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異世界おじさんバスケ  作者: バスケおじさん
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1002.ぺったんの名前はなんでしょうか

 俺を見つけたドワーフの女の子はブリュンヒルデと名乗った。俺の世代でギリギリ意味が通用する言葉でいうとトランジスタグラマーという体系だ。端的に言えば、身長は小さいが胸が大きい女の子だ。


 胸以外に特徴がないわけではないのだが、とにかく目が行ってしまう。


 あの後、俺はブリュンヒルデとともに彼女が住んでいるという村に来ていた。


 ブリュンヒルデは洗濯屋らしい。出会った時も背中に大きな洗濯籠を背負っていて、川で洗ったという洗濯物を持ち帰る途中だった。


 助けたお礼に手伝えないかと思って、籠を持たせてもらったが全く持ち上がらなかった。おじさんの筋力では持ち上がらないのかと思ったが、腕の筋肉を見る限り俺の肉体は若返っているっぽい。


 転生しているのなら容姿も変わっている可能性もあるが、視線の位置から考えると、元の世界の身長とさほど変わらないと思う。着ている服は転生前と変わらないので、転移なんではないかと思うが、バスケットボールがぶつかって転移とは考えにくい。


 以前は髪の毛も白髪交じりだったのが、今は白髪が一本もなくなっている。


 異世界に来るときに神様にあって特殊な能力をもらうのが定番だと思うのだが、そういうのはなしに単に若返っただけっぽい。


「お腹すきましたよね?」


 ブリュンヒルデの家のダイニングに通された。彼女の言う通り確かにお腹はすいている。しかし、それよりも気になることがあった。


「ここに来る時にバスケやっている人たちがいたけど……」


 村の中心にある広場は突き固められたバスケコートがあり、ドワーフやエルフがバスケらしきスポーツをしていたのだ。


 雰囲気は険悪でこう言ってはナンだが、ガラの悪い連中のようだった。


「もう少しで村のバスケ大会があるんで、みんな練習しているんですよ」


「へぇ。それって俺も参加できる?」


 異世界のバスケ。


 ものすごい興味ある。


「もちろんです。でも、スリー・オン・スリーなのでチームメイトがあとふたり必要になりますよ」


「あー、でも、なんとかなると思います」


 一緒に遊んで仲良くなってチームを組む。そういうのはストリートバスケではごく普通だ。異世界でも日本の常識が通じるかわからんけど。


「ふふふ。ご飯の準備をしておきますので、出来る(・・・)まで遊んできていいですよ」


「ありがとうございます」


 礼節を重んじれば、お世話してくださる人が働いているときに俺だけ遊びに行くというのはよくないと思うが、とにかく異世界でバスケという状況が冷静な判断力を奪っていた。





★☆★☆★





「ボール寄越せ!」


 広場ではエルフが一人混じっており、あとの五人はドワーフだった。


 エルフの身長は優に二メートルを超えており、ボールが渡ると簡単にダンクを決めていた。ディフェンス側のドワーフチームはまったく相手になっていないようだった。


 ビィーーーー!


 ブザーが鳴り、試合が終了したようだ。


 俺はドワーフ三人のチームに近寄る。


「俺も入れてくれませんか?」


 自己紹介でもしようと思ったが、ここはストリートバスケっぽく「バスケさせろ」と要求してみた。


「オレはこれから仕事に戻るから代わりに入っていいぞ」


 ものすごい腕の太いドワーフが気さくに許可を出す。腕が丸太のように太いので「丸太」と名づける。


「お前、人間か? 珍しいな」


「バスケ、うまいのか?」


 これから仮のチームになるドワーフ二人が俺に質問してきた。


 ひとりは足の筋肉のひとつであるハムストリングがものすごい太い。顎髭が特徴なので心の中で「顎髭」と名づける。名前を聞いてもいいのだが、覚えてられる自信もないし、自己紹介もしていないので聞きにくい。


 もう一人はドワーフにしては細身でブリュンヒルデと同じぐらいの体格だった。ブリュンヒルデと比べるのもかわいそうなぐらい胸がないので、ちょっと自信はないが女の子のようだ。心の中で「ぺったん」と名づける


「昔、少しかじった程度ですが、バスケはそこそこできます」


「じゃあ、ポイントガードをお願い」


 ぺったんがポイントガードじゃなかったのか。


 ポイントガードとは攻撃の起点になるポジションで、チームの司令塔のような役割を持っている。先ほどの丸太ドワーフはチームの中心的な人物っぽかったので、丸太のポジションなのだろう。


 俺の身長は百七十センチちょい。ジャンプ力は普通の人よりあるので主にフォワードをしていたが、ポイントガードもできないこともない。


「いいよ。一応、ぺったんと顎鬚のポジションも教えてもらってもいい? あ」


 つい脳内あだ名で呼んでしまった。顎鬚はまだしもぺったんは失礼な気がする。


「わっはっは! ぺったんとはいい名前だな」


「クソ」


 ぺったんが俺を睨んでくる。


「ご、ごめん」


「まあ、ぺったんでいいや。ポジションはスモールフォワード。顎鬚はセンター」


 スモールフォワードはミドルレンジからロングレンジでプレーするフォワードで、同じフォワードという名前でもパワーフォワードと比べると接触プレーは少ない。


 センターはゴール下に陣取りフォワードがシュートし入らなかったリバウンドボールを取ったり、ゴールに一番近い場所からシュートしたりするポジションだ。


「わかった。ぺったんはスリーポイントシュートはどれぐらいの確率で入る?」


 相手は二メートル越えのエルフ相手なのでゴール下は絶望的だろう。外からロングシュートを打っていくしかない。


 スリーポイントシュートは得意ではないが、俺も打てばそれなりに戦える気がするのだが……。


「え、そんなもん入らんぞ」


 ぺったんの答え。


「お前、スモールフォワードだろ!」


「だって、なぁ?」


 ぺったんが困ったように顎鬚を見る。顎鬚も頷いている。


「バスケの基本はゴール近くにボールを運んで、確率の高いシュートを打つ。それが基本じゃな」


 顎鬚のいうことは全く間違っていない。その通りなのだが、そんなことをしたら、あの背の高いエルフにシュートをガードされてしまうのは目に目ているだろう。


「まあ、なんとかなるか」


 なんとかならなくてもストリートバスケだ。負けて失うものは少ない。


「おい。早くしろ!」


 エルフがイライラしながらボールを投げてきた。


 俺はそのボールを受け取ると、ゴールを向く。


「おう。やろうか」


 こうして俺の初異世界バスケが始まったのである。




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