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168★番外編★猫との遭遇1

今日はこの国で1番静かに星が眺められる

そんなところに行くらしい

夜空を見上げる

そんな環境は沢山あるけど、何か特別な場所なのかな


ちょっと特殊なルートで向かった先は

自然に囲まれた丘の上だった


「この先だ」

そう言ってカイリ陛下が歩き出す


すると、どこからともなく真っ白くて小さな猫が参道の脇に現れた

猫って野生の猫なのかな?それとも迷子?


「迷子かな~?」

私は猫に手を伸ばした


「ダメだっ!」

「!!??」


トキ陛下が私と猫の間に割って入った

一瞬の出来事だった


猫はガブリとトキ陛下の手に噛み付いた


あっ!?

「トキ陛下っ!?」

慌ててトキ陛下の方へ目を向けると、そこにあるはずの姿が無く、代わりに………


「どうした?」

前を歩いていたカイリ陛下が異変を察知して振り向く


「あの………ト……トキ…」

私は、起こった出来事が飲み込めずに、オロオロするばかりだ


目の前にはトキ陛下の代わりに、小さな子供がトキ陛下の服をかぶって座っている


カイリ陛下が猫を目に止めると、猫はニャーと鳴いて、ふわっと消えてしまった


カイリ陛下は、片手で空にサラリと何かを描き、

鳥を二羽作り出すと、伝言を伝えて羽ばたかせた


そして、トキ陛下の代わりに現れた少年に手を伸ばす

少年は服をズルズル引きずりながらその手を避け、逃げ出した


「待て!!トキっ!俺だっ!カイリだ!!」

カイリ陛下は、慌てて少年に声をかける


え?!少年がトキ陛下?!

言われてみれば、確かに面影が…

縮んだ?


少年は、ズルズルの服を両手でギュッと握り、カイリ陛下の方を振り返った


「トキ陛下……ですか!?」

私は少年とカイリ陛下を交互に見つめて聞いた


「トキ」

カイリ陛下は少年に優しく呼びかけて手を差し出す


少年は少し躊躇しながら、その差し出した手を取った


か。可愛い……

改めてよく見ると、トキ陛下の幼少期こんな感じだったのかもって想像ができる顔立ちだった

にしても、美少年……



私も、少年版トキ陛下のもう片方の手に向けて手を差し出した


すると、少年トキ陛下は手をぎゅっと握ったまま、カイリ陛下の影に隠れた


「えっ…………」


避けられるのは想定外です……

嫌われること……したんでしょうか……

なんか複雑……


「トキ。大丈夫だ」

カイリ陛下がそう言っても、少年トキ陛下は、グリグリと首を振って、カイリ陛下をギュッと握って離れなかった


えぇっと……

いつもあんなにベタベタしてくるトキ陛下なのに


「あのぉ…トキ陛下?何歳~かな?」

と、聴くと、

カイリ陛下の背中にぴっとり隠れたトキ陛下は、チラッとこっちを覗き込んで、再度隠れた


ううっ……ダメか……

人見知りなのか、単に嫌われたのか、心を開いて貰えないのは確かだった


「みさき。だいたい想像はつくが、何が起こったか教えてくれるか?」

カイリ陛下は隠れているトキ陛下を自分の隣に並ばせ、話を聞く姿勢を見せた


「白い猫が出てきて、触ろうとしたらトキ陛下に止められて、トキ陛下がその猫に噛まれてしまって……」


私は少年トキ陛下に目線を移す

少年トキ陛下は、カイリ陛下を見上げた


「そうか」

カイリ陛下は自体を把握したようだった

そして、少年トキ陛下に話しかける

「トキ。ルイとルカのことはわかるか?」


少年トキ陛下は、ちょっと首を傾げてフルフルと顔を横に振る


「そうか。ごっそり持っていかれたな……。あの猫……。余程腹が空いていたと言うことか」


体が縮んだだけでなく、それまでの記憶も全て奪われてしまったようだ


「陛下っ!!」

どこかからフェンさんの声がする

空を見上げると、魔術で作られた鳥に片手を繋ぎ、宙に浮いているフェンさんとロイさんが地上に降り立った


2人は少年トキ陛下の存在を見つけると、動揺を隠せない様子


でも、そこはさすがのお2人

主君に忠誠の礼をとった


「ロイ。猫を探せ。トキの時間をたらふく食べてるだろうから探すのは容易だろう」


ロイさんは少年トキ陛下をちらっと見て、カイリ陛下にピットリくっついて離れない様子を見て

「記憶も全て…ですか?」

と訪ねた


「そうだ。恐らく5~6歳まで戻っている。全て持って行ったな…」


「かしこまりました」

ロイさんは立ち上がって腕を振り下ろすと、私が瞬きしている間に姿を消した


「フェン。トキを連れて帰りたいが、周りに知れるのが面倒だ」


「かしこまりました。手配致します。」


話はまとまったようだ

フェンさんは各所へ伝令を飛ばしながら丘を下って行った


カイリ殿下は少年トキ陛下を抱き上げて丘の上へ足を向ける

そして、こちらを振り返ると


「みさき」

と。私を呼んだ

私はカイリ陛下の後をついて一緒に丘を登った


日が暮れて夜空が広がり、月が顔を出す


丘を登りきった先は、国が一望できるんじゃないかってくらい見晴らしの良い場所だった


「キレイ……」

視界を遮るものは何も無く、街の灯りと夜空の星空が視界いっぱいに広がる


カイリ陛下は、私の隣に立ち、

「3人でこの景色を眺めたかったんだか、トキがこの様子だとな……」

と言って、抱き上げた少年トキ陛下を見る


少年トキ陛下は、カイリ陛下の服をギュッと握ったま、スヤスヤと眠っていた


寝顔が天使

こんな無防備な姿で眠る少年トキ陛下……

可愛すぎる


カイリ陛下は

「ここは静かで良い」


そう言って、少年トキ陛下を片手で抱き直し、空いた手を私に差し出した


私はカイリ陛下と手を繋いで、静かな星空を共に眺め、ゆったりとした時間を過ごした


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