151.あの時のあの話
「あの……1つ、聞いてもいいですか?」
「何だい?」
「前に婚姻の準備が何とかって言ってた気がしたんですが……。あれって……。」
ダリア様との結婚のあれやこれやの準備に追われてると思ってたのは、私の勘違い……だったってことでいいのかな?
「「…………」」
あれ?聞いちゃいけないこと聞いてしまった?
「あーーー。あれは………。」
トキ殿下がカイリ殿下に目線を送る
「お前が口を滑らせたんだ。自分で説明しろ」
カイリ殿下は助け舟の出航を断った
トキ殿下は気まずそうに口を開く
「実は、もうすぐ僕らが成人を迎える。そうすると、新しい国王として、国家の樹立と、それに伴う戴冠の儀があるんだけど……」
「各国の王族や、貴族から、王妃に我が娘を。という紹介状が毎日山のように届いていて……」
トキ殿下の目が泳ぐ
「ダリア王女がいい例なんだけど、ああやって僕らに近づこうとする人が耐えなくて……」
やっぱりおモテになるこの2人……
周りには綺麗な女性が選びたい放題よってくる
やっぱり、住む世界が違う人達だ
私の表情が陰ったのを見て、カイリ殿下がスっと私を抱き寄せた
「安心しろ。私にはみさきしか見えていない」
と言って、私の髪束を手に取り、チュッとキスをした
なんだろう。ココ最近というか。ついさっきまで微妙に距離を感じていたのに、打って変わってゼロ距離の甘さに、こちらは緊張を隠せない
でも。そうだ
カイリ殿下はいつも、私の気持ちを考えてくれていた
私が羞恥心に耐えれないことも分かって手を差し伸べてくれる
「僕だって同じだよ!!!」
トキ殿下は、カイリ殿下の意見に激しく同意した
「だから、戴冠式と一緒に、結婚式もしてしまったら話が早いと思ったんだよ」
結婚式……。
いや。違うかもしれない
いや?じゃあ誰が?
いやいや?でもでも……
「だ……誰と結婚……するんですか……?」
私は一応確認をした
「みさきと………」
トキ殿下は口元を隠しながら私をちらっと見た
「元はこんな予定ではなかったからな……。全てはあのダリアのせいだ……。よくも数々の邪魔をしてくれた……。」
私は前にカイリ殿下がぐったりして部屋にやってきたことを思い返した
「色々と頭の硬い人達を説得するのに時間がかかるし……そのための根回しと、あれやこれやも全て片付けてから、みさきに伝えるはずだったのに……」
「まさか、指輪を外されるとは想定してなくてな……。みさきの気持ちが1番大事だからな。イヤなら嫌とはっきりと言ってくれて構わない」
え?これってつまり……
「さっきの今でなんか格好がつかないんだけど…」
トキ殿下はカイリ殿下の腕の中に納まっている私の左手取り出し、
「僕達と、結婚して欲しい」
と言って、さっきはめられた指輪にキスをした
「みさき」
カイリ殿下の呼び掛けに、今度はそちらに視線を移す
「君と生涯を共にしたい」
私は言葉にならないこの気持ちを、2人に伝えるすべを知らない
なので
カイリ殿下のシャツをキュッとつかみ、顔を埋めながら、コクリと頷いた
2人の安堵したような空気が感じられる
私はそのまま2人に送り届けられ、教会に帰宅した