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113.帰宅
目が覚めると、そこは自室のベッドの上だった
近くのサイドテーブルには、ピンクの小瓶が置かれていた
「お目覚めですか?」
そう言って、エリちゃんがティーカップにハーブティーを用意する
すると、ラベンダーの香りがふわっとお部屋に広がった
辺りを見渡しても、トキ殿下の姿は無い
「一緒に居てくれないんだ……」
寂しい
エリちゃんは
「『合わせる顔がない』とおっしゃって、こちらを置いて帰られました」
と、ピンクの小瓶を指し示した
「みさき様。指輪、お外しになられたんですね」
「……つける権利が無い気がして……」
だって、婚約指輪みたいって浮かれてた自分が恥ずかしい
2人に出会う前に戻りたい
知らなかった頃に
そうすれば、こんな感情生まれなかった
こんなに苦しい気持ちにもならなかった
いつの間にか、私、2人のことこんなに好きになっていたんだ……
浮かれて、勘違いして、勝手に舞い上がってしまった
それが正されただけだ
窓の外を眺めると、シトシトと雨が降っていた