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第11話 少年とダンジョン

 半分死んだ目でぎこちなく歩き、ギルドへ向かうロック少年。薬で怪我は治ったが痛みまでは引かないそうだ。少し離れた位置からダニーと並んでコソコソと付いていく。


 

 おれの提案を最初は笑い飛ばしていたが、追い込まれた状況を突いて説得。それでも渋り、幼児姿のおれの力を信じずに苦笑いで遠慮される。だが葛藤の目を見逃さなかったおれは、その辺の小石を握り粉砕。最後に氣を開放して威圧し、証拠を見せ付けると直立して提案を受け入れてくれた。

 決して秘孔を突いて操ったりなどはしていない。



 物陰からギルドの入口を見張っていると、ロックが出てくる。どうやら無事に依頼を受けてきたようだ。そう、閃いた作戦は、ロック少年に依頼を受けさせて、それをおれが達成、ついでに手に入る魔獣素材を売り払ってもらいお金をゲット!山分けしたらWin-Winだ!


 合流して依頼を確認。なになに…ゴブリンの間引きに、レッドウーズの粘液採取、フォレストボアのお肉うんぬん…あまり金にならなさそうだが仕方ない。少年のランクは5級で一番下、怪しまれぬ依頼数もギリギリのラインだろう。


 ちなみにギルドランクは1~5級まである。更に上は特級で、功績を積むと勲章の★(星)の数で位階が表される。村のギルド情報だ。





 依頼を確認したおれ達はロック少年を先頭に、街を出て街道を進む。やがて石の舗装が途切れたあたりで道を外れ森へと入る。時間もあまりないのでダニーをリュックに、ロックを頭上に抱え上げ、森の奥へと疾走。


 

 悲鳴を上げるロックを無視して少しすると、お馴染みの緑色の気配がするが、知っているものより気配が弱い。そちらへ向かい二人を降ろし、木々の隙間を縫って様子を確認。4匹のゴブリンが屯しているが、おれの知るそれとは違い、なんかヒョロっちい。


「あれゴブリンか?なんかえらく弱そうだぞ。んでどうすんだ?ただやっつけりゃいいのか?」


「はぁ‥はぁ‥ふぅ。うんそうだね…その後、倒した証拠に魔石を取らなきゃいけない。僕が前に出るよ。」


「無理すんな、まだ痛むんだろ?おれに任せとけ」


 魔石?んなモンあったのか?と思いつつ奴等の方へ動き出そうとした直後… !!



「にゃっはー!すきありーにょ!」



 いい感じの木の棒を手にしたバカ猫が飛び出していく。ロックも驚くスピードで迫っていく毛玉。「にゃう!」っと地を蹴り宙を舞い、速度と体重を載せた振り下ろしがゴブリンの脳天に炸裂。 パシーン! という気持ちのいい音が響き、一瞬頭を沈ませ倒れるゴブリン。叩いた棒は真っ二つだ。


 また勝手に! 1匹は死んだか気絶かしたようだが、まだ3匹残っている。奇襲に驚いていたゴブリンが、持ち直してダニーに向かって動き出そうとしている。


「横から来るぞ!気をつけろぉ!」


 コンバットな掛け声と共に慌てて飛び出し、右手で折り畳み式の手槍を展開、左手は鼻をつまんでダニーと3匹の間に割って入る。棍棒や錆びた剣を振り回してくるが、軽くスウェーで躱し サク、サク、サクとそれぞれの胸を一突き。氣を込め体内の気の流れを乱してやった為、すぐに動かなくなった。





「このバカ猫!勝手に動くんじゃない!危ないだろうが!」


 ロックが魔石を取り出している間に、ダニーに説教する。「はい」とか「わかったにゃ」とか言うがこいつ絶対に聞いちゃいない。目を見りゃわかる。実家で飼ってた猫も同じ顔してた。これ以上無駄と判断し、ダニーのチョッキのポケットにミニタマを押し込む。これでここの魔獣程度なら問題無いだろう。


 魔石も取り終わったようなので行動再開。いつもの狩りの調子でぐいぐい行くとすぐに依頼は達成出来た。暴走猫が心配だったが、ロックといいコンビで、ダニーが撹乱しロックが隙を突いて猪を仕留めていた。


