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わたしとけものたちのはなし  作者: 山羊之味噌汁
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勿忘草

『ねぇリーシャ。リーシャはこの花の色よね』

『そうねェ。綺麗でしょう?あとねェアンタいい加減覚えなさいな。その花は“キキョウ”っていう花よォ……』

『何よ…そんなにうんざりした感じで……』

『あのねェ!?この下り、アンタと組んでから何百回やったと思ってるのよ!?はァ……。ま、アタシ…アンタのその“今にも死にそうな奴の目色”だけは気に入ってるけどねェ』

『ちょっ…と!?ひどい事言わないでよ。あと分かりづらいんだけど、それ』

『えェ~~、注文の多い子ねェ…。アンタみたいに花で例えるなら、そうねェ……』

 

『──────って、トコかしらね』

 

 ね、聞いてくれる?


 私はエリスのように空も飛べないし、貴女のように早く駆けることもできなければ耳も鼻も利かないの。笑っちゃうでしょ。

 頭だってそんなに良くないし、どちらかというと話すのも苦手なの。


 でも、勘違いしないでよ。最初からこうって訳じゃなかったんだから。

 いつからかな…。やっぱり最初に組んだ優しいヒトが死んじゃってからかな…。

 私、もう他人のこと知りたくないって思ったんだ。

 死んじゃったら悲しいのも、苦しいのも、知らなければ全部無いでしょ。

 あのヒトは何が好きで、どんなヒトが好きで、どこに住んでて、そこに誰が待ってただなんて…知らなければ良かったから。


 そうしたらね、いつからか頭はいつも靄がかかってるみたいにぼんやりとして、他の物事にまるで関心が無くなったの。

 …笑わないでよね。それでずっと順調だったんだよ?

 どんなに銃弾が飛び交っていようが、血塗れで生臭かろうが、周りのみんなが死のうが…私はとっても平穏に過ごせてたの。…なんて、信じてくれないかもしれないけどね。


 ……でも。それも、さ。リーシャ、貴女に会うまでの話だよ。

 私はね、今がすっごく楽しいんだ。沢山殺しておいて楽しいだなんて、可笑しいって思うだろうけど!

 それに心の平穏は無くなっちゃったし、貴女を失うのがとっても怖いって気持ちもあるの。私が死ぬことも…ちょっとだけ、怖くなっちゃったし。


 だから……リーシャ、私と約束してよ。



 私を…。こんな未熟なヒトを、×××××××××?






 ───夢を、見ていた。

 酷く陰鬱で、懐かしくて……そして私の心が引き裂かれそうな程に悲愴な夢を。


 意識が覚醒しても、金縛りにあったかのように私の目は開かなかった。

 未だ暗いままの視界は、日光のあの特有の眩しさを感じることも全く無い。よってまだ日は昇っていないのだろうと察せられた。

 このままいっそ二度寝しようかとも思ったが、体に伝う汗のせいでなんとも気分が悪い。それにもう一度先程の夢を見てしまいそうで、私は仕方なしに──まるで子猫が初めて目を開くかのように──ゆっくりと、しかし渾身の力を入れて目を開いた。

 どこかハッキリとしない己の視界に映るのは燃え尽きて灰しか残っていない焚き火のみで、やはり太陽は未だ顔を出していない。遠くの方で微かに鳥の鳴き声がすることから、夜明け自体は近いのだろう。

(…そういえば私、野宿していたんだっけ)

 未だはっきりとしない脳を起こすように頭を軽く左右に振ると、幾分か思考がクリアになった気がした。

 のたりのたりと立ち上がり、体の節々に走る痛みに溜め息をつきながら思いっきり伸びをする。およそ人体から発するべきではないような音がしたが、気のせいだろう。

 現実逃避の為か脳は比較的働き出した。


 そうだ!私は何時ものように依頼されて人を殺したのだ。そして帰路に就き、日が暮れた為道中のこの森で野宿をしたのだ。

 依頼人の()()()()()()()()懐の大きい男がいる街へは、ここからまだ2日ほど歩かねばならない。報酬はたんまりと貰う契約ではあるが、やはり疲れるものは疲れる。人である以上仕方のない事だろう。

 報酬は2割増しにして貰おう。

 そう心に決めて肩甲骨を開くように肩を動かせば、寝ている間に凝り固まったのであろう体はゴキリと応えた。


「それじゃあ、と…」


 寝起きの為かさついた声で一人呟き、手荷物を漁って適当な布で汗を拭く。思わず溜め息がまた漏れるが、仕方のない事だと理解はしていた。

 近くに水辺が、等という都合の良い事も無い。となると、この私の片手に収まる水筒…正しくは、その水筒の中の水が私の信仰するべき神であり、父であり、母である。

 御神体を軽く揺らせば、ちゃぷちゃぷと神の声が聞こえる。曰く、『地面と接吻したくなければその布切れで我慢しなさい』である。

 街へ行けば清潔なベッドとシャワーが私を待っていて、さらに新鮮な野菜と肉が食べられるのだと自分に言い聞かせて今は我慢する。


 手早く荷物をまとめると、私は街の方向に駆け出した。また汗をかくかも知れないが、一刻も早く私は街へ戻りたかった。

 それが汗を落としたいからか、それとも違う何かの為かは分からなかった。

 ふと空に目をやれば、もうすぐ朝日が拝めるのだろう。緩やかに白み始めていた。

 まだ眩しくは無いはずなのに、私は思わず顔を顰めた。


 私は──今日も、生きたのだ。



昔見た夢を小説にしようと思っただけのもの。(文才なんて)ないです。

お察しの通りモブは大量に死ぬしそもそも大体死ぬ。主人公の生死は夢では特に決まってなかったのでどうするかまだ悩みどころさん。

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