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154.飾り物はあでやかに

コンコン

少し緊張した手で隣の部屋のドアをノックする

すると、ガチャっと内側からドアが開き、ロイさんとフェンさんが出迎えて、中へ手を指し示した


その先には、真っ白な上下に身を包んた2人が窓の外を眺めながら待っている


「それでは」

「失礼致します」


ロイさんとフェンさんはそのまま静かに部屋の扉を閉め、部屋の外に出て行った


私は慣れないヒールの靴で、コトン、コトンと、音を鳴らしながら1歩1歩二人に近づいた


1歩足を進める度に緊張がどんどん高まっていく


二人の前で足を止めると、カイリ殿下とトキ殿下は、上質な白のシルクにあでやかな金刺繍が美しいマントをひるがえして、振り返った



お揃いの正装に身を包んだ2人を見て、あの指輪を貰った日の姿を思い出した


きっちりスタイリングされた髪型にドキッとする

2人の宝石のような目は、私をジッと見つめた


恥ずかしい……

「そ……そんなに……見ないでください」


ドキドキして2人の顔が見れなくて、顔を伏せてボソッと呟いた


すると、2人は、膝まずいて、私を見上げる


わっ!!この展開はもしやっ

そんな心の準備をする間もなく、2人は私の手をとると、チュッと手の甲に口付けをする


何度されても恥ずかしい……

しかも、2人のキラキラ正装モードを直視出来ない……


ほんとに、私、この二人と、結婚………していいんだろうか?

どんどん不安になってきた……


「とてもキレイだ」

カイリ殿下が私を見あげて呟いた


「誰よりも美しいよ」

トキ殿下が私を見上げて呟いた


恥ずかしくてモジモジと何も言えずに、目も合わせられない


2人は立ち上がり、近くのテーブルに置いてある小箱から、それぞれ中身を手に取った


「さっ。こっちを向いて?」

声に誘導されるように顔を上げると、トキ殿下は大きめの飾りが着いたイヤリングを手にしていた


細やかな細工が美しいイヤリングは、片方は赤い宝石が、もう片方は紫の宝石が輝いている


私はそれを見て、トキ殿下とカイリ殿下を交互に見つめた

「そうだよ。これは僕達の魔力の結晶石でできている。だから安心して」

そう言って、私の両耳にイヤリングを飾った


「みさき」

カイリ殿下が私の名を呼ぶ

声の方向に顔を向けると、カイリ殿下はネックレスを手にしていた


「あっ……!」


それは、かつて、カイリ殿下から貰ったのに、壊してしまったあのペンダントに良く似たデザインだった


「本来はもっと派手な飾りの物を贈るんだが、みさきにはこちらの方が良いと思ってな」


そう言って、私の首に腕を回して、ペンダントをつけてくれた


私はペンダントの飾りに無意識に手を当てる


カイリ殿下は優しく微笑むと

「よく似合っている」

と言って、頬を撫でる


ジワジワと心が溶けていく


最後に、少し大きめの箱から、ティアラが取り出された


私は自然と膝を折り、少し前かがみに顎を引いた


二人の手によって贈られるティアラが飾られると、2人は私の手を取って、姿勢を元に戻してくれた


2人の纏う甘く優しい空気に私は甘えた

ぎゅっと繋がった手を握って引き寄せる



カイリ殿下と、トキ殿下は少し驚いた様子だったけど、二人とも私をぎっゅとハグしてくれた


なんかもう、このドキドキが、緊張なのかなんなのか、分からないよぅっ!


「大丈夫?」

トキ殿下が私の背中をポンポンと撫でながら優しく語りかけてくれる


ううっ大丈夫じゃないです。ドキドキが止まらなくて辛いです


「まだパレードまでに時間はある。大丈夫だ。少し落ち着け」

カイリ殿下も、背中をポンポンと撫でながら、私を落ち着かせてくれる


「不安なことある?話した方が不安じゃなくなるから。僕達に話してくれるかい?」


不安なことなんて、山ほどある

慣れない服、慣れない靴、慣れない環境………

俯いたまま、私はポソリとつぶやく

「パレードで転んだら……どうしよう。とか」

「私達が支える。安心して転べ」


それはどーゆー励ましなんですか?


