140.岩
「この岩が怪しいです」
結構大きめの岩に触れながら、こちらを見ている
カイリ殿下は岩に手を当てて、呪文を唱えた
「………。」
何も起こらない
「割れないな」
カイリ殿下は、岩に手を当てたまま呟いた
カイリ殿下が魔力を行使しても砕けない岩……
怪しさ100%だ
「あ。ちょっと待って?」
トキ殿下が片手に紺色の鉱石を取り出して、みんなの手を止めた
「ロイと繋がった。」
トキ殿下は鉱石を耳元に添えながら目を閉じた
何が起こっているか、私にはさっぱりだけど、あの鉱石を通して会話できるんだろうか?
「わかった。ロイはそのまま待機。」
トキ殿下はロイさんに指示を出して、通信?を終えたようだ
「で?ロイはなんて?」
カイリ殿下がトキ殿下に会話の内容の報告を求めた
「中庭の結界が解けたみたいだ。みさきが魔法具の封印を解いたからかもね。外側からも、私たちが見ている空間と同じ風景が見えるようになったらしい」
「ただ、ガラスで囲まれているから、入れないみたいだけど、こうやって魔力の通信ができてるから、何かあったら魔力を辿って飛べると思う」
トキ殿下は鉱石をポケットに戻し、カイリ殿下が割れなかった岩に目を向けた
トキ殿下が岩に触れる
ついでに私も岩にタッチした
『ガタンっ!!』
あれ?
嘘……
岩はそのまま大きな音をたてながら、コロコロと階段を転がるように落ちていった
ええーーーーっ!?
内側から開けられない封印って、そーゆーことだったの?
いやいや。絶対そんな意味はないんだけど、なんかそう思ってしまった
魔法が使えない私の思考回路なんてそんなものです。はい
岩が転がって入口ができた
地下へ続く階段がみえる
何かあるのかな…
でも、何も無ければ封印なんてしないし、階段なんて作らない……
「どうする?」
トキ殿下は、私とカイリ殿下を交互に見て言った
カイリ殿下は私を見つめ、私の答えを待っている
「行きます……か?」
私は首を傾げながら2人に聞いた
「何があるか分からない。でも、みさきじゃないと解けない封印だったということは、君に関係することなのかもしれないね。」
トキ殿下は私と繋がってる手をギュッと握りながら言った
カイリ殿下は階段の中を覗き込むと、片手の手のひらを上向きにして、その手のひらの中に光を灯して言った
「私が見てこよう」
「カイリ様!わたくしがっ!!」
フェンさんがカイリ殿下を止めようとしたけど、カイリ殿下は既に階段を数歩降りていた
「フェンはここで待て」
「ですがっ!!」
「待て」
「………。かしこまりました。」
カイリ殿下は、静かにフェンさんを留めて、階段を降りていく
私も引き寄せられるように、階段を降りていった