164★番外編★トキ陛下の外出、その頃カイリ陛下は
トキ陛下は次の日、ロイさんと一緒に大人しく地方視察に旅立って行った
カイリ陛下と共にお見送りを済ませると、私はお食事のお誘いをした
「あの!私と……毎日朝食を一緒にとって貰えま……せんか?」
言い方はこれで良いのだろうか?
毎日忙しいだろうし、時間取れないかもしれないけど、多分朝が1番確実だと思ったので、朝食のお誘いにしてみた
・・・・・。
なんだろうこの間は?
カイリ陛下は、無言で私をじっと見つめて何か考えてるようだったけど、納得したのか、私の手を取り指先にキスすると
「あぁ。喜んで」
と、優しく微笑んだ
良かった。これで任務は遂行できる!
後は、トキ陛下が帰ってくるまで、きちんと食事をしてもらえれば勤務完了だ
そんな風に安易に考えてたんだけど……
翌朝、カイリ陛下がお迎えに来た
絶賛改装中な御屋敷ではなく、今は来賓用の別邸で過ごしているらしい
何度か来たことのある別邸に到着すると、フェンさんが門で出迎えてくれた
「ご準備は整っております。ごゆっくりどうぞ」
そう言って門の先を指し示し、緩やかにお辞儀をすると、そのまま私たちを見送った
ガチャ
重厚なドアノブに手をかける
食事の用意された部屋に入ると、しんと静まり返っている空間に、食べ物の美味しそうな香りが漂っていた
ソファーの前には、食べやすくカットされたサンドイッチや、スコーン、フルーツ、飲み物など、色々用意されていたけど、周りに使用人は誰も居なかった
私が不思議に思っていると
「あまり人が多くては落ち着かないと思ってな」
と、カイリ陛下が説明してくれた
確かに、使用人の皆さんに監視されながら食事するって、緊張感の方がすごそう……
そういえば、フェンさんも門の前で見送ってくれてたし、ほんとに人が居なさそう
私が辺りを見回していると
「さ。食事にするか」
そう言ってカイリ陛下は、私の手を引き、ソファーに腰かけると、私を膝の上に座らせた
「え?」
なぜこのポジションなんですか?
「ん?」
何か問題あるか?という顔でカイリ陛下が見つめる
……なぜ?!
そして、カイリ陛下がテーブルの上のサンドイッチに手を伸ばして、私の口元に運ぶ
これは………
戸惑いながらも口を開け、サンドイッチを食べさせてもらう
えっと……なんでこうなった?
モグモグとサンドイッチを食べていると、カイリ陛下もサンドイッチをつまんで口に入れた
目的は達成されてるから良い……のか?!
次にカイリ陛下はフルーツを手に取り、またまた私の口元に運んだ
ひょっとして、ひょっとしなくても、このままずっとこの感じなんだろうか……
こんなに見つめられて食事するとか、恥ずかしすぎる
「あの……1人で食べられるので、その……」
とりあえず、お膝の上から下ろしてもらうか、自分で食べるか、どちらかをお願いしたいところだ
「1人で食事をするのが寂しいのではないのか?」
「いえ……」
そういう理由で朝食のお誘いをしたわけでは……
「遠慮するな」
伝わってない……
「ん?」
食べないのか?と、目が訴えていた
大人しく控えめに口を開け、フルーツを頬張ると、甘酸っぱい果汁が口の中いっぱいに広がった
カイリ陛下の食事管理を任されたのに、私の食事を管理されている……
合間にカイリ陛下も食べてくれてるから、目的は達成されてるんだけど、なんか予定と違うっ!こっちだけ恥ずかしいっ!!
私は、反撃ののろしを上げた
お皿の上のスコーンに手を伸ばす
焼きたてでまだ少し暖かい小さなスコーンにクリームを沢山つけて、カイリ陛下の口元に運んだ
「どうぞ……」
陛下は目を丸くしながらも口を開け、スコーンを受け入れる
すると、つけすぎたクリームが指にこぼれてしまった
あ………
指を拭こうと手を引こうとした瞬間、パッとその手首を捕まれ、そのまま指のクリームをペロリと舐め取られる
そして、上目遣いで赤い瞳が私を見つめた
「ご馳走様」
んん~~~~!!!
反撃ならず……
返り討ちにあった
毎日これなんです?私の心臓がもたない
その後も、毎日このスタイルの食事は続いた
カイリ陛下のお膝の上で食事を手ずから食べさせてもらうという……
何度か誤解をとこうとしたけど~
……………………
「あの…自分で食べられます……」
「私の手から食べても同じだろう」
「あの…お膝の上から下ろして貰いたいのですが……」
「ん?」
なぜ?と目が訴えていた
…………………
伝わらなかったので、諦めて自分がこのスタイルに順応することにした
故に、私の食事スタイルが、羞恥に耐えて、カイリ陛下のお膝の上で朝食を共にするということになってしまったのだった
カイリ陛下にきちんと食事をとってもらって、危ないことにならないようにするためだ!
という使命感で羞恥心を上書きし、このスタイルに順応するべく頑張った
1週間が経ち、トキ陛下が早朝に地方視察から帰って来たので、カイリ陛下とお出迎えに行った
「ただいま。カイリは大丈夫だった?」
「とりあえず、きちんと朝食は召し上がられています!」
私は、任務がきちんと達成されてることを報告した
「そっか。良かった。朝食はまだかい?僕も一緒に食べたいな」
「別邸に用意してある」
カイリ陛下の誘導でいつもの朝食会場へ向かう
このスタイルの食事に慣れてしまった私は、ソファーへ向かい、エスコートされるま、大人しくカイリ陛下のお膝に座った
すると、トキ陛下が顔色を曇らせた
「カイリ?僕のいない間、随分と美味しそうな朝食を食べていたようだね?」
顔はニッコリしているようだけど、明らかに目が笑っていない
「お陰様できちんと食事をとっているが、何か問題が?」
カイリ陛下はフルーツを1つ手に取ると、私の口元に運びながら、平然と返答する
「大ありだよ!!!!!」
トキ陛下はちょっと慌てながら
「みさきっ!僕と一緒に食べよ?」
と言って、カイリ陛下の膝の上から私を取り上げた
「カイリって、そーゆーとこあるよね!!!?」
カイリ陛下の隣に座り、私を膝の上に乗せて、トキ陛下が訴えた
「どういうとこだ?」
カイリ陛下はサンドイッチを手に取ると、トキ陛下の膝の上に座っている私の口元に運ぶ
私は自然と口を開けて、そのサンドイッチを頬張った
「んーーーーーっ!!そーゆーとこだよ!!!!」
トキ陛下の訴えはカイリ陛下に届かないまま朝食は続く
こうして、これから朝食は、3人で食べるルールになった