表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マードック魔道具店  作者: イカ十郎
31/44

ガースキの夢1

 ここは、チョーエイド。


 とある世界に存在する、とある街である。


 この街には、古くからこんな噂話があるそうな。


  ♪夢や希望はどこにある♪


  ♪貴方の願いが通じれば、♪


  ♪きっと見つかる不思議なお店♪


  ♪望みを叶えるマードックのお店♪


  ♪マードックに会えたなら♪


  ♪きっと望みが叶います♪


  ♪……は、……ぶ♪


最後の部分は、忘却の彼方に消えているそうな!!


この噂、信じるか信じないかは貴方次第!!


 俺は、カージ・ガスーキというしがない50歳を過ぎた男さ。


 ここチョーエイドの片隅にある鍛冶屋で、


生まれ育ち、日用品などを主に生産している。


 剣に防具だ?


 そんなもの、とっくの昔に打つのはやめたさ。


 うちみたいな、小規模の鍛冶屋に注文にくる


客なんていないさ。


 今の時代、普通の者は、表通りの大手の


ワールインダー商会に陳列されている、


見栄えばかり良い数打ちを好みやがる。


 あとは、物好きか高名な冒険者が、名工と呼ばれるような


鍛冶屋に武器の注文をするくらいなもんさ。


 俺はというと、名工でもなく、世に名の知れた


鍛冶屋でもない、ただの鍛冶屋のおやじだ。


 でもな、こんな俺でも、自分の作ったものには


責任と自信を持っている。


 いつものように店番をしていると、若い冒険者がやってきた。


 おっさん、解体用のナイフってあるかい。


俺は、若造を一瞥すると、


 うちは、生活用品店だよ


 ナイフなんてないよ


 代わりと言っちゃなんだけど、包丁はどうだい?


 ほら、あんた、この包丁見てみろよ。


 どうだい、この輝き、この硬度


 これならメンテナンスを怠らなければ


 一生ものになるはずさ!!


 これ金貨10枚でどうだ!!


 え、包丁にそんなに払えるかって、


 そうかいそうか、じゃあ帰んな!!


すると若造は、

 

 けっ!!こんな店に度と来るか!!


と叫んで、立ち去っていた。


 俺は、店の奥に向かい


 おい、サール!!


 けったくそわるい!!


 店前に聖水でも巻いておいてくれ!!


と、店の奥から一匹の赤い色の毛立ちのサルが出てきて


店前に水を巻いた。


 こいつは、俺の相棒のサールって言って、よくわからん種類の猿だ。


 実は、十数年前、ある山に鉄鉱石などの鉱石を採取に行ったところ、


偶然、こいつと出会ったんだ。


 こいつは、当時子猿で、ひどく弱った状態で、


両親の猿と思われる、見るも無残な2匹の死骸の傍で、


 キーキー!!


と鳴いていたのさ。


 俺も、元孤児の天涯孤独の独り身、なんとなく気になって、


その付近にしばらく野営をし、この子猿の様子を見てたんだ。


 子猿のこいつは、両親の死骸からひと時も離れず、


飯も食わずに4・5日ずっと、傍で鳴いていた。


 俺は、物も言わずに、じっとその様子を見ながら、


そっと水や食料を置いてやって、様子を見ていた。


 子猿は、それに気が付き、なんとかそれを食べ、


その後も両親の猿の傍を離れようとしなかった。


 子猿を見つけて一週間がたったころ、俺が寝ていたところへ


こいつが来て、俺の顔を舐めてきた。


 俺は、子猿がほっておけなくなってね、子猿がわかるはずがないのに


  おい、お前俺と一緒にくるか


と声を掛けたところ、子猿は、


 キーキー


と鳴いた。


 俺は驚いて、


 お前、俺の言葉がわかるのか


と聞くと、子猿は


 キー


と頷いた。


 俺は、驚いたが、たまに魔物の中に人間の言葉を理解する奴もいると


以前冒険者が言っていたのを思い出し、


 よし、今日からお前はサールだ!!


 俺は、カージ・ガス―キだ!!


 これからよろしくな!!


と言い、子猿を抱きかかえ自宅に戻った。


 それから、こいつはずっと俺と一緒に鍛冶をやりながら暮らし、


今に至るってわけさ。


 俺は、サールに向かい


  おい、サール今日は、もう店じまいにするぜ


  ゴホゴホ


  悪いが、戸締りを頼む


  俺は、ちょっと酒でも買ってくる


と咳き込みながら、言い街に向かった。


 俺は、店を出て、路地を曲がったところ、更に


 ゴホゴホ!!


 ゲボッ!!


と咳き込み、血を吐き出した。


 俺は、道の端に座り込み


 ちくしょう、最近体調がすぐれね!!


 もう長くはないのかもな!! 


 サールの奴にこんな姿見られない!!


 俺が死んだらあいつはまた一人になってしまう。


 あいつに何かを残してやりたい


と思いながら、再び繁華街の方へ歩き出したところ、


辺り一面が白い霧に包まれていることに気が付いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