141.地下室1
薄暗い空間
陽の光は一切入らない、ジメッとした空気を感じる
1段1段、階段を降りる度に、空気がズシリと重たくなっていった
この重たい空気は魔力だ
濃度が濃い負の魔力……
カイリ殿下がくれた飴玉のおかげか、トキ殿下が手を繋いでいてくれるからなのか、魔力は感じるけど、心は侵食されない
息もできる
ふぅ~っと深呼吸して、再度足を進めた
「大丈夫か?」
先を進むカイリ殿下が振り返って気にかけてくれる
「大丈夫です。ありがとうございます」
奥まで下ると、途中から壁がなくなり、手すりだけが残された
どうやら何か空間があるっぽい
最下層まで下ると、地下室が広がっているだろう空間に降り立つ
一体何があるのか
ちょっと怖い……
カイリ殿下が、手に灯していた光を二つに分け、指をパチンと弾くと、光は四方に飛んでいき、壁にぶつかり、弾け、中の様子がぼやっと浮かび上がった
その瞬間、カイリ殿下が羽織っていたマントをバサッと広げ、後ろにいた私の視界を塞いだ
ん??
私は何があったのか分からないまま、後ろに居たトキ殿下にパシッと目元を覆われ、引き寄せられる
バランスを崩して、トキ殿下に身を預けると、そのままクルっと体を反転させられて、顔を埋めるように抱きしめられた
何も見えないっ!
何??何があったの??
「ん~~っ?」
視界ゼロの私は、体を動かそうにもトキ殿下にがっちりホールドされているので、動けない
私がモゾモゾしていると、
「ごめん……見せられない……」
トキ殿下は感情を押し殺したような声で、呟いた
一体何が……
コトン、コトン、っと、カイリ殿下がゆっくり歩く音が地下室に響く
トキ殿下は、私をホールドする腕を少し弛めて語りかける
「みさき。体調悪くなってない?」
「案外大丈夫……です」
「そっか。良かった。」
ボヤッと照らされた地下室は、薄暗く、空気の流れを感じられない
トキ殿下も、この部屋に満ちる負の魔力を感じ取っているようだった
でも、なんでこんなに……。
「何があるんですか?」
見せられないと言われても、やっぱり気になる
「…………。」
トキ殿下は言葉を選んでいるようだった
「元、生き物だったものがある……って感じかな……。」
元?!
じゃあ、今は?!
私は色々想像した
元、ということは、今は形を変えてしまったということ……ですかね?
部屋が明るくなるのを感じる
カイリ殿下が、魔法で部屋全体を明るく灯してくれたみたい
「あの。私、大丈夫なんで……腕を解いてもらえると嬉しいのですが……」
とりあえず、この身動きが取れない状態を解放して貰えるように聞いてみた
「………。」
トキ殿下が渋々腕を緩めてくれたので、私はゆっくりと振り返り
明るくなった部屋全体を見渡した