138.中庭の結界
バラが咲き、綺麗な情景のはずなのに、私には薄暗く、ジメッとした空気が触れている気がする
邸内の負の魔力が頭上に渦を巻いているように感じた
私はトキ殿下の腕にキュッと抱きついたまま、辺りを観察する
トキ殿下は、外のカイリ殿下に話しかけるけど、通じないみたい……
「一旦出よう」
そう言って、来たガラスの方に向かって手を伸ばすと、ガラスはすんなり腕を受けいれ、中庭からガラスをすり抜けて、カイリ殿下達がいる元の場所に出ることが出来た
「ブルーローズが咲いてる……」
トキ殿下が、カイリ殿下に告げた
「ここから見えている風景と違うものが広がっているということか……」
カイリ殿下は腕を組んで考えをめぐらせている
「中からは外の様子が見えるけど、声は届かないみたいだね」
「こちらからは、ガラスの中にのまれたものは何も見えない。この中庭の風景が変わることも無かった」
2人はお互いの状況を報告して情報をまとめている
「トキ殿下の幽閉されていた塔の結界?に似てますよね」
私は思ったことを口にした
みんなの視線が、私に集まった
「あれ?なんか、決まったルールで通らないと、正しい場所にはたどり着けない的なものでした……よね?」
私はフェンさんに向かって答えを求めた
フェンさんは眉間にシワを寄せて、ガラスに触れた
「フェン。どう思う?」
カイリ殿下はフェンさんの意見を聞く
「皆様の話をまとめますと、みさき様の言った結界の作りに似てることは考えられます。しかし、それを施すには、私と同じような魔力特性を持った者か、もしくは魔法具が使用されているか……」
「魔法具か……」
カイリ殿下は中庭に目線を移した
「みさきがこの結界を通るための鍵になってることは間違いないな」
咲き乱れたブルーローズ
青い花は、あおいお姉様の魔力で咲いているのかもしれない……
「中を少し調べるか」
カイリ殿下は、そう言って私に手を差し出した
多分、私と繋がっているものは通れるのかもしれない
私はカイリ殿下の手を取った
「ロイ。君にはここに留まってもらう。通信できないかもしれないけれど、一応何かあったら連絡を」
トキ殿下はそう言って、ポケットから紫色の鉱石を取り出して、1つをロイさんに渡した
「かしこまりました。それではこちらをお持ちください。」
ロイさんが紺色っぽい鉱石をトキ殿下に渡した
「トキ様。お気をつけて。」
ロイさんは胸に手を当てて一礼し、お見送りの姿勢を見せた
「フェン。お前は一緒に来い」
カイリ殿下はフェンさんに向けて空いてる方の手を差し出した
「はい。失礼致します。」
フェンさんは丁寧にその手をとった
私は両手がトキ殿下とカイリ殿下と繋がったままガラスに向かって足を踏み出した