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高校時代にタイムリープした僕は、絶縁した幼馴染にただ幸せになって欲しいだけだった。  作者: ミソネタ・ドザえもん
告白をやり直す。

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試投

 五打席分買ったコインが無くなる頃には、僕は凍えるような寒い日だと言うのに背中まで汗びっしょりになっていた。

 バッティング練習とは、中々体力を使う練習だ。思えば、金属性の数百グラムのバットを全力で何十回も振るだなんて、疲弊して当然ではないか。


「おっしゃー、ストラーイク」


 僕は今、ストラックアウトを楽しむ岡田君を傍観する役に回っていた。


「見てろよ修也ー! 次はカーブだ!」


『ストラーイク!』


 楽しそうに、朗らかに。

 岡田君から投じられた球は、弧を描くように一回浮き上がり、そこから急ブレーキして曲がっていった。それがあのストライクゾーンの枠組みに入る程コントロールされているのだから凄い限りだ。


 ……それにしても。


 岡田君はストライクアウトを楽しむこの間に、いくつの球種を披露しているのだろうか。

 ストレート。

 カーブ。

 スライダー。

 チェンジアップ。


「岡田君、持ち球僕に披露していいの?」


「は? バーカ。披露したって打たれないだろうし問題ねえよ」


 圧倒的自信。

 まあ確かに。

 百キロ程度しか打ち返せない僕にして、こんな他球種を一打席の中でいくつも織り交ぜられても打ち返すことは叶わないだろう。


「よっしゃー。全部抜いたぜー!」


 シニアでショートで四番。

 全然、ピッチャーも出来そうなんだけど?

 勤勉生真面目だけど、ツンデレで友達想いでそしてスポーツ万能。


 おいおい、主人公かよ。


 ……まあ、自分が人生の主人公とはマルチ商法を勧誘する人も良く言っているし、そういうことなんだろう。


「いやどういうことだ?」


「何が?」


「君、ちょっとカタログスペックが高すぎるよ」


「いや本当に何が?」


 岡田君め、何わけがわからないみたいな顔をしているんだ。それだけ才能に恵まれ、そんな顔をするだなんて……まったく鼻につく奴だ。

 先日似たようなことで紗枝に文句を言われたことを思い出し、僕は謙虚に生きようと思い直った。


「今日はありがとう」


「良いってことよ」


 バッティングセンター帰り。

 僕達は、並列で歩きながら帰路についていた。


「色々助かったよ。明日からもよろしく頼む」


「ああ。明日からは……守備練習をしよう。学校の校庭の隅を借りて、金属バットは俺が持って来る。……ただ、人手が足らんなあ」


「じゃあ、紗枝達に頼もうか」


「おお、それが良いな」


 岡田君は微笑んだ。


「……その方が、修也達に一緒の時間を共有させられて良さそうだ」


「何か言った?」


「何も」


 僕は首を傾げた。


「そうだ。ポジションはいつ頃決めるんだ?」


「どうだろう。また来週のロングホームルームになるんじゃない?」


「さっきも言ったけど、楽なポジションに行けるように努力しろよ。その方がバッティングにも集中出来るしな」


「そうだね」


「その方が、俺もお前を打ち取った時の快感が増幅出来るしな」


 にしし、と笑いながら、岡田君は言った。


「性格わる」


「悔しかったら打ってみろよ」


 そう言われると、僕も閉口せざるを得なかった。


「そういうわけだからさ。悔いの残らないように練習、頑張ろうぜ」


 ……僕を激励したいがために、わざわざ一度僕を下げたのか。

 本当、この男は……。


「ツンデレ」


「だから、需要ない」


「大概そんなことないと思うんだけどなあ」


「……ある方が困るんだよ、察しろ」


 ごもっとも。


「じゃあ、明日からもよろしくな。相棒」


「うん」


 ともかく、僕達は明日以降の練習に向けて、互いに互いの健闘を祈って、その場を別れた。

 そして、翌日の放課後。


「ポジション、さっさと決めた方がいいだろー」


 板野君の鶴の一声で、僕達はAチームは集結していた。

 板野君曰く、さっさとポジションを決めた方が練習効率も上がるだろうとのことで、この場は設けられた。

 そして、件のポジション決めの方式は……。


「まあ、あみだでいいべ」


 話し合いで決めるとそもそも思っていなかった男子の一言で、決められた。

 あみだの結果。


「じゃあ、徳井は四番ファーストだな。なんだか強打者っぽい立ち位置に収まったじゃん!」


 僕は、苦笑も満足に出来なかった。

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― 新着の感想 ―
[一言]  あーあプロでも一塁守備軽視して内野守備が酷いことになるチームが有るのに。  ハンドリングはセンスと練習が両方必要。
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