135.邸内
カイリ殿下が先導して門を通る
私はトキ殿下と手を繋いだまま、その後に続いて門をくぐった
ズンっと、空気が重くなる
メットリとした空気がまとわりつく
私は、繋いだ手をギュッと握った
「大丈夫?」
「……はい」
少し深呼吸をして、石畳の上を歩いていく
そして、ついに宮廷の入口の扉にたどり着いた
カイリ殿下が扉に触れると、内側にゆっくりと開いた扉が私たちを迎え入れる
人が居ないはずなのに、人の気配を感じる
人の思念だ
欲の強さは想いの強さ
想いの強さは呪いにもなる
日々宮廷に仕える人の思念がこびりついている
怖い……
私は恐る恐る足を前に進める
宮廷内は何気に小部屋がいっぱいある
〇〇の間、みたいなとこがいくつもあって、どこがどこだか分からなくなる
毎朝、朝廷議会が開催される会場までは、このメイン通路を、通っていけば着くようだ
私は辺りをキョロキョロ見渡した
見覚えのある風景も、新しく見る風景も、記憶があるものもないものも、気にせずボーっと辺りを見渡している
朧気な記憶は、歯車が噛み合うように、少しづつ鮮明なものになっていった
途中一瞬、キーンと耳鳴りがした
気のせいかなと思っていたけど、それから定期的に一瞬強い耳鳴りがしては、スっと無くなる
「大丈夫?」
トキ殿下が私の頬に手を添えながら足を止めて私を見つめた
冷たい私の肌を、暖かい手が覆う
気づいたら、トキ殿下の腕にギュッとしがみつていることに気がついた
「大丈夫……です」
私は、強ばって力が抜けないまま、しがみついていた腕を解放した
心をコントロールしても、体の記憶が勝手に反応してしまう
体が身構えてしまう
「僕はこのままでも良かったんだけど?」
トキ殿下は離れた体をスっと抱き寄せて、髪をやさしく撫でる
トキ殿下の腕に包まれて、少しずつ体の強ばりが取れていく
私の強ばりが取れたのを確認すると、トキ殿下は繋いだ手を引いてゆっくりと歩き出した