165★番外編★舞踏会にいく?!
のらりくらりとかわして来た舞踏会
「出来ません……まだ、そこまでお勉強がたどり着けていません………」
お飾りとして鎮座していた祝賀会が限界ですっ!!
どうにか断ろうとしたけど、今回ばかりはどうにもならなかった
何故かって?
主催が、ダリア王女………らしい………
この、危機的状況?!に対し、一同がダンスホールに集まり、特訓が始まろうとしていた……
「あの……練習なのに、こんなに飾り立てる必要あるんでしょうか?」
私は慣れない格好に違和感しかない状態でアルバさんに問いかける
「そうねぇ~」
アルバさんも、舞踏会にふさわしい装いに身を包み、扇を片手にメリナさんを見つめる
「本番の舞踏会もそちらの靴、ドレスで踊らなくてはならないの。今回はお時間がないから、全部一緒に慣れなければいけないわ」
扇で口元を隠しながら、ニッコリと微笑んで譲る気は無い構えだ
確かに……。既にここに来るまでに、慣れないヒールの靴で何度かつまづき、ドレスの重さと裾捌きがおぼつかなくて、だいぶ苦労した(トホホ…)
「それに~。陛下方もこちらの方がきっと嬉しいわよっ」
アルバさんは、カイリ陛下とトキ陛下に目線を向けた
2人は仕立ての良い燕尾服に身を包み、胸元には、それぞれ色の違うバラが添えられている
「僕達も本番と同じ方がいいかなって。着替えてみたけど、どうかな?」
トキ陛下が感想を求めてきた
「………ステキ…だと……思います」
トキ陛下は満足そうに微笑んだ
いつもと違う雰囲気に、緊張する……
カイリ陛下は私を見て
「とても似合っている。毎日飾り立てたくなってしまうな」
と言って微笑んだ
いえ。毎日これは気が休まりませんっ!
「さぁ。さっそく始めましょうか」
そう言ってメリナさんは手にしている扇をたたみ、アルバさんに預ける
アルバさんは
「まずは、お手本にメリナちゃんとカイリくんに踊ってもらうわね」
と言って、私の隣に立って見守りの姿勢を見せた
ライラさんが音楽をかけると、それに合わせて2人は自然と手を取り合ってフロアを回るようにダンスを始める
無理だ……
絶対無理だ……
まず、そんなに上手く歩けないの。この靴で……
フロアを一周して戻ってきたカイリ陛下とメリナさんを私は絶望の顔で出迎えた
「無理だと思います……諦め………」
弱音の言葉を発しながらカイリ殿下にどうにか許可を願い出る
すると、トキ陛下が横から追い打ちをかけてきた
「みさき。今回の舞踏会の主催がダリア王女だってことは覚えてるかい?」
「……はい」
「ダリア王女は恐らくカイリにベッタリだと思うんだ」
「………はい」
「向こうはカイリをご指名で招待をしてきている」
「………………は……い」
「みさきをパートナーとして連れていかなかったら、どうなるかわかるよね?」
「…は…い。」
「練習。しよっか?」
「は……ィ……」
消え入るような声で返事を返すと、トキ陛下はニッコリ笑って私の頭をあやすように撫でる
カイリ陛下は私の方に歩み寄り、胸元の赤いバラのブートニアに手をかけると、私のまとめられた髪にスッと差し込んだ
「1曲踊っていただけますか?」
そう言って胸元に手を当てて一礼する
かしこまった雰囲気にオロオロしていると、隣でアルバさんが、
「他の方のお誘いを受けさせる気は無いのでしょうけど~。カイリくんが楽しそうだから良いかしらね。みさきさん?手を」
私は言われた通りに手を控えめに差し出す
カイリ陛下は、その手を取って私をダンスフロアまでエスコートした
このシチュエーションが既に緊張する……
「あまり緊張するな」
カイリ陛下は私の腰に手を添え、片手を握って歩く
いえ。そうなんですけど。そうではなくて…
ぎこちない歩き方で、頑張って歩く姿が無様すぎる
ステップやらテンポやら、何やらかにやらを色々教えて貰っても、頭ではわかってるの……動かないの……体がっ!!
