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169 ★番外編★ 猫との遭遇2

翌朝、朝食のお迎えが来た


いつもはカイリ陛下かトキ陛下が来るのだが、今日はロイさんが現れた


「お迎えに上がりました」

深々と丁寧にお辞儀をして、私に片手を差し出した

「くれぐれもお離しにならないようにお願い致します」


ロイさんの魔法は不思議だ

感覚が迷子になる


私はロイさんの手を取って、集中して、移動魔法の魔法陣に足を踏み入れた


足を踏み入れた瞬間、床が抜けるような感覚にヒヤッとして、握っていたロイさんの腕にしがみついた

お……落ちるっ!


「みさき様?大丈夫ですか?」


はっ!!!

ロイさんの声と共にパッと現実に引き戻される


私は、片手を引っ張り挙げられた状態で、ロイさんに抱きつき、ギリギリのバランスで立っていた


ガチャっ


後ろで扉が開く音がする


「…………。」


言葉が発されなくても、無言のオーラを感じる


「あのっ!!!これは、そうではなくてっ!」

地に足が付き、バランスを取り戻した私は、振り返りながら言い訳をひねり出す


「……。ロイに迎えを頼んだのは私だが……。」


『納得いかない』という表情と声色で主張するカイリ陛下が扉の向こうに立っていた


この扉、この殺風景な入口

ここは、トキ陛下が幽閉されていた塔の部屋だ


何故ここ?

あ。でもそうか

他の人にトキ陛下が少年になってしまったことを知られると面倒だもんね!


私は、ご不満顔のカイリ陛下を見上げ、両手を伸ばした


陛下は少し前かがみに、私の耳元に顔を寄せてくれる


私はカイリ陛下の首元に手を回して、

「おはようございます」

と、朝の挨拶をした


「おはよう」

あいさつの言葉が帰ってくると同時に、抱き上げられて部屋の中へ運ばれる


ダイニングテーブルには食事がセッティングされていて、私は椅子に降ろされた


ん?いつもだとこのまま膝の上で食事コースという、何故か習慣になってしまった展開の朝食がスタートするのだが、今日は様子が違った


「すまない。トキが部屋から出ようとしないのでな。少し様子を見てくる」


カイリ陛下は奥の部屋の中へ入り、しばらくして、トキ陛下を抱き上げて戻ってきた


「朝食は共に食べる約束だ」

カイリ陛下は、脅える少年トキ陛下を膝の上にのせ、卓に着いた


「カイリ……ダメだよ。ボクは他の人と一緒にいてはいけない。ダメなんだよ…」


少年トキ陛下は、悲しそうにそう言って、こちらから目を背ける


「トキ。俺が居るだろ?だから大丈夫だ。」

カイリ陛下は、少年トキ陛下の手をしっかり握って、なだめている


私は、以前聞いた話を思い返していた

カイリ陛下は、少年トキ陛下と片手を繋いだまま食事を始める


左手で器用にフォークとナイフを操り、片手で食事を口元に運ぶ


「カイリ陛下って左利きだったんですね?」

あまり意識することがなかったから気づかなかった

あれ?でも右手で持っていたような……

自分の中の曖昧な記憶を辿った


「幼い頃からの習慣だからな。食事は左右どちらでも支障ない」


隣の少年トキ陛下を見ると、こちらも片手で器用に食事をとっていた


食事が終わると、少年トキ陛下は奥の部屋にバタバタと逃げるように戻って行った


少年トキ陛下と、全く会話を交わせないまま、朝食を終えた


「トキ陛下はいつまで小さいままなんですかね?」


「寂しいか?」


「……。いえ。そういう、わけ、では……。」

言葉では否定したものの

少年トキ陛下に避けられてるという現実が

私の心をえぐった


カイリ陛下は立ち上がり、私の椅子の後ろに立つと、フワッと首元に腕を回す

「私はみさきを独り占めできるから悪くは無いがな?」

そう言って首筋にチュッとキスを送り私の髪を弄ぶ

私の体は反射的にピクリと反応した

くすぐったい


私はカイリ陛下の腕に手を添えて、顔だけ振り返ると、カイリ陛下の赤い瞳が私をロックオンした


自然と目を閉じ、触れるだけの口ずけを交わす


カイリ陛下は私を椅子から奪い、抱き上げると、ソファーへ向かってトコトコ歩き出す


どうやらら、ほんとに独り占めする気のようだ


「あの……お仕事……?」

朝食の後は朝から会議と、書類整理など、国王の政務は忙しい

こんなところでのんびりしていていのか?


「トキが休んでいるのに、私だけが仕事をしなければいけないという道理は無い」


いやいや。王様2人抜けたらダメでしょ!?

トキ陛下が幽閉されてた時は1人でお仕事してたんじゃないの?!


「少しの間みさきを独り占めしたとしても誰も文句言うまい」


いや、あの、そうかもしれませんけど……


「嫌か?」

カイリ陛下は足を止めて私に問いかける


真っ直ぐに向けられた熱い眼差しを拒否することなんて出来ない

私は、無言でカイリ陛下の胸に顔をうずめて甘えることにした


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