142.地下室2
窓のない壁は石を積み上げられてでできていて、所々変色し、シミがいたるところについている
気味が悪い……
薬品棚や試験管、沢山の本、ドス黒い謎の液体が入った……瓶……
実験室?
無数に並べられた標本の入った小瓶の中には、ありとあらゆる生物のパーツの一部や、臓器のホルマリン漬け、恐らく実験で形を変えてしまったモノなどが、大量に保存されていた
………。
言葉にならない
見せられないと言われた意味も分かる……
その無惨な光景を目にして、背中がヒヤッと冷たくなる感覚に、自分の意思とは無関係に体が震えた
生物、あるいは人体にまつわる実験が行われていたのかもしれない……
カイリ殿下は室内を軽く一周して、戻ってくると、私の頬に手を伸ばす
「……無理はするな」
カイリ殿下は、痛ましい表情を隠しきれずに、優しく私の頬に触れる
2人は私が落ち着くのを待ってくれている
深呼吸して少し落ち着くと、カイリ殿下は、この部屋の奥に続く部屋に足を向けた
私もカイリ殿下について行くように進もうとして、トキ殿下にパッと腕を掴まれた
「手だけは繋いでてくれるかい?」
宮廷に来てから何故か、ずっと手を繋がれている
私がなんでだろ?って思っていると、トキ殿下が説明を足した
「何かあった時に、みさきを守れないのはもう嫌なんだ。特にここは負の魔力が濃い。何か起こってからじゃあ……」
ものすごい心配されてる……
思い返してみれば、いきなり倒れたり、勝手にクリスタルに触って壊したり、知らないうちにフラフラ出歩いたり………
でも、まぁ、この国にとって私と言う浄化の触媒が無くなることは困りますよね
そうだ
自惚れてはいけない
うかれてもいけない
2人にはダリア王女が居るんだ
勘違いして辛いのは自分だけ
私は思い直してトキ殿下と手を繋いで、実験室の中を歩く
壁際のちょっと大きな椅子には布が被せてあって、肘掛からは干からびた指のようなものが見える
何?もしかしてミイラ……
きっとカイリ殿下がそこにあった椅子に布を被せたんだと思う
ミイラらしき者の指には、海のように青い宝石が輝く金色の指輪がはめられている
きっと身分の高い方だったのかもしれない
人体は朽ちてしまっても、鉱石は朽ちることなく凛とした輝きを纏っていた
そのミイラの横を通りながら、私達は実験室の奥に進んだ