ガクンっ!
「キャッ!!」
見事に自分のドレスの裾を踏み、バランスを崩す
「おっと……」
パッとカイリ陛下の腕が私の体を支えてくれた
「大丈夫か?」
びびびびっくりした……
まだ心臓がバクバクいってる……
そんな固まってる私を見兼ねてか、
「一度休憩にしよう」
と言って、私を抱きしめ、背中をポンポンと撫でた
安心するカイリ陛下の腕の中で反省する
カイリ陛下の足を踏み、進行方向を間違え脚がぶつかり、挙句自分のドレスの裾を踏んで転びそうになった所をカイリ陛下に助けられ、ボロボロになりながら休憩する
やっぱり無理だ…。カイリ陛下に迷惑をかけまくってる現実が私に更なる精神的なダメージを与えてくる……
はぁ………
ソファーで1人うずくまっていると、
「大丈夫ですか?」
ラディアさんがそんなメンタルボロボロの私を気にかけてくれた
「うぅぅっっ…ラディアさんっ!!」
みんなが一生懸命教えてくれるのに、全然上達しない現実から逃げるように、ラディアさんに甘えた
「陛下が御相手だと緊張されますか?」
「………私、全然上達しなくて、申し訳なくて……」
「では、わたくしと一緒に踊りましょう」
「え?ラディアさん踊れるんですか!!?」
「私も教養として身につけた程度で、上手な訳ではありません。ですので、気楽にどうぞ」
そう言うと、私の手を取り歩き出す
行動がスマート過ぎて、私はなされるがまま身を預けた
「あまり難しく考えずに。足元に慣れないかと思いますので、歩きやすい歩幅でバランスが取れるように、まずは慣れていきましょう」
そう言いながら曲に合わせて足を踏み出す
優しいっ!そして、いつでも頼もしいです!ラディアさんっ!
私はラディアさんに導かれるように自然と体が動き、フロアを無事一周することが出来た
「ラディアちゃんとの方が相性が良さそうね」
「舞踏会も、ラディアちゃんと出席されても良いのではなくて?」
アルバさんとメリナさんが、よく出来ましたの拍手を送りながら歩いてくると、
「「ね?カイリ・へ・い・か?」」
っと、声を揃えて後ろを振り返る
カイリ陛下は、納得いかない。という顔をして、無言でこちらを眺めている
「すみません……私が上手く踊れなくて……」
状況的にもなんか申し訳ない
「いや。謝ることは無い」
と言いつつ、しょんぼりモードのカイリ陛下…
そして、それを見守るトキ陛下
ん?そういえば、大体こういう時に自分も。と、手を出してきそうなトキ陛下は、椅子に座ってこちらを優雅に眺めているだけだ
「ん?」
私の視線に気づいてトキ陛下が首を傾げる
「あ……えっと……」
踊らないんですか?とも言えず、うまい言葉が見つからないでいると、
「そういえば、トキくんが踊ってるところ見たことないわね?」
と、アルバさんが言った
「僕は踊らないんだ」
「踊らないじゃなくて、踊れない。だろ?」
カイリ陛下が釘を刺す
え?そうなの?
「みさき!別に、踊れないわけじゃないからっ!!」
トキ陛下は慌てて弁明した
「そうだな。踊れないとは言いすぎた。下手なだけだったな」
カイリ陛下はトキ陛下を弄ぶように言葉を選ぶ
「~~~~かいりっっ!!」
意外だ
なんでもスマートにこなしてしまうイメージだったけと、苦手なものってあるんだ……。
なんだかちょっと安心してしまった
私だけが下手な訳では無い!
私の中で、謎の仲間意識が芽生えた
「トキ陛下。私も頑張って練習します。一緒に練習しましょうっ!」
「!!!みさきまでっ!!」
「いい機会だ。トキ。今後のために一緒に練習した方がいい」
カイリ殿下はそう言って、話を進める
「アルバ、メリナ。私ではみさきが上手く踊れないようだ。明日からはラディアと一緒に練習してくれ。」
「トキ。お前も一緒に練習しろ。」
こうして、短期集中型ダンスレッスンが始まった