「あと、みんなに認めて貰えるか……とか」

「これから認めさせればいいんじゃない?大丈夫。この国のマリアであることは、これからは公になっていくことだから。みんな崇拝すると思うけどね?」


「でもっ……もしかしたら、国民のみんなの中にも、ダリア王女の方が王妃にふさわしいって思ってる人も……」


ダリア王女は、自分が王妃に支持されるように、国民に噂の種をいくつか撒いて行った……

悪い噂は、それが嘘であっても根強く残る

疑いの遺恨を晴らすことは難しい……

いつの世もそういう風に人の心理はできている……


「ルゥ達を信じろ」

「え?なんでルゥくん?」

「2人にはその辺の噂話の処理を頼んである。あの二人の手にかかれば、あの手の根拠のない話は綺麗さっぱり処理できる」


そそそそうなの?!

噂話ってそんなに簡単に晴らすことができるの??


「目に見えない証拠なんて、目に見える事象と比べたら、人がどちらを信じるかは明らかだよ」

トキ殿下はわかるようで分からない説明を足した


「他にはあるか?」

「えっと……えっと……ドレス……似合ってるか不安です」

私は、自分が慣れない格好をしているのを十分すぎるほど実感している

着慣れない感半端ない

さらに慣れないお化粧までバッチリしてもらって

違和感しかないんです……


カイリ殿下は私を抱きしめている手を弛めて体を離すと、私を見つめ直し

「200%私の好みだ。安心しろ」

と、キッパリと言い切った


カイリ殿下の好みを聞いてるんではなくてぇぇっ!!


すると、トキ殿下も腕を弛め、私の顔を覗き込む

「そんなに緊張してるなら、1回忘れてみる?」

と言って、頬に手を添え、親指で唇の端を弄ぶ


あわわわっっっ!!!!!

表情が取り繕えなくて、口元が歪む……


「あ。でも、せっかく綺麗にメイクしてもらったのに、口元ぐちゃぐちゃにしたらダメだよね?!」


そう言って、私の頬から手を離した


ドキドキしますっ!

さらにドキドキしますっ(焦)


「あと不安なことはあるか?全部聞いてやる」


「……無いけど、なんか不安です!」

二人ともかっこよすぎて直視できないし、ドキドキは止まらないし、顔も見れない


外には沢山の人が集まって来ているのを雰囲気で感じる

そんな大勢の人の前に出るって想像すると、何か、もう、恐怖

うぅうぅ……


「無いなら、そんな顔してないで、笑っていろ」

カイリ殿下は、私の頬に指を添えると、俯いていた顔を上向きになぞった

赤い瞳に吸い込まれるように私はカイリ殿下を見つめた


すると、カイリ殿下はスっと手を離し、自分の口元を覆うと、目を逸らして遠くを見つめた


え?

何か私しましたかっ!!?!


「覚えておくといいよ?」

後ろからトキ殿下が私の首に腕を回してギュッとした


顔がっ!!顔が近いですっ!!!


耳元にトキ殿下の息がかかるのがくすぐったい

「あれ、カイリ照れてるから」


「え?」

照れてる?何に?

カイリ殿下が?


「改めて見つめたら、みさきが可愛過ぎて困った。って所かな。」


だいたいこういう時に反論してくるカイリ殿下の声は今回は聞こえなかった


「…………うるさい。…。」


ボソッと呟いたカイリ殿下はトキ殿下を力なく睨んだ


トキ殿下は私を解放すると、カイリ殿下の隣に立って片手をカイリ殿下に差し出した


カイリ殿下はその手に自分の手を重ねると、2人は目を閉じてなにかしてるらしい


2人から、オーラみたいなものが見える

重ねた手を少しずつ上下に離すと、混ざりあったオーラが手の間に小さな球を作った


私は、不思議そうにその光景を眺める

2人は私の方に向き直ると

その出来上がった球体をふんわり放った

フワフワと宙を舞い、私の頭の上に来ると、パッと球体は形を崩し、見えないオーラが私を包んだ

2人の魔力を肌に感じる


その不思議な感覚にキョロキョロしていると、カイリ殿下が説明してくれた


「特殊な護りだ。外部の魔力の影響を遮断する。道中何が起こっても、この護りがあるから安心しろ」


私は、魔力の思念の影響を受けやすい

2人の魔力に包まれている今は、なんかちょっと安心する


私が心を落ち着けたのを見届けて、トキ殿下が、窓の方へ向かい、私を手招きした


中庭のような広場には門へ続く道の脇に人が山のように集まっている


この塔の中の部屋を出ると、テラスがあって、その階段を下ると、みんなが集まっている広場に出られる造りになっている


そして、私はこれからそこを歩く……


「そろそろ時間だな」

「さっ。行こっか。」


そう言って、扉に向かって歩き出す

私は2人について扉の前まで歩みを進めた

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