104.お茶会
支度を整えて待っていると、ラディアさんがお迎えに来てくれて、後宮へ向かう
今回の会場は、温室栽培のお花に囲われたティールームのようだ
ガラスに囲われた温室は陽の光が注ぎ、夜には満天の星空が輝く
中には普段は目にしないような、変わったお花が沢山咲いていた
椅子を並べて3人は既にテーブルについて待っている
ラディアさんは、お仕事があるらしく、後宮を後にして行った
ライラさんがティーカップにお茶を注ぐと、バラの良い香りが漂う
「こちら、新作のローズティーですの」
お茶の紹介をしながらみんなにお茶を配り
終えると、3人はニコニコして私を見つめた
どうしよう。注目されてる……
「えーーっと……」
「ご招待頂きまして、ありがとうございます」
私は、視線に耐えながら言葉を振り絞った
「そんなにかしこまらなくて良いのよ?」
「それに、もっと気軽に遊びに来てくれていいのよ?」
「何かあったら私達に相談して欲しいわ」
「お力になれることもあるかもしれなくてよ」
アルバさんとメリナさんは、今日も優雅に扇を片手に、にこやかに話す
さすが貴族の令嬢
居住まいも、たたずまいも、服装も、頭の先から足の先まで、綺麗に着飾られている
きっと、このお二人なら、贈り物を数々貰っているであろう
きっと、その意味についても知っているはずだ
「あの~お聞きしてもいいですか?」
「なぁに?」
「贈り物をいただくって、貰った物によって、意味があったりするものなんですか?」
「そぉねぇ~。この国では特に、どの人からどのように貰ったかによっても色んな意味を持つわ」
「例えば……その指輪」
そう言って、私の指にはめられている指輪にチラリと目線が動く
「指輪は制約の証よ」
「指輪をいただく時に、言葉を一緒に受け取らなかった?」
「言葉……」
状況を振り返る
「…………。」
恥ずかしくて顔を両手で覆いつつ、記憶は鮮明に思い出された
「その言葉が制約よ。誓いみたいなものね」
「贈り物としての指輪は、色々な意味があるわ。でも…。ねぇ……?」
アルバさんは、メリナさんに目線を送った
「そうよねぇ…?」
メリナさんは、ライラさんに目線を送った
「……ですわ」
ライラさんは目を輝かせながら、胸元の前で両手を握り、こちらを見つめる
3人の目線が私に集まる
「なななな……何で……しょうかっ……」
3人はニコニコとしながら、私を見つめ続ける
「そんな独占欲丸出しみたいな指輪をお送りになるのは、あの2人しか居ないわ…クスクス…」
「そうよねぇ~。その宝石を見たら一目瞭然よ……クスクス…」
「素敵ですわっ!!」
3人には、私が誰からどんな状況でこの指輪を贈られたのか、モロバレだった
「みさきさん。デザインはお気に召して?」
「あ……はい!」
「それなら良かったわ。決めるまで大変だったんだから……笑」
「え?」
「みさきさんの好みに合うようにしたいとカイリ君は思ってたみたいだけれど……彼、全く好みが分からないって言って頭を抱えていたわ」
「トキ君はトキ君で、自分がみさきさんにつけてもらいたい。というデザインにしたかったみたいだけれど……あれもこれもって、選びきれなくて、結果、2人で頭を抱えていたわ」
「そんなに悩んで……」
アルバさんとメリナさんにガッツリ相談した結果、このデザインになったという訳なのか?
「みさきささん。その様子だと、多分わかってらっしゃらないと思うから、お伝えしておくわね。その指に贈られた指輪は、未来への誓よ。指輪を送り主に返すことは、込められた制約を破棄することを意味するわ。」
「そして、その指輪を身につけているということは、その制約を受け取っているという合図」
「つまりっ!!!」
ライラさんが勢いよく立ち上がった
「あなたから贈られた愛は、私に届いています。の印ということですわっ!!!」
(あ……愛っ!!??)
「こうしてお互いの気持ちを交わし合って、最後には、沢山の薔薇に囲まれた鐘の前で、愛を誓うのですわっ!!」
ライラさんは空に向かって手を伸ばしながら力いっぱい話している
「ライラちゃん。次の新作が楽しみね」
アルバさんとメリナさんは、ニコニコとその光景を眺めていた