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112.ブレスレット

私は1人で来賓館へ向かった

おもてなし用に建てられた来賓用の別邸

前に来た時は、ルゥ君達が迎えてくれたっけ

そういえば、ルゥ君達にも会ってないなぁ~


なんか、少し前のことなのに、ものすごく前のことのように感じる


入口をノックすると、使用人らしき人が出迎えてくれた

中に入ると、通路には生花がたくさん飾られ、館内を花の香りが満たしている


なんだか、空気が重い

前に来た時はそんな感じはしなかったのに、花の香りに乗って、負の魔力がうっすらと漂っている気がする


私は無意識に胸元のペンダントを握った

カイリ殿下から貰ったペンダント

未練がましい気がしたけど、これだけはお守りのように外せずにいた


「こちらでございます」

大きな扉の前に立つ

この扉の前にダリア王女が居る……


ガチャ

大きな扉がゆっくりと開かれて中に案内されると、そこにはダリア王女と腕を組み、険しい表情をしたカイリ殿下と、その反対側では、取り繕った笑顔を貼り付けた様子のトキ殿下が立っていた


(2人とも居るんだ……)


3対1の構図に、敵陣に1人で乗り込む特攻兵のような気持ちで、1歩1歩前に歩みを進めた


カイリ殿下とトキ殿下との距離を感じる

いつもは感じなかった居心地の悪い距離感



(ウワサ通りなら、この方が婚約者様……ということなのか……)


なんでわざわざ私を呼び出したんだろう?

マリア様お疲れ様!これからは私の仕事よ的な?


「みさき様。ようこそいらっしゃいまして。」

ダリア王女は私に声をかけると、カイリ殿下の腕を解いてこちらに向かって歩いて来る

私を品定めするように、頭の先から足の先までジロリと目線を感じる


「わたくし、みさき様と2人でお話がしたいですわ」

ダリア王女は巻き髪の綺麗な金髪をフワリとなびかせながら振り返り、カイリ殿下に熱い眼差しを送る



カイリ殿下は、さらに険しい表情でこちらを見届けている

すると、

「カイリ。顔に出てる」

トキ殿下がカイリ殿下の眉間に人差し指を当ててボソリと呟いた


「お前こそ、能面みたいなその表情どうにかしろ」

カイリ殿下はトキ殿下のほっぺたをつねりながら反論した


2人共なかなかに機嫌が悪い……

トゲトゲしたオーラがグサグサと刺さってくる


若干苦しくなってきた

これは……この2人が影響している……のか?それとも、この館を漂ってる重く苦しい負の魔力のせいなのか……


お邪魔……だったのかな

迷惑……だったのかな

私は何でここに居るんだろう……


私は居心地の悪さに胸元を押さえた


それを見たカイリ殿下と、トキ殿下は、ハッとした表情を一瞬見せると、

「少しの間席を外そう」

「近くにいるから」

そう言い残して部屋を出ていった


ダリア王女と2人きりになってしまったんだけど……


すると、ダリア王女は小箱を私に差し出した


「こちらは、私の国で採れる聖なる鉱石でできたブレスレットですのよ」

「体がお辛いのではなくて?」


そう言って、小箱を開く

中には、少し青みがかった鉱石で作られたブレスレットが入っていた


「あのっ!お気づかい頂かなくても大丈夫です!!」

私は慌てて手をパタパタと振りながら受け取りを拒否した


「まぁ。遠慮なさらないで。この聖なる鉱石は、魔力を浄化し、体の不調を整えてくれる物でしてよ。」


そう言って、拒否する私の手を掴んだ

ダリア王女が触れた手に力が入らなくなる

侵食されていく感覚

そして、そんな状況で手を振り払える事もなく、ブレスレットを無理やりはめられた


ブレスレットは、重く、冷たく、私の腕から心を蝕む


ブレスレットからは魔力の憎悪が流れてくる

苦しい……


すると、胸元のペンダントが勢いよく割れた

ペンダントに触れると、手のひらの中に

原型を留めず割れてしまった赤い宝石がパラパラと落ちてくる


それに呼応するように、ダリア王女から渡されたブレスレットも派手に砕けて、私の手首から外れ、鉱石の破片が床に散らばった


私は体に力が入らなくて、ヨロヨロと床に座り込んだ



バンッ!!!

ドアが勢いよく開き、カイリ殿下とトキ殿下が飛び込んでくる

それを見計らってか、わざとらしくダリア王女が声を上げた

「まぁっ!!聖なる鉱石が砕かれるなんてっ!!穢れが強いのですわ!!」


体が動かない。言葉が出ない


「わたくしが浄化して差し上げます」

そう言って私に触れようと手を伸ばす


「いや。」

カイリ殿下は私に触れようとしたダリア王女の手首をパッと掴んで止めた

そのまま私から距離をとるように自分の懐にダリア王女を引き入れる


ダリア王女は頬を赤らめて、その腕の中に収まっていた


トキ殿下は私のもとに駆け寄って来て、背中に手を添えてくれた

そして、私の手のひらの上の壊れたベンダントを眺めると、首元に手を回してペンダントを外す

「ケガをするといけない」

そう言って、ハンカチを取り出すと、そこに割れてしまった宝石の欠片と、ペンダントをしまった


カイリ殿下は「怪我はないか?」とダリア王女に声をかける

「私は大丈夫ですわ」

「ですが、私の聖なる宝石が砕かれるなんて、とても汚れた魔力を持ってるに違いありません

みさき様を浄化して差し上げないと!」


ダリア王女はカイリ殿下を見つめながら話す


「王女に何かあってはいけない。別室で怪我がないか確認させて頂きたい」

そう言ってカイリ殿下がダリア王女の手をとって、トキ殿下にちらっと目線を送り、ドアの方へ向かって歩き出した


王女は満足そうにピッタリとカイリ殿下にくっついて、2人は別室に消えていった


何が起こったのか分からない私は、ペンダントを壊してしまったことをカイリ殿下に見られてしまったことのショックと、ダリア王女のブレスレットを壊してしまったことの焦りで、困惑していた


どうしよう……

どうすればいいんだろう

分からない

何もかも分からないよぅっ!


脳内の混乱が収まらない



『ごめんね。』そう言われ、

トキ殿下に抱き上げられる

その瞬間、張り詰めていた緊張から解放されたのか、負の魔力から解放されたからなのか、私の意識は遠のいて行った

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