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異世界おじさんバスケ  作者: バスケおじさん
3/3

1003.エルフのダンクシュートは止められない

 開始早々、俺からぺったんへのパスがカットされ、攻守が切り替わる。


 予想通り背の高いエルフは全く動かない。ドワーフの片方がボールをハーフコートまで運び、山なりのパスをエルフに通す。


 エルフはそのパスをやる気のないようにも見える、ゆっくりとした動きで手を伸ばし、わざわざ一度ドリブルして持ち直してから、ジャンプする。


 そして、スローモーションのようなダンクシュートを決めた。


 ダンクシュートを止めるには、顎髭もぺったんも身長が足りない。そもそもバスケはシュートモーションに入ったら手から離れるまでボールに触ってはいけない。例外もあるが大体はファールを取られてフリースローになるのがオチだ。


 エルフがそこにいる時点で詰んでいるんだ。


 スクリーンをかけていないところをみると、顎髭もぺったんも諦めちゃっているのかもしれない。


 そうなると、あのエルフのマッチアップ相手は俺ということになる。


 俺の身長は高々、百七十三センチ。二メートルを超す相手と高さで競いあってもまず勝てない。ダンクを止めるには最低でもゴールリングより上に手が出なければならないが、俺は最盛期でもリングに手が届いたことはなかった。


 垂直飛びで七十センチ以上は飛べたはずだが、それでは足りないのだ。


 さて、背の低い俺が背の高い奴に対抗するにはどうするか?


 バスケのゴール下は如何に良いポジションを取るかが勝負だ。背が高くても良いポジションを取れなければボールを取ることはできない。


 良いポジションを取る。その答えがスクリーンなのである。


 エルフをスクリーンで弾いて、良いポジションを確保。ぺったんがシュートして外れたボールを取り、シュートする。これが俺が考えているシナリオである。


 それにはまずぺったんにシュートして貰う必要がある。


 俺は軽くフェイントをかけてぺったんにパスをした。


 相手はまともにディフェンスする気はないらしく、ぺったんはノーマークだ。


「シュート!」


「え? 入らないよ」


「いいから打て」


「外れても知らないからな!」


 ぺったんは戸惑いながらもシュートを打つ。その瞬間に俺はゴールとエルフの間に入って、エルフを背中で押さえた。


 軽く衝突するが、そんなことは気にしない。思った通りエルフはそこまで力があるわけではなく、俺でも簡単に押さえられた。


 ぺったんの打ったシュートはリングに弾かれ、少しバウンドしたが、俺の前に落ちる。もちろん、エルフの手は届かない。


 そして、俺は悠々とジャンプシュートを決めた。


 呆然とするエルフとドワーフたち。


「ナイスシュート!」


「なるほどねー」


 ぺったんはワンプレーだけで俺が何をしたか理解したようだった。


「偶然だろ……」


 エルフに焦りは見えない。あのプレーは偶然だと思っているようだ。


 まあ、何回か続けば偶然ではないことに気がつくだろう。ダンクを決めている割に、なんかちょっとみんな素人臭いが、異世界でバスケを出来るのだから文句はない。


「さあ、一本取ろう!」


 そういうと俺はボールを運んでいたドワーフに近づいてプレスをかける。ボールを簡単にはパスさせない。


「くそ。邪魔するな!」


 俺が執拗にパスを邪魔していると、このドワーフは焦りを感じているようだ。エルフもエルフで、ゴール下から動いていないらしく、目の前のドワーフも射線を通せず困っている。


 あれ……。もしかして、こいつらってレベル低いのか?


 さっきスクリーンをした時も思ったが、ボールを持っていないときの動きが悪すぎる。バスケは常に動き続けるスポーツなのだが、エルフもドワーフも動かなすぎだ。


 バスケが普及したばかりでテクニックについて研究が進んでいないのかもしれない。人間の俺と比べたらドワーフは筋力や瞬発力で、エルフは高さと腕のリーチで、バスケで有利な特徴を持っている。


 俺がいた世界からバスケを持ち込んだと考えると、人間用のテクニックはエルフやドワーフにあっておらず、廃れてしまったのかもしれない。


「あ!」


 焦ったドワーフが無理なパスをしようとして、ボールを後ろに振ったところで体を入れてボールを叩いた。


 マイボールだ。


 ボールを高く上げて敵から取られないようにすると、改めてゴールに向き合う。


 相変わらずエルフはゴールしたから動かない。


 敵のドワーフはぺったんと顎髭をマークしている。


 まあ、身長で考えたら、それが正解だろう。


 ゆっくりとドリブルを始める。


 腰を落とし、左手でガードを作り、背中に近いところでボールをつく。


 これが、基本的なドリブルだ。


 敵の目の前でボールをつくバカはいない。こうやってガードしながら近づいていけば容易にボールを盗られることはない。


「け! 変なドリブルしやがって」


「そうなのか? これが基本だと思っていたけど」


 言い終わるか終わらないか、俺はボールを低い位置を保ちつつ後ろ向きに回転する。


 いわゆるロールターンだ。


 敵のいないところでやっても、あまり意味はないのだが、ノリである。


 で、ここからが俺のやりたかったことだが、ロールターンでゴール左にいる顎髭に突っ込む。


 エルフもそれに釣られて左よりにポジションをずらした。


 それを確認した俺は超低空のフロントチェンジでエルフの背後にボールを運び、背中でエルフをブロックする形にした。


 すぐにボールを持ち、ジャンプシュートを打つ。


 これで四点と思ったときだった。


 急に空が暗くなる。


 雲が出たのか?


 ――バン!


 俺の打ったシュートは後ろから伸びてきた長い腕に弾かれた。


 後ろからシュートブロックされたのだ。通常、相手の前面にいるとき、シュートの打点より手を高く伸ばすことは容易だ。しかし、背後からシュートの打点をブロックするには相当な高さとリーチが必要になる。


「マジかよ……」


「素早いが、それだけじゃねーか」


 エルフは自信に溢れていた。おそらく、自分のほうがうまいと思っているのだろう。


 もしかしたら、うまいかもしれないが、ここまでのプレーで初心者もいいところというのが俺の感想だ。ドワーフらしいプレーやエルフらしいプレーはまだ見ていない。


 ボールは敵に渡った。


 すぐに山なりのボールがエルフに渡り、シュートを決められる。


「バスケは高さが全てだ。少しぐらい素早くても高さには勝てん」


 などと曰わっている。


「うーむ。確かに高さやパワーはあったほうがいい。でもな、俺の世界では160cmでもNBAのスタープレーヤーになった人間がいるんだよ」


 言わずとしれた、そのスタープレーヤーは巨人の中でプレーし、そして、そのすべてをかわしてシュートを決めてきた。


「その人にはかなわないとしても、お前ごときなら、俺で十分勝てるレベルだよ」


 挑発合戦。とても楽しい。


 俺はボールをぺったんに預けるとフリースローエリアにポジションを取った。



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