160.★番外編★祝賀会1
無事、国内の色んなイベントが終わったかと思ったら、今度は国外との交流のイベントが待っていた
お茶会や舞踏会、よく分からない国のお偉いさんが招かれたパーティ……
無理だな。うん。
私にはまだ社交界は早すぎる
そんな相談をユミさんにしたら、
『国王が妃を迎えたにも関わらず、祝賀会に王妃様が出席なさらないのは問題です!!』
っと、たしなめられた
ハードルが高すぎる……
「誰かに何か言われたら、目を伏せて首を横に降ればいい」
カイリ陛下はそう言ってくれるけど、そんなんでほんとにかわせるものなの?
青ざめた顔でカイリ陛下を見つめていると、
「カイリは、知らない人とみさきが仲良く喋るのが面白くないんだよ。きっと(笑)」
と、トキ陛下は私の耳元でわざとカイリ陛下に聞こえるように言った
「………ト~キィ~。」
「ちなみに、僕もみさきが僕ら以外の男性と仲睦まじくおしゃべりしてたら嫉妬しちゃうからね?」
え?そんなに話しかけられるんですか?私?
2人の隣でとりあえずニコニコして、かわしていくしかないって思ったんだけど……
1人でいろんな人にご挨拶しなければいけないんだろうか……
やっぱり、ハードル高くね?!
不安でしかない………
でも、本番はいつかは訪れるものなのだ
……………………………
カイリ陛下とトキ陛下にエスコートされながら会場内にたどり着く
緊張感が増す……
王族や貴族をお呼びした優雅な社交界
そこに足を踏み入れる新人王妃
あぁ……場違い感半端ない(涙)
カイリ陛下とトキ陛下は、来る人来る人と挨拶を交わしていく
頭の先から足の先まで、きっちり飾り立てた装いで、グラスを片手に交流を深める
という、想像でしか無かった風景が、目の前にあった
私は、とりあえず、ニコニコしてお話に頷いている
紹介を賜って優雅に一礼
これで合ってるのだろうか?!
それにしても、周りの人達の視線が………
私は改めてカイリ陛下とトキ陛下を見つめた
やっぱり……
明らかに目立っている
美しすぎる顔立ちに宝石のような瞳
つややかな髪色はライトに照らされて輝いている
キラキラ王子様モードの2人から目が離せない
「ん?」
「どうした?」
ご婦人方のピンク色の視線をその身に集めている2人の視線は、私に注がれた
周りのご婦人方が顔を赤らめながら見つめてしまうのも仕方がない……
「い、いえ……その……」
私もきっと、このご婦人方同様な表情に違いない
恥ずかしい……
私がモジモジしていると
「カイリ。みさきと少し外に出て来るよ」
「ん。わかった。」
カイリ陛下は短く言葉を残すと、片手にグラスを持ってご挨拶に進んで行った
…………………………………………………
「気分はどうだい?」
トキ陛下がバルコニーに連れてきてくれた
柔らかな風が心地いい
「あっ。別に具合が悪いわけではなくっ!……」
キラキラ王子様モードにあてられただけです……なんて言えない
「?大丈夫ならいいんだ。人がいっぱいいて疲れたでしょ?」
人が沢山いれば、その分の思念が渦をまく
ましてや社交界なんて、ドロドロの私利私欲が入り交じってる
でも、そんな中でもカイリ陛下とトキ陛下の周りは、いつでも空気が澄んでいた
心が落ち着く空間が、そこにある
私はトキ陛下の腕をキュッと掴んだ
すると、
「ん?そんな可愛いことされるとこっちも我慢できなくなるけど?」
と言って、私の顎に手をかけた
わわわわわっ!!
前言撤回!心!落ち着かない!!
私がワタワタしていると、トキ陛下はそのまま頬にチュッとキスをして私の髪を撫でる
「なにか飲む?ちょっと待ってて」
と言うと、トキ陛下は室内に戻って行った
バルコニーからは、広い中庭が見下ろせる
私は、バルコニーの手すりまで歩いていき、そこから中庭を見渡した
夜でも噴水が月明かりを反射して、お庭は明るく照らされている
色とりどりのバラは、お庭の中心にある鳥籠のようなアーチを取り囲むように咲き誇っていた
「はい。ワイン飲める?」
トキ陛下がグラスを2つ手に持って戻ってきた
「あ。はいっ」
私はグラスを受け取ると、その甘いぶどうの匂いに誘われて、一口ワインを口にする
「美味しい……」
アルコールをほとんど感じない
甘くて美味しい
「どう?飲みやすくしたつもりだけど」
そう言ってトキ陛下か指で何か文字を描いたようだった
「甘くて飲みやすいです」
「それならよかった」
満足そうに微笑んで、トキ陛下も中庭を見下ろす
「あれ?」
中庭にカイリ陛下のような人が歩いてるように見える
「あー。カイリが離脱したってことは、そろそろ僕が戻らないとかもな~……」
と言って、トキ陛下は、自分の持っていたワインを私に手渡した
「これ、カイリに届けてあげて?」
ん?どうやって中庭に降りればいいんでしょう?
私が中庭へのルートを模索していると、中庭のカイリ陛下がこちらのバルコニーを見上げた
「みさき。後はよろしく」
トキ陛下がポンと私の肩に手を置くと、中庭のカイリ陛下が片手でクルクル円を描いて両手を広げた
フワッと私の体が宙に浮く
あわおわおわあわっ…………!!
両手にグラスを持って、ワインをこぼさないようにバランスが………
っとか思ってるうちにカイリ陛下の腕の中にすっぽり収まった