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145/174

145.歴史1

『私はマリアとしてこの国の魔力を、人々の心を浄化してきました。国民の心の平穏こそが、安定した国家の印。皆の願いを聞き、幸せを祈る。それがマリアの務めです』


あおいお姉様が常々言っていたことだ

分け隔てなく、皆の幸せを祈ること

罪人であっても、善人であっても、マリアの前ではただ等しく人なのだと

それがこの国のマリアとして生きることだと


『数年前……いいえ、きっとアレはカイリ殿下、トキ殿下あなた方がお産まれになったその日から始まっていたのかもしれません』


私は思わず2人の方を見た


『お二人が産まれた際に王妃ローラ様が逝去されました。』


トキ殿下が自分の魔力で母親を殺してしまったと言っていた

多分その事だ……


トキ殿下は少し寂しそうな顔をして俯いている


「トキ……」

隣にいるカイリ殿下は、トキ殿下の頭にポフン手を置いた

2人の間に言葉は無いけど、きっとこれだけで全部伝わってるんだと思う


『その後、すぐにエミル陛下は後妻を迎えられました。しかし、カラム陛下は、亡くなられた王妃ローラ様を生涯愛し続けると言って、御二方の仲には亀裂が生まれ、これが全ての始まりだったように思います。』


『エミル陛下は後妻のヘレナ様との間にも双子のお世継ぎを設けられましたが、さらに陛下方の溝は深まる一方でした』


だからルゥくん達は一卵性だって言ってた



『カラム陛下はローラ様の死を受け入れられなかったのでしょう……』


お姉様が言葉を止めると、私と繋がれていたトキ殿下の手がパッと離れた

ん?

離さないでと言ってたのに……

そう思ってトキ殿下の方を見ると、胸元で漆黒のグローブに包まれた手をギリギリと掴んでうつむいていた


あ……。なんて声をかけたらいいか分からない

結局私は何時でも無力だ……


『その後、カラム陛下はこの地下室で実験に没頭されました。何年もの月日が過ぎ、次第に宮廷の魔力は浄化しきれない程に穢れてきたのです。』



『そして、地上の魔力の穢れがどんどん濃くなっていき、国民の心に影響が出はじめました。いざこざは絶えず、大きな争いごとに発展することも少なくない状況になり……。私が宮廷に呼ばれたのです。』


そうだ。私もそうやって宮廷に連れてこられた……

そして、しばらくしてあおいお姉様がいなくなった……


『みさき?あなたはどこまで思い出したのかしら。重く、辛い記憶を……』


「全部……」

断片的だった記憶も全部繋がった


『そう……。あなたにかけた封印も、綺麗に解呪されてしまったわね。あなたを大切に思ってくれている人を大事になさい。』


私は2人の方を見上げた

そして、心のむくままにトキ殿下の胸元に手を伸ばし、そこに納めている手を握った


トキ殿下はびっくりしたのか、ピクっと、体を強ばらせた


その手で大切なものの命を奪ってしまったとしても、でも、私はこの手の優しさを知っている

私を大切に思ってくれる人の手だ


「……手……離しちゃダメって……言ってました」


この衝動的な気持ちに説明ができなくて、なんとも可愛くない言葉を落とした


トキ殿下は少し間を置いて、うつむいたまま

「アリガト……」

と呟いた


「あおい」

カイリ殿下が口を開いた

「カラム父上はここでどのような実験……いや。魔術を行っていたんだ?」


そうだ

お姉様がその後どうしていなくなったのか、この状況とどんな関係があるのか……



『続きを……お話しましょう』

あおいお姉様は、再び過去を話し始めた


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