決勝
バスケの女子陣が体育館へ移動していく。他クラスメイトのバレーの女子陣、野球Bチームの人達は、どうやらバスケの応援に行くらしい。
こちらの野球の方も同時刻から開始されそうだと言うのに、どうやらこちらへの応援はしてくれないらしい。
「薄情な奴らだよなあ」
吉村君が嘆いていた。
「な。折角女子に目立てるチャンスだと思ったのに、これじゃあ頑張り損だよ」
「相手には岡田がいるからなあ。下馬評考えて、皆勝てるかもしれない方に応援に行ったんだろう」
「おいおい、それじゃあ俺達が岡田を打てないみたいじゃん」
「じゃあお前、打てる自信あるの?」
「……黙るなよ」
思わず、僕も皆の話に口を挟んでしまった。
岡田君のピッチングは空き時間に皆で教室から見ていた時間もあったから、遠目ながら彼の実力は認識していた。
そして、その上でのこの無言。
特に深刻そうな顔で黙って腕を組んでいたのは、野球部の人達だった。
「皆、今日の目標は優勝と取り決めたわけだけど、ここに来て臆病風に吹かれてるの?」
「臆病風と言うか、客観論だな」
「正論は止めてくれ。折角励まそうとしているのに」
首を傾げた板野君に、僕は目を細めた。事実僕も難しそうだとは思っているが、色々僕も今回は優勝を目指す理由がある。野球は団体競技。皆の協力失くして、優勝を掴むことなんて出来っこないのだ。
「……まあ、ここまで来て準優勝でした、なんてのは格好がつかないのは事実だ」
「確かに。折角決勝まで勝ち残ったわけだしな」
しばらく話している内に、皆にもどうやら活力が戻ってきたらしい。
「よし。そもそも徳井に乗せられて始めた優勝って目標なわけだが……いっちょ皆で優勝掴んで、バスケの応援に行った連中を見返してやるか」
「そうだな。頑張ろうぜ、皆」
板野君が笑顔でまとめて、僕達は校庭へと向かった。
校庭に辿り着くと、そこには既に岡田君達が集合して待っていた。同じ一年で彼とは友人なのに、どうして今日はこんなにも彼から風格を感じるのは。
それなりの観衆の中、まもなく試合開始前の整列で僕達は岡田君達のチームと向かいあった。
「よろしく、岡田」
「ふん。お前達なんてあっさりのしてやるよ」
キャプテンである板野君と岡田君が、ガッチリ握手を交わしていた。
「ま、まあ……? 折角一年同士で決勝に残れたわけだし? 多少は良い試合をしてもいいかもなとは思うけどな」
「ツンデレ」
「黙れ、修也」
マウンドからの姿は威風堂々としているのに、どうして素の彼はこうなんだろうか。
少しだけ和んだからいいんだけどね。
アナウンスが流れた後、まもなく僕達は頭を下げ合った。
「よろしくお願いします!」
コイントスの結果、先行は僕達。後攻は岡田君達で、まもなく試合は開始した。




