167★番外編★舞踏会前日
「随分踊れるようになったな」
カイリ陛下が練習の成果を確かめるべく、ホールで、私とトキ陛下のダンスを見て言った
「これなら大丈夫だろう。明日の舞踏会は、私の代わりにトキが出席するように手配しておいた」
「はぁっ?」
トキ陛下はさすがにびっくりしたのか、気の抜けた返事をした
「なんでさ?カイリをご指名だろ?なんで僕が……」
「………。誠にザンネンながら、私は、舞踏会に参加したい気持ちとは裏腹に、体調を崩して起き上がれないことになっている。」
ことになっている……
………もしや……カイリ陛下ダリア様に会いたくないから仮病を
「なので、代わりに、トキが出席するということを相手国には伝えてある。ちょうどいい機会だ。練習の成果を披露してくるといい」
「くるといい。じゃないよ!!」
トキ陛下はワタワタと反論する
「…………はぁ……」
しばらくして、深いため息とともに、トキ陛下は全てを受けいれたようだ
「そうだね。みさきはカイリと踊るより、僕とペアの方が上手く踊れるみたいだし~二人で行ってくるよ」
トキ陛下は、私を腕の中に抱き込みながらカイリ陛下に告げた
「……………。」
カイリ陛下の無言の圧を感じる
「みさき………。」
「な。なんでしょう?」
赤い瞳がジーッと私を見つめる
「……いや。なんでもない。ドレスは仕立て上がってきている。ライラがそのうち持ってくるだろう」
そう言い残して去っていった
何か言いたそうだったけど……
カイリ陛下の後ろ姿を見送りながら、トキ陛下が
「本当は、自分がみさきと踊りたいのに、ダリア王女と会いたくないから、僕に舞踏会を押し付けたまでは良かったけど、それによって、自分とは上手く踊れないみさきが、僕とは上手く踊れるようになったことに嫉妬しつつ、これ以上練習姿を見ていたら落ち込んじゃうから、舞踏会が終わったら、自分とも上手く踊れるように練習しようと言いたいけど、みさきの負担になるのが嫌で言えずに立ち去ったって所かな。」
と、説明してくれた
凄い。なんでもわかっちゃうんだ
でもなんか、トキ陛下が語った考えは、カイリ陛下らしいなって思ってしまった
こうして、私はトキ陛下と舞踏会に行くことになった
仕立て上がったドレスをライラさんが持ってきてくれた
なんでも、ライラさんがデザインしてくれたらしく、薄紫の生地に同じ色で少しキラキラした刺繍が施されていて、私には勿体ないくらい美しいドレスだった
舞踏会当日、ダリア王女はカイリ陛下以外に興味が無いようで、主催者にもかかわらず会場に姿を見せることはなく、舞踏会は何事もなく終了した
帰宅してから数日のお休みの後、カイリ陛下のダンスレッスンが始まったのは言うまでもない