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高校時代にタイムリープした僕は、絶縁した幼馴染にただ幸せになって欲しいだけだった。  作者: ミソネタ・ドザえもん
文化祭をやり直す。

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帰宅

 前回の時間軸の文化祭実行委員の仕事の時から振り返って、こうして和気あいあいとした雰囲気で作業を進めるのは初めての気がした。

 周囲も、緊張の中に雑談も適度にあって、雰囲気は悪くはないのだが、一番は、僕の隣に岡田君がいることが大きな変化の要因だった。


「おい、修也」


「ん?」


「お前、さっき手先が不器用だとか言ってたのに……俺より全然作業が早いじゃないか」


「そんなことない。君も早いよ」


 岡田君は、先ほど思ったように真面目で勤勉な男だった。そして、友達想いで口下手で所謂ツンデレで……負けず嫌いな男だった。

 正門作りは、木材を組み合わせたりペンキを塗ったりして正門を作っていく……まあ言ってしまえば読んで字の如くの作業だった。


 そんな作業にて、岡田君は僕より作業が少し遅い。ただ、こんな作業で手先が器用、不器用を判断するだなんて、大層馬鹿な話だと僕は思っていた。


「うっせ。バーカ、バーカ!」


 と言う旨を岡田君に伝えたら、大層ヘソを曲げられた。故に僕は、岡田君が人一倍負けず嫌いな人なのだとそこで理解した。


「ごめんごめん」


「ふんっ」


「ごめんって……」


「作業に集中しろ」


「……ごめん」


 粛々と謝ると、


「そ、そこまで謝るくらいなら、最初からそんな話するなよ」


 岡田君は焦りながら、僕を宥めた。


 実に扱いやすい男である……!


 正直僕は今、手のひらの上で岡田君を転がしながら、彼の行く末を心配していた。彼、将来毒嫁に掴まったりしないだろうか?

 タイムリープを果たして、思えばこうして新たな友達を作ったのは初めてだった。交友関係を広がるこの新鮮な感じが、少しだけ僕の気持ちを明るくしていた。


「岡田君、釘を打つ前に下穴をあけた方がいいよ」


 僕は岡田君の作業を見ながら、そう提案した。


「下穴?」


「そう」


 手にしていたのは、ドリルだった。僕はそれをこれから岡田君が穴をあけようとしていた場所に押し当てて、穴をあけた。


「こんな感じで、釘を打つ前に穴をあけておくんだ。そうした方が、ひび割れにならない」


「ほへー。そうなんだ。知らなんだ」


「じゃあ、これからはした方がいい」


「……でも、下穴あけなくてもひび割れになってないぞ?」


「ひび割れはすぐにならない場合もある。後々、下穴をあけなかったせいで木材にひびが入っていることがわかったら、折角の正門も台無しだ」


「確かに」


 ようし、と言って、岡田君は木材にドリルをあてがった。


「それで、効率を早めたいなら作業は一括でやった方がいい」


「と、言うと?」


「まずは下穴を全部あける。次に釘を打つ。そんな感じで、下穴をあける工程と釘を打つ工程を分けて、一気にやってしまうんだ。そうした方が、トンカチとドリルを持ち返る回数も減る。一回二回の持ち替えなら大した工数にならないけど、それが十、二十と溜まったら、結構な工数になる」


「お前、すげーな」


「そうだろう?」


「うぜえ」


 アハハ、と笑いながら、僕達は和気あいあいな雰囲気で作業を進めた。

 作業は順調に進んでいった。


 冬の空は落ちるのが早い。外も、一気に寒くなってきた。


 暗がりの中でもう少し作業を進めて、今日の仕事はお開きになることになった。鞄を掴んで、僕はまずリーダーの元へと向かった。


「先輩」


「ん? なんだ、徳井」


「これからの作業は、室内で出来ないでしょうか?」


「どうして?」


「外だと暗いし、女子もいる中で寒空の中仕事をさせるのは気が引けません?」


「……おおっ、確かに。明日提案してみるか」


 納得げに頷いて、リーダーはその場を立ち去った。


「……修也、お前さ」


「ん?」


「お前、なんだか手慣れているな」


 岡田君は、神妙な顔つきで僕を見ていた。


「何それ、悪口?」


「まあ……そうなような、違うような」


 釈然としない顔で腕を組んで、まもなく岡田君は気を取り直した。


「まあ、いいや。帰ろうぜ」


「え?」


「え? じゃあねえよ。俺達もう、友達だろ?」


「うん」


「友達ってもんは、一緒に帰りにマックに行くんだよ」


「ほう」


 なるほど。そういう文化も世の中にはあったのか。

 前回の時間軸でも今回の時間軸でも、そういう友達は僕の周りにはいなかった。


 ……ただ。


「ごめん。今日は駄目だ」


「なんで」


「待ち人がいる」


「おみくじテイストに言うな。誰だよ?」


「修也―」


 名前を告げる前に、件の人がやってきた。顔は少し怒っているようだった。スマホを見れば、予定の時間は過ぎていた。


 どさっ


「どさ?」


 背後から聞こえた音に、僕は振り返っていた。


「もうっ、遅いっ!」


「ごめん。ちょっと作業が長引いた」


「それならしょうがない!」


 そうでしょうね。


「……あれ、岡田君じゃん」


 紗枝は、まもなく僕の傍にいる放心した男子に気が付いた。

 ……いや、なんで岡田君は放心しているんだ?


「どういう仲?」


「友達」


「へえ、そうなんだ」


 意外そうに、紗枝が声を上げた。

 それは、僕に少し失礼ではないだろうか。


「ごめん岡田君。そういうわけだから、また明日」


 と言うが、岡田君は未だ放心したままだった。

 このまま放っておいて平気だろうか。まあ平気だろう。岡田君だし。


「岡田君、良い人なんだ」


 学校を出た頃、紗枝に言われた。


「何を根拠に?」


「初対面のあんたが楽しそうに話しているから」


「それが根拠に?」


「いや、結構凄いことだと思うよ? あんたは自覚ないんだろうけど」


 日頃紗枝に僕がどんな風に思われているかが見え透いて、僕は少し顔をひきつらせた。


 ただまあ、彼がフランクで話しやすいことはその通りだと思った。


 そんなことを思った翌日の昼休みだった。


「なあ修也、ちょっといい?」


 僕は、岡田君に呼び出された。

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― 新着の感想 ―
[一言]  おっ紹介してくれって事かな?  主人公はどうぞどうぞ!で幼馴染は多分乗り気にはならなそう。
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