロイさんが警戒を解いて、私をトキ陛下とカイリ陛下の所まで誘導した


私はトキ陛下を見上げる

さっきまでの見下ろせるサイズの少年の姿はどこにもなくて、トキ陛下は、いつものように私を見つめ、頬にスっと手を伸ばす


優しく私に触れてくる指

私はトキ陛下の指にそっと手を添わせてトキ陛下を見つめた


「ん?」

私を見つめて微笑むトキ陛下の姿が、なんだか嬉しくて、衝動的に抱きついた


「んんっ?どした?」

トキ陛下は、少し驚いた声を上げつつ、私を抱きしめてくれた


トキ陛下だっ!!

少年トキ陛下には避けられまくって、しょうがないと思いつつも、やっぱり寂しかった。ということを自覚した


トキ陛下は私を抱き込んで頭を優しく撫でた

触れられることがこんなに嬉しいなんて……


「みさき?珍しいね。どうしたの?」

トキ陛下は、私の耳元に顔を寄せ、あやす様に言葉を紡ぐ


私は衝動に任せたまま、トキ陛下に甘えた


カイリ陛下は、平伏した様子の猫の首を持ってつまみ上げた

猫は、私が見た時よりもやせ細って、くったりしている


「この猫も、ある程度魔力が安定した地にいれば人を襲うこともないだろう」

そう言って、自分の目線に合わせて猫をつまみ上げて見つめた


「フェン。一応檻を用意しろ。連れていく」


なんとっ!!

猫も重罪で監禁されるのだろうか……

容赦ない……

あれだけの圧を放っていたカイリ陛下……

激おこかも……


カイリ陛下は、ハンカチを取りだして、猫の首に巻いた

猫は不思議そうにそのハンカチの匂いを嗅ぎつつも、怯えた様子でカイリ陛下を見ている


「空気が良い後宮なら、無差別に人の魔力を奪おうとしないだろう」


そう言って、フェンさんが用意した魔力の檻に猫を入れた


猫は不思議そうな顔で檻の中から大人しくこちらを見つめている


カイリ陛下は檻の外から指を入れ、猫の首に巻いたハンカチをチョンチョンと触りながら

「少ししたらきちんとしたものを作らせる。それまではこれで我慢しろ」

その言葉に猫が反応して、カイリ陛下の手をしっぽでフワフワと撫でた


「う~ん……。よく分からないんだけど、この猫と何かあったのかい?」

トキ陛下は、私を両腕に抱き込んだまま、カイリ陛下にたずねた

その辺の記憶はポッカリなくなっているらしい



「帰り道で話そう」

そう言って、猫の檻をフェンさんに預けて立ち上がり、猫騒動は一件落着して王宮に戻った




後日_________

後宮のお庭で定期的に開催されているお茶会に参加する

いつでもきれいな花が沢山咲いている後宮のお庭は、お花のいい香りと、澄んだ空気で満ちている


いつしか私の癒しの空間になっていた


ラディアさんのお迎えで中庭までエスコートされると、そこにはカイリ陛下とトキ陛下が、お庭に設置されてるベンチでティータイムを過ごしていた


カイリ陛下の膝の上には、あの白猫がちょっと緊張した面持ちで座っている

猫の首にはハンカチではなく、繊細な組紐で編まれた首輪がついていた


「首輪?」

私はカイリ陛下の隣に座って猫を見つめる


「あぁ。こうしておけば、無差別に人を襲うこともない」

そう言って首輪についてる飾りを転がす


赤い宝石がキラッと輝いて見えた


私は、それに気づいてカイリ陛下を見つめた

カイリ陛下は穏やかな表情で猫を撫でた


すると、猫はカイリ陛下の手を抜け出して、地面に降り立つと、私の足元にじゃれて、影になるようなところにチョコンと座った


「ハハッ……フフフッ……!!」

笑いを堪えられないトキ陛下がカイリ陛下の隣で笑い転げている


「カイリっ…フフフッ……嫌われすぎじゃない?!」


え?そうなの?

さっきまで膝の上に乗ってたんじゃ……いや。でも、懐いている素振りはなく、来いと言われたから来た。みたいな?


カイリ陛下は、不満げに顔を歪ませ、私の足元の猫に向かって手を伸ばして撫でようとする


すると、猫は1歩ズリッと、後ずさりしたように見えた


全然懐いてない!!


その様子を見たトキ陛下は、さらに笑い転げ、目から涙を流しながら、面白がってカイリ陛下の肩を叩いた


「………。」

カイリ陛下は、納得いかない。という顔で猫とにらめっこをしている


首輪の主はカイリ陛下のはずなのに

全然懐いていない……


多分、トキ陛下の時間を返せって迫られた時の恐怖が抜けないんだろうなぁ………


まぁ、人でもトラウマになるレベルに、カイリ陛下の圧はヤバかった


でも、その猫を保護して、こうして後宮の飼い猫としてくれたのもカイリ陛下なんだけど


「はぁ………」

カイリ陛下は猫とのにらめっこをやめて、深いため息とともに、ベンチの背にもたれて天を仰ぐ


「こっちも時間がかかりそうだ……」

そう言いながら、チラッと顔だけ私の方を向く


「ん?」

何か訴えかけられてる気がするんだけど、なんだろう


私が首を傾げながら頭に疑問符を並べていると、カイリ陛下は、身体を起こして隣に座っていた私の肩を抱き寄せる

「こっちの猫も懐くのにだいぶ時間がかかったからな」

そう言いながら、私の頭を撫でた


わっ!私の事だったのか!!?

「そっ!そんなことっ!!?」


私は、カイリ陛下との出来事を思い返した

思い返せば、確かに?!


「いや……えーっと……」


そう……かも?


カイリ陛下は、私の髪をサラサラとなでながら、

「初めのうちは、だいたい逃げられる」

と言って、ちらっと目線だけ私に送った


「………すいませんっ…」

身に覚えがありすぎて、あやまるしかなかった

でも、だからこそわかる


「きっと、時間をかければ、懐くと思います」

私はそう言いながらカイリ陛下を見つめ返す


すると、カイリ陛下は私を抱き上げて、自分の膝の上に乗せ

「そうだな」

と言って、私の唇を奪った

私は抵抗することも無く、その口ずけを受け入れる


猫もきっと、カイリ陛下にメロメロに懐くに違いない


そう

確信した

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