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143大きな石版

実験室の奥には、大きな石版でできた台がある

何か儀式でも行われていたのか、周りにはロウソクが溶けた跡があるし、動物のものか、はたまた人のものか……骨らしきものも散ちらばっている


石版の中心には、1人分の白骨化した遺体があった

はじめは何かわからなかったけど、ローブのような布の下には頭のような丸みと、窪んだ目元……それは人骨に間違いなかった


血で何か描かれた跡がある石版の上で、なんらかの儀式が行われたのか、ここにも無惨な惨状が広がっていた


石版に手をかざしながら険しい顔をしているカイリ殿下の隣に立って、私も石版を見つめた


一体、ここでは何の儀式が行われていたのか……


石版に触ろうとすると、トキ殿下にグッと腕を引かれて止められた


「ダメだよ……」

トキ殿下は静かに告げる

「これは黒魔術の痕跡だと思う。触れてはいけないよ。」


黒魔術……

この石版の周りの負の魔力の濃度が濃い

死がこびりついている


隣に立っているカイリ殿下は、片手を頭にあてながら顔を歪め始めた


何か辛そう……

大丈夫かな?


ちょっと心配になって、カイリ殿下の腕に触れた

「大丈夫ですか?」


すると、カイリ殿下は、ハッとしてこちらを見つめた

「何か……魔法を使ったのか?」


え?私が?

ご存知かと思いますが、何も使えませんけど……(涙)


「いえ。何も……。」

使えないものは使えないんだから仕方がない


カイリ殿下は納得のいかない表情を見せた

「浄化された」


え?

何が?


私が困惑していると、カイリ殿下は触れていた私の手を取り、石版の方を眺めた

「ここは黒魔術に使われたものだろう。おそらく、魔術を行使した者が死してなお、呪いのように魔力が渦を巻いている」


呪い…


トキ殿下も石版を見つめて言った

「怨念とかのたぐいだね。魔法とはまた別の、強い思念の塊によって生まれた魔力を、怨念によって場に固定されて、増殖し続ける……。よっぽど強い思念を持っていたんだろうね……」


「少し探ろうとしただけで侵食されたからな。触れるなよ。取り込まれる」

そう言ってカイリ殿下は私の方を見た

「みさきのおかげで助かった。ありがとう」


「私……何にもしてないんですが……」


触っただけで浄化とかできるものなの?

何か辛そうだなって見えたのは、負の魔力の影響だったのかな?

でも、とりあえず大丈夫なら良かった


「第4都市のクリスタルの時と同じか……」

トキ殿下が呟いた


確かに、あの時も、触れたクリスタルが浄化されたらしい

私にはクリスタルを壊した記憶しかないんだけど……

あれと同じと言われるなら、カイリ殿下が粉砕しなくてよかった……


「さて、これをどうするかだな……」

カイリ殿下は再び石版に目線を移した


「宮廷の良くない空気はここが地盤になって根付いてるかもしれないしね……。でも、どうこうできるものでも無さそうな気も……」

トキ殿下は辺りを観察している


私も、石版の上の人骨を眺めた

深い愛情、それによって歪んだ憎悪、執着…

それらの感情は呪いのようにこびりついている


「結局、これは、何を成すためのものだったんでしょうか……」

そもそも何をするためにこんな生物実験と黒魔術なんてものを……

私は、石版の上の人骨と、実験室を交互に見て、カイリ殿下とトキ殿下に問いかけた


「………。」

カイリ殿下は、難しい顔をして言葉を選んでいるようだ


「?」

私はカイリ殿下を見ながら顔を傾げた


「いや……。何でもない」


カイリ殿下が何を思ったのか、私には分からないけど、言いづらい何かなんだろう

でも気になる


トキ殿下が辺りを見回す

「何かレバーがあるけど、これ、なんだろうね?」

トキ殿下が壁に設置されている、ボタンやレバーの元に歩いていく

手が繋がってる私は、トキ殿下を追う形で一緒に壁際に向かって歩いた


この大きなレバーを下ろしたら、上から剣山が降ってくるとか、このボタンを押したら床が抜けて奈落に落ちるとか、それっぽい妄想をしたけど、トキ殿下が触った感じでは、古いのか錆びているのか、どれも動かなそうだった


「このスイッチだけ動きそうだね」

小さなレバーを触りながらトキ殿下が告げる


『パチンっ!』


トキ殿下がおもむろに小さなレバーを上げて何かのスイッチを入れた


すると、ガタゴト音を立てて地面が揺れた


「わっ!!」


バランスを崩して、トキ殿下の腕にしがみつく

「大丈夫?」

トキ殿下に支えられながら、辺りを見回す

すると、床の大きな石版が、ゴトゴトと音を立てながら動き出した

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