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151.9★番外編★花時計とダリア王女とカイリ殿下

明日は、戴冠式と、結婚式の2本立てが同時に行われる

国民に認められて結婚の祝福がなされる

そのためには、パレードやら、何やらをやるんだけど、パレード2回とか面倒だろって言って一緒にやってしまおうというのが2人の考えだ


私は2人から、パレードルートの説明を受ける


「まずは、王宮から出発して、街中を少し歩き、中央公園の花時計に向かう」



「花時計………」

私は嫌な思い出を思い返して、俯いた


「花時計がどうかした?」

トキ殿下は私を覗き込んで聞いてくる


「いえ。ダ…ダリア王女とお会いした、

あまり思い出の宜しくない場所で……」

私は、目を泳がせながら言葉を絞り出す


「あぁ~~あの時はびっくりしたよ。まさかみさきがいるなんて。でも……あの時のカイリはかなり機嫌悪かったよね(笑)」


「今その話をするのか……」


ズシリと重い空気がカイリ殿下を纏う

「思い出したくもない……悪夢だ……」

両手で頭を抱えてカイリ殿下がただならぬ表情を見せた


え?何事?


すると、トキ殿下が説明を始めた


「連日朝から晩まで連れ回されて、みさきに会う暇がなくて、不機嫌MAXなところ、花時計の案内に来たは良いけど、そこにまさかみさきがいるなんて思いもよらないじゃない?ダリア王女はあんなんだし、そもそもみさきに会って貰えなくてションボリしていたところに、ダリア王女とデートみたいな浮気現場見られた挙句、指輪外されてたっていうのが追い討ちになって、『終わった…』って言葉しかしばらく喋れなかったからね。カイリ。」


頭を抱えて顔を伏せたまま、カイリ殿下がポソリとつぶやく


「もう二度とあんな思いしたくない……」


「私だってっ……!!」


勢いよく発した言葉に2人は『ん?』と、こちらを見つめる

「私だって……もぅ、あんな思い……したくないです……」


トキ殿下は、横からサッと私を抱きしめると、

「不安にしてゴメン」

と、囁いた


私はトキ殿下の腕に手を添えて、湧き上がった気持ちを落ち着かせた


カイリ殿下はさらに落ち込み、「だから言ったんだ……」と、自白を始めた


「とっとと国に返せと」

「二度と逢いたくも無いし、ダリアと結婚する気ももちろんない!!」


「でも、ダリア王女からは熱烈なラブコール貰って、カイリも満更じゃ~~」

「!!んな訳あるかっ!!」


「はぁ…………」


からかい始めたトキ殿下の言葉を勢いよく否定して、カイリ殿下は再び大きなため息をついた


そのカイリ殿下のうなだれた姿を見て、私はトキ殿下を見上げた


「みさきがクリスタルに閉じ込められていた頃ね、国が荒れていたから、隣国の国々がうちにも害を及ぼすんじゃないかと、好戦的でね。そのためカイリは隣国に送られていたんだ。君の国と敵対する気はありませんと言う友好国としての人質みたいなものだね。ダリア王女は、その国の国王の娘で、カイリをえらく気に入っていたらしい」


トキ殿下はそう言ってチラッとカイリ殿下に視線を移すと、私を流れるような動作で抱き上げる


「私にその気は微塵もない」

キッパリと言い放つカイリ殿下


「その後国が落ち着いてきた頃に、エミル父上が無くなり、カイリは国に帰ってくることができた。でも、それからもダリア王女の熱烈アピールは続いてた気がするけど~~」


トキ殿下はカイリ殿下と話しながら、私を抱き上げたままソファーに座った


「流石に国王が不在の不安定な国の状態で、隣国との友好関係を崩す訳には行かないから仕方なくだ!!」

「そもそも!!私でなくとも、トキが相手をすれば良かっただろ?相手国の言い訳は『新国家の樹立に我が娘がきっとお役に立てましょう』って事だっただろ?」


「でも、ダリア王女はカイリしか見てなかったよ?」


気づいたら、トキ殿下のお膝の上に座って、その腕の中に収まり、頭を撫でられている


カイリ殿下は、『はぁ……』と、再度ため息をつくと、反撃に出た

「じゃぁ、逆に聞くが、王妃にダリアを選ぶということは、国王として、トキもダリアと結婚するということだが?」


「そーゆー事になるだろうね~」


トキ殿下は平然としている


「私達は誓ったはずだ。お互いが想いを寄せることが出来ぬ者を妃には迎えないと」


「そうだね。でも、政治的な婚姻は国の安定のためにも必要。違うかい?」


トキ殿下は結構真剣な口調で冷静にカイリ殿下と対話する


「トキがそれで良いなら、それでも良い」

「だが……」


カイリ殿下はこちらに力強く歩み寄ってくると、右手の人差し指を立て、サッと左から右に空を切った


次の瞬間、トキ殿下の腕が解かれ、私はふわっと宙に浮いたかと思ったら、カイリ殿下の腕の中に収まった



「その時は、私は国を出てみさきと他の地で暮らすからな?」



えっ?!ええっ?!国捨てるってことですか?!

ダメじゃありません?!


私はびっくりしてちょっと焦った

仕事と私どっちが大事なの?的なシチュエーションな気がする

私にそんな気はないです!!


どうしよう……なんか、こんな話になるなんて……

私が困惑していると、

トキ殿下は立ち上がり、カイリ殿下の腕に収まっている私の左手を取った


「って言うことだよっ」

そう言ってパチッとウィンクをして、指輪にチュッとキスをする


って言うことってどういうこと?!


ニコニコしたトキ殿下は、私の頭をポンポンとなでる

「そんな不安そうな顔しないで?」


「トキが煽るからだ」

「僕は、みさきが聞きたいだろうと思ったことを代弁したまでだよ?」


すると、カイリ殿下は私を見つめた

「みさき。ダリアのことで君が心を痛めたことは申し訳ない。だが、今は国のしきたりや政治の在り方より、俺は君と一緒にいたい。」


私を抱き抱える両腕が、離す気は無いと主張していた


「もちろん、僕もみさきを一生離す気は無いよ?あまり思い出の良くない場所かもしれないけど、その記憶をいい思い出に書き換えよう?」


「私の記憶も上書きしたいんだが……」

カイリ殿下はぽつりと言った


「そうだね(笑)……僕達もあの絶望的な思い出を上書きしたいね……」



あの花時計は、私と同じくらい2人もあまりいい思い出ではなかったようだった


ライラさんか作った花時計を嫌な思い出のものにしたくない


きっと、良い思い出に変わるはず!


私はそう思うことにして、ちょっぴり不安な気持ちを取り払うように、2人の腕をキュッと握った

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