表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校時代にタイムリープした僕は、絶縁した幼馴染にただ幸せになって欲しいだけだった。  作者: ミソネタ・ドザえもん
クリスマスをやり直す。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/65

寒空

皆様のおかげで遂に日間ジャンル別5位になれました!

本当にありがとうございます。一つ殻を破った気がします!

 社会人時代、一日一日が過ぎるのが昔に比べて随分と早くなったように思うことがあった。昔もあの時も今も、一日の時間は二十四時間と定められているのに、疲れ目でパソコンに向かっている内に外は真っ暗になっていた。

 一日が早く過ぎ、一週間も。そうして一年。


 僕はあの時間軸で、紗枝と絶縁した後、八年もの時を過ごしてしまった。


 あの時と同じくらい、一日一日が過ぎるのが早く感じた。納期に追われているわけではないのに。仕事を急いで終わらせなければならないわけでもないのに。

 ただ授業を聞いて、学んで、遊んで。


 大人時代に比べたら暇な時間も多いのに、その時間はあっという間に過ぎていった。


 赤いマフラーを首に巻き、僕は家を出た。

 折角のクリスマスだと言うのに、日本海側から押し寄せた寒波により、外は身も縮こまってしまいそうになる寒さだった。


 でも、それだけ寒かろうが僕は足を進めた。

 凍てつく寒さが、肌身に染みた。スニーカーが地面を蹴る音が、いつもより大きく響いた。


「おはよう、紗枝」


 僕は先週、紗枝宅にて彼女に一つのお願いをした。

 クリスマス、一緒に遊ぼう。

 最初は男友達と遊ぼうとしていたのに、彼らに背中を押されて、後悔をしたくないと思い留まって、僕は紗枝をその日に誘うことにした。

 

『いいよ』


 それより少し前に、紗枝を怒らせた一件もあり、きっとその願い出が受け入れられることはない。

 そう思っていた僕からして、紗枝の同意はあまりに意外な結果だった。おかげで僕は、しばらく呆けた様子で紗枝を眺めてしまうのだった。


 まもなく、僕達は当日の予定を決めだした。誘った癖に予定の一つも考えてなかったのか、と紗枝に少し怒られたが、それでもすぐに僕達の予定は決められた。


『あたし、映画見に行きたい』


 快活にそう言う紗枝に、僕はわかったと頷いた。

 迎えられた当日。

 僕と紗枝は、家の最寄り駅で集合した。

 

 鼻を赤くし、白い息を吐いて手を温める紗枝を見つけた時、僕は気付けば駆け足になっていた。


「ごめん。待った?」


「ううん。ちょっと早く家を出過ぎただけ」


 紗枝の家から最寄り駅までは五分少々。そんなに急いて来なくても良かったのに。僕は罪悪感を感じながら、紗枝にマフラーを渡した。


「え」


「く、首元……さ、寒くない?」


 我ながら大それたことをしてしまった。もう僕は、マフラーが不要なくらい顔が熱かった。

 紗枝は僕の顔とマフラーを三回くらい交互に見て、まもなく微笑んだ。


「ありがとう。使わせてもらう」


「……うん」


「うん。温かい。温めてくれてありがとうね」


「……そんな理由で巻いていたわけではないんだけどね」


「返す?」


「ううん。当分大丈夫」


「そうみたいだね」


 苦笑する紗枝を見て、僕は同調して微笑んだ。

 電車に乗って、僕達はターミナル駅を目指した。数十分電車に揺られて、僕達は駅に辿り着いた。


 たくさんの人が行きかうホームで、


「危ないよ」


 僕達は、互いを見失わないように手を取り合った。

 ありがとう、ごめんね。

 互いに微笑み合って、そんな短い言葉を交わしあった。


 ターミナル駅は、いつにもまして人が多かった。何故だか、カップルが多かった。

 今日がクリスマスだと、駅のホームがそう告げていた。

 そしてそんな浮ついた場所にいる僕達もまた、周囲からそう見られているかもしれないと思うと、少しだけ僕の気持ちは落ち込んだ。

 紗枝と色恋沙汰をするつもりは、僕にはなかった。

 ただ僕は、紗枝と思い出を作りたいと思っただけだった。後悔しないように、クリスマスの思い出を作りたいと思っただけだった。


 地上に出て、群衆の隙間を縫って歩いた。


 交差点。たくさんの人が集ったせいで、信号機は見えなかった。

 人波に従って、僕達は歩き出した。


「こうして歩いていると、昔を思い出す」


 僕に手を引かれる紗枝が、感慨深そうに言った。


「昔はいつも……あんたがあたしの手を引いて歩いてくれていた」


 僕は何も言わなかった。


「昔のあたし泣き虫で……気付いたらいつも、あんたに泣きついてたよね。あんたそうされたら、いつもあたしをイジメた人に怒りに行ってくれてさ」


「そうだったか」


「そうだよ。忘れたの?」


 優しい紗枝の声色に、僕はまた黙った。

 忘れるはずがなかった。

 忘れるはずが、なかったのだ。


 紗枝とのかけがえのない思い出を、忘れた日は一度もない。


 ただ、紗枝と生んでしまったトラウマも、忘れた日は一度もない。


「ここ」


 紗枝が手を引いたから、僕は足を止めた。

 映画館。

 見上げた先のポスターで、僕はぎょっとした。


 映画館のビルに貼られた大きな目を引くそれはは、所謂ラブロマンスの映画のポスターだった。


 夕日を背に、情熱的に見つめ合う男女に、僕は気付いたら視線を釘付けにしていた。

今どきの学生カップルってどこにデート行くの?

ジャスコ?

イオン?


あ、評価、ブクマ、感想よろしくお願いいたします。次は日間ジャンル別4位を目指させて頂きたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです。 [一言] 本当に時間遡行しているのか、植物状態の主人公が見せる夢か分かりませんが、悔いのないよう上手く付き合えたら良いですね。 こちらで自分が幸せにできたら、本来の時間軸の幼…
[一言] なかなか往生際が悪い奴だな やってる事矛盾してるんだしそろそろ諦めて付き合えよ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