 しかしこれだけでは山分けしたら大した金額は残らないだろう。大物を狙おうと更に奥へと歩き出す。



「ねえ?これ以上は危ないよ。ダンジョンの方に近付いてるし…依頼も達成したしもう帰らない?」


「馬鹿野郎、金が要るんだよ! …ってダンジョンだと!?行くぞ!」


 ロックから新情報!異世界に来ておいてダンジョンと来たら行かない理由はあるか?いやない。断じてない。猫の尻尾もピンと立ち、お目々も真っ黒だ。


「ダメだって!魔獣も強いし、そもそも僕のランクじゃ入れないよ。それに攻略中だから人も多いし…」


「ちょっと見るだけだから!ちゃんと守ってやるから!先っちょだけだから!なぁ?!……むっ?静かに…」


「にゃは、ウィルのほうがうるさいにゃ」


 この世でもっとも信用ならない言葉で説得していると、猫の突っ込みが…じゃなくて鬼の気配が。するがやはりゴブリンと同じくこちらも気配が弱い。まあいい、こいつも少しは金になるだろう。気配はこちらに向かってきており、やがておれ達の前に姿を現す。


 ズシン、ズシンという擬音が似合う体格と歩き方で、臭いを嗅ぐような仕草で辺りを見回している。茂みを挟んで鬼を見たロックが泣きそうな顔で囁く。


(やばい…何でこんな所に…オーガだよ…逃げなきゃ…でもこの距離じゃもう…)


 鬼はオーガと言うらしい。そのまんまか。


「そうビビりなさんな。慣れてっから。あれも換金出来るだろ?」


 

 おれの声に気付いた鬼がこちらに振り向き、「グルァア!!」とよだれを散らし威嚇する。だが威嚇は効かなきゃただの隙。その隙に素早く近づき、鬼の膝に正面から前蹴り。関節が逆に折れ、地面に崩れる前に手槍で喉に風穴を空ける。


「ね?簡単でしょう?…で、こいつはどこが金になるんだ?」


「…!?す、すごいね…先輩達も手こずってた魔獣なんだけど……オーガは魔石と角を持っていけばいいよ。でも僕が持ち込んでも、どうやって倒したんだと怪しまれるよ…?」


「死んでるのを見つけたとかいっておけ。倒してなくても魔石とかは売れるだろ?」


「そりゃ売れるけど…はぁ…もういいや、ここまできたんだ、なんとかやってみるよ。」


 開き直ったロック少年がやる気をみせる。いい傾向だ。


 乗るしかないビッグウェーブに乗り、そのままダンジョン方面へ案内させる。しばらく進むと森が開け、大きな湖が現れ、その対岸には数軒の建物が見えた。




「あれはダンジョン攻略の為の中継所だよ。あそこからもう少し行った所にあるよ。」


 建物周辺は人の気配が多く、あまり人に見られたくないおれ達はその場に留まる。


「領都から近い位置だけど、半年ぐらい前に新たに発見されたんだ。元は大昔の石窟の遺跡だったんだけど、新しい通路が発掘されてそれがダンジョンに繋がっててね…魔獣や深さの傾向からアーティファクトがあるんじゃないかと言われてるんだ。」


「アーティファクト?言葉は知ってるがなんじゃそら?」


「ダンジョン…昔の昔、古代の遺跡から見つかる魔道具なんだ。見つけたら建国するのも夢じゃないって話だよ、僕も詳しい事は知らないけどね。 ダンジョンが発見された時期に魔人も襲撃してきたから、あるって考えが優勢なんだ。」

 



 ロックの観光ツアーガイドを聞いていると、覚えのあるワードが出てくる。そういや爺さんの情報も集めなきゃと思っていると、後ろでミニタマを転がしていたダニーが、クイックイッと袖を引っ張る。


「ミニタマがブルってるにゃよ。ジェフにゃ」


 ダニーからミニタマを受け取る。


「ジェフか?どうした?」


『ウィル様、今どちらに?!あ、失礼。ミニタマを通して気になるエネルギー信号を検知しました。それが破損したデータの一部と一致します。今居られる場所の地中深くから発生しているようです。』

 

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