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116.調査報告1

「ロイ、報告をしてくれるかい?」

トキ殿下が話題を振った


「はい。まず、宮廷内の神殿についてですが、正確な場所は分かりませんでした」

「そうか」

カイリ殿下が短く答えた


「ですが、国内外の情報を統合すると、神殿にはブルーローズが咲いていたという話もあり、そちらの線からも調査してみましたが、やはり掴めませんでした」

「ブルーローズか……」

トキ殿下が顎に手を当てて記憶を探っている


私は一体全体なんの報告会が始まったのか、私がなぜ呼ばれているのか分からずに、ボーッと話を聞いている


「みさき。何か覚えているか?」

「あまり振り返りたくない記憶なのは承知の上だけど…」


2人の視線が私に集まる


「えーっと……何の……話なんでしょうか」

私は本日の議題を聞いた


「みさきが記憶を無くしていた間の出来事は、大がかりな魔法で記憶を少し歪められている可能性が高い。恐らく、国全体に記憶操作がかかっている」


「ん?え??記憶操作?!」


「そう。父上が起こした紛争時の記述と記憶が曖昧なんだ。現にクリスタルが元々は宮廷内の神殿にあったことを覚えているものは居ないのが良い例だからね」


「そんな……」


びっくりを通り越して、訳が分からない

そんなことってあるの?

でも、私が記憶を封印されていたんだから、他の人の記憶も封印されているのもありえないことではないけど……


「国の歴史を知らずしてこの国の王を名乗ることは出来ない。もし、何者かの介入があるのであれば、それも知っておかねばならない」


「戴冠式になれば、国内外から多くの来賓が訪れるんだよ。それまでに国内のいざこざは精査しておきたいからね。既に今だって婚儀のあれやこれやも相まって、欲にまみれて名声を売ろうと言う人達の塊だから……」


「トキ……」

カイリ殿下は、少し低めのトーンでトキ殿下の会話を切った


婚儀……そっか。やっぱり。2人は結婚するんだ

だから、国の黒歴史は精算して、クリーンな状態でダリア王女をお迎えする


そう言う

ことか


私は自分の記憶を探る

後宮の皆さんとお話した時も話に出たブルーローズ……どこかで……


「ブルーローズ……私、昔、宮廷に行った時に見た気がします」


「「「「ええっ!?!?」」」」


一同が驚きを隠せず声を発した


「でも、正確な場所は分かんないんですが、なんか、見た気がするんですけど……」


うーーん。建物広かったし、私は邸内を把握していた訳では無い

断片的な風景描写と断片的な記憶が私の脳内では散らかっている


「無理はするな。あまり良い記憶ではないだろう」

私が唸っているのを見てカイリ殿下が声をかけてくれた


でも、新しい国の誕生に私ができることはきっとこれくらいだ


自分の利用価値は自分がいちばんよく知っている



私は記憶を辿った

宮廷へ連れていかれ、苦しかった日々を辿った

そのどこかで見ているはず


宮廷内の神殿……

確かに、なんか厳かな作りの場所にクリスタルが……あった


記憶をめぐらせると、どんどん体が冷たくなってくるのがわかる


体が思い出すんだ

冷たくて暗い……

クリスタルのことを……


私はロイさんの入れてくれたミルクティーのカップを手で包むように持ち、暖をとった

ロイさんの不思議な魔法で入れられたお茶は、いつまでも冷めることがない


「宮廷のどこにあるかは分からないんですが、もしかしたら、行ってみたら何か思い出すかも知れません!」


思い出せないものはしょうがない

現地に行ったら何かわかるかもしれない

そんな安易な考えで、私は宮廷に乗り込むことを提案した


「いや……。連れて行けない」

「それは最終手段にしよう」


私は名案だ!くらいの気持ちだったのに、2人はとても否定的だった


何でさ!?


「あと、後宮の噴水の件ですが」

ロイさんが次なる話題を差し込んだ


ブルーローズは諦めたということなんだろうか……

後宮の噴水って、あのお庭にあった噴水のことかなぁ

私の脳裏にはあの時の光景が頭をよぎった


「ユミ様のお話によると、先代のマリア様であるあおい様は、国内の水脈の源流である、宮廷の神殿で浄化した水を使って国内全てを浄化していたとのことですが」


「あぁ。そこにクリスタルがあったと聞いている。」


「国内の噴水や水壁、川や泉、各地の様々な場所を調査しましたが、他と別段変わったこともございませんでした。ただ……」


「ただ?」

トキ殿下が話の続きを促した


「後宮の噴水の周りの青いヒトミソウの咲き方は異常です」


異常?!青いヒトミソウって、多分青くて小さな花だよね?!水辺にいっぱい咲いてるってフェンさん言ってなかった?普通なんじゃないの?!


「元々ヒトミソウはどこにでも咲く花ですが、青い花をつけるのは水辺だけでございます。各地の噴水の周りには咲いている場所はほとんどございませんでした。」


ロイさんの報告にカイリ殿下は難しい顔をして、何かを考えているようだ


「確かに、後宮の噴水の周りは年中枯れることなく、咲き続けているな……」


「そこで、1つ仮説を立てたのですが、もしかしたら、青いヒトミソウは、あおい様の魔力に反応して咲いているのかもしれません」


お姉様の魔力……私は、青い花を思い返した

「私の教会のお庭にも沢山咲いてた気がします。あと……満月の泉のまわりにも」


思い返せば、あおいお姉様の周りには青い花が咲いていた

多分、本来は違う色の花をつけるであろうお花も、青い花として咲く

それが、お姉様の魔力の影響なのかもしれない


すると、フェンさんが口を開いた

「その仮説は正しいかもしれません。」


みんながフェンさんの方を向く

「お恥ずかしながら、私はマリア様の聖堂の結界に拒まれております」


そ……そうですね……。

フェンさん未だに入れない……ですね


「後宮の噴水にみさき様が落ちそうになるのを支えようとしたところ、水に阻まれました。あおい様の魔力に私が拒まれていると考えれば、噴水の水はあおい様の魔力の影響が強く現れているのかと存じます」


フェンさんって、以前お姉様にそんなに拒否られることしたの?

なんでそんなに拒否られるんだろう?



「一理あるな」

カイリ殿下は納得して、ロイさんの仮説を受け入れた


「して、フェン。カシェの話はどうだ?」

カイリ殿下が新たな話題を振り、フェンさんは報告を届けた

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