ガースキの夢7
その生物は怒っていた。
せっかく、ここ100年程度、フーシ山に入ってくる人間はなく
ゆっくりと過ごしていたのに、今再び、忌々しい人間が、俺の縄張りに
侵入してきたことについて。
そして、数十人で、一人の男をなぶり殺しにしているような
卑劣な人間の所業について。
金色の爪をもつその生物は、
ウオオオ!!
という叫び声をあげるとともに、生き残りである人間のうち
元気であった人間を頭から真っ二つに爪で切り裂いた。
その生き物は、
さてと、もう最後に生き残っているこいつはどうしようか。
と思い、右ひざから下を失い、更に先ほど殺した連中から
弓矢でハリネズミのようになりながらも、なおも生きている人間を
一瞥したあと、
こいつは、放っておいても死ぬだろう。
このままだと、苦しいだろうから
さっさと殺してやろうか
そう思い、生き残りの人間に襲い掛かろうとした。
その瞬間、生き残りの男の後ろから、一人の少年が飛び出し、
男をかばうように生き物の前に立ちふさがった。
少年は、
爺、すまないやはり爺を残しては逃げれない。
俺は、腐っても王子だ!!
王家の人間たるもの、家臣を見捨てて逃げれるのか!!
さあ、化け物、俺が相手だ
かかってこい!!
と言い、懐からナイフを取り、爺をかばう様に猿のような生物の前に立ちはだかった。
爺は、
この馬鹿者!!何たる馬鹿者!!
あなたが、生き残らなければ、この国は亡びる!!
そんなこともわからんか、馬鹿者が!!
しかし、
しかし、この爺、一人の人間として、こんなにうれしいことはない。
リュート様目の前の化け物は、
多分ですが、この山の主
金色の爪 サール
数百年前、突如帝都に現れ、冒険者たちを惨殺したといわれる
凶暴な魔物!!
相手にとって不足なし
冥途の土産にこいつの爪でも奪い、
あの世の皆に自慢してやりましょう!!
と答えた。
その時、その生物
金色の爪 サール
は、少年の持つナイフを見つめ、臨戦態勢を解き放ち、
少し距離を取り、考えたのち
人の言葉で、少年らに話しかけた。
サールは、リュートに
人の子よ!!
何故、この山に入ってきた。
なぜ、そのナイフを持っている。
返答次第では、そこの死にぞこないともども殺す!!
と話しかけた。
リュートは驚いて
人の言葉がわかるのですか。
あなたが支配するこの山に無断で入ったことは謝ります。
先ほど、あなたが殺した奴らに追われ、やむを得ず立ち入りました。
このナイフは、我が王家の先祖が、
数百年前にオークションで手に入れたものと聞いています。
私が成人するときに父が、私に下さったものなのです。
フーシ山の主
金色の爪 サールよ!!
どうか我ら二人をお許しください
と返答した。
サールは、
なるほど、お前らの事情はわかった。
許す、許さないを決める前に、少しそのナイフを見せてくれないか
と言うと、リュートは少し考えたのち
わかりました。
ここであなたの機嫌を損ねても、仕方がないですしね
どうぞ、思う存分見てください
とサールに近づいた。
ジーンは、
リュート様!!
こやつに近づいては危険ですじゃ!!
と叫んだが、リュートは気にせずに、サールに近づき、ナイフを手渡した。