118.報告の終わりに
「第4都市のこともあってか、国内外の動きが慌ただしい。新しい国の樹立に各地ではいろんな憶測も出回っている……」
お忙しいってことですね
「教会は大丈夫だとは思うけど、変なものが届いたりとかしてない?」
「特には……何も」
「不振な人物が周りにいたりしないか?」
「そんな人いませ……」
ふと、昨日の誰だかわからない訪問者のことを思い出した
「?なにか思い当たることがあるのかい?」
「あ。いえ……。昨日…………。部屋に誰か来たみたいなんですが、誰かわからなくて……。」
「それはどういうことだ?」
「部屋のドアをノックされたんですが、人の気配もないし、足音もしないし、声もしないし、なんか怖くて誰か確認しないまま寝室に閉じこもったんです……。」
それを聞くと、トキ殿下はクスクス笑いながら、
「みさきって怖がりだよね?まぁ、魔力感知が出来ないからそれもあるんだと思うけど…」
と言ってロイさんに目線を移した
「申し訳ございませんでした」
ロイさんが何故か謝罪の言葉を口にする
ん?
なんでロイさんが謝るんだろぅ?
トキ殿下は笑いながら
「今日のことを伝えるために遣いに送ったんだけどね…みさきに会って貰えなかったって言って帰ってきたからさ(笑)」
何だ~ロイさんだったんだぁ~
言ってよぉ~
でも、良かった
目に見えない何かではなかった。うん。良かった。そして、ロイさん。ゴメンなさい!!
明らかにホッとした私を見て、トキ殿下はさらに笑い、ロイさんは申し訳なさそうに頭を下げた
「あとは、知らない奴にホイホイついて行かないことだな」
カイリ殿下は冗談なのか本気なのか分からない口調で言った
「子供じゃないので、それくらい分かります!」
そもそも基本的には外に出ないので、知らない人に会うこともないです。はい。
カイリ殿下が立ち上がる
それを合図に、みんなもいっせいに立ち上がった
解散の合図だ
私も立ち上がると、カイリ殿下が目の前に歩み寄って来て私の左手をとった
少し寂しそうに私の指をなぞる
「指輪。気が向かなければ身に付けなくてもいい。だが、外に出る時は持ち歩いてくれるか?」
「あ……はい……。」
なんか気まずい……
私は目を合わせられずに、うつむいて答えた
カイリ殿下はそのまま私の右手もすくいとり、
目をつむった
手元がじんわり暖かくなる気がした
懐かしい。この感じ……
カイリ殿下と出会って間もない時も、こうして私の体を気遣ってくれた
そして、その時もらったネックレスを先日壊してしまった……
カイリ殿下は私の手を解放すると、
「ネックレスのことは気にするな。」
と言って部屋の出口に向かって歩いていく
その姿を目で追っていると、横からトキ殿下が私に手を差し伸べる
「手を、いいかい?」
声のするほうを見上げると、優しげに微笑むトキ殿下が私を見下ろしている
私はその手に自分の手を重ね、帰宅路に着いた