なにやら改憲と騒がしいが
また改憲騒ぎをやっている様だけど、何とも中身がない。
自衛隊を明記したら何か変わるのかな?
過剰な改憲への期待を持った賛同が様々な感想欄に見られるが、なぜ、そこまで現実逃避出来るのか不思議でならない。
少し考えれば分かりそうなものだ。
総理は何と言ってる?
「改憲しても何も変わりません」
だよ。じゃあ、何のために改憲するのか分からない。
一方で具体的な不備や欠陥はあまり口にしない。
改憲がなったとして、今ある自衛隊法の不備や欠陥が解消されるのかと言えば、NO。何も変わらない。
総理はそう言ってるのだから。
何も変わらない改憲を行うなら、今国会で自衛隊法の不備や欠陥を改善、是正する改正案を出しても良いのではないか?
自衛隊には僚艦防護の規定すら無いそうだが、その規定一つでソマリアやアラビア海への護衛艦派遣は大きく変わる。
更に突き詰めれば、護衛艦が国際法の軍艦の権利を行使出来る様になれば、調査研究や警察活動等と言わなくとも、警備や臨検の権利を持つ事になる。
そんな改正案が出ないのはなぜなのだろうか?
憲法9条を理由にするが、実際には、政治がそうした実務に理解、関心がないから放置されているのではないのか。
更に、昨今はドローンも話題になっているが、これも誤解が大きな問題になる。
量販店で販売される小型ドローンと、軍用や産業用の大型ドローンでは、まるで別物だが、その事をあえて混同させる報道や論説すら氾濫している。
スマホやプロポなどで目視操縦する簡易なドローンならば、容易に妨害可能なのだが、本格的な無人飛行機はそんな簡単に妨害出来るものではない。
GPSデータや衛星通信に介入する特別な装置が必要で、簡単に入手出来ない。
扱う場合の法令にも規制が大きい。
ロシアはモスクワに軍の妨害装置を持ち込み、GPS信号に介入してクレムリンなどの近辺を飛行出来ないようにしている。
最近はドローン対策がいくつかニュースにもなっているが、尖閣諸島で海保が中国のドローンを妨害する話には懐疑的だ。
警察用として存在するドローン対策では軍用の高度な無人機までは排除出来ない。
では、巡視船に軍用の電波妨害装置を積むのか?
それも法令上難しいだろう。積んでも起動させられないのだから。
小規模なテロ対策としてのドローン問題ならば、現状の法令で出来るのかもしれない。しかし、軍用や産業用の大型無人機を対象とするには無理がある。
現在の領空侵犯規定では、退去勧告か強制着陸しか明記がなく、撃墜は市街地や基地への危険が差し迫った場合に限られるが、これは有人機前提の規定だからに過ぎない。
国際法でも領空侵犯した軍用機の撃墜は認められており、撃墜規定の明記は国内問題しか残されていない。
無人機への対策を行うならば、当然、許可なく領空を飛行する機体の撃墜を考慮すべきだろう。無人島や海上だからと言って見過ごして良い話ではない。
しかし、まるでドローンとは市販される警察で対策可能な小型ドローンしか存在しないかのように議論され、現実から逃避しているようにしか見えない。
現在の日本で自衛隊、自衛官の地位など、ごく一部の化石人間を除けば誰も疑うものは居ない。
違憲だとか自衛官の地位だとか言う抽象的な理由が改憲に利用される事がなぜ、まかり通るのだろうか?
不思議であると同時に脅威と言うしかない。
1991年の湾岸派遣以来、「まあ、こんなもんか」で関心なく過ごした延長なのだろうが、その意味を理由してはどうだろうか?
これを足掛かり等と期待する向きもあるが、そんなものは簡単に潰えるだろう。
総理は先に挙げたような自衛隊法の不備や欠陥には関心がない。
さらに、自衛隊法改正の話を出す政権が現れた場合、改憲などなかったかのように既存条文、解釈による不毛な神学論争が繰り返される。
その時に「では、改憲だ」という勢いや意欲を持てるのだろうか?さらに、何十年も浪費し、無意味な神学論争による不備や欠陥の放置が続く様にしか思えないが。
それらの原因は実に明らかだが、日本では理解されていない。
意図してなのか、バイアスなのか、「軍の暴走」を語る際に、その前提となる制度の説明をしない。
文民統制という言葉だけが一人歩きをしているだけ。
中身は殆ど知らずに、勝手な解釈で叫ぶばかりだから、議論が進まない。
文民統制は政治による軍の統制と、説明されるが、中身は?
身勝手に暴走する軍を縛るモノだだと言うのが日本では一般化していれが、実際には逆。
軍は政治の命令なしには何も出来ない。
あり得ないが、仮にスピード違反の取り締まりをするとしよう。
警察ならば、法令にしたがって、速度超過を取り締まればよいが、軍の場合だと、事前の調査でどの様な速度超過があるかを調べ、具体的な項目を作らないといけない。
「この道は10~50キロほどの速度超過が見られる」と報告した場合、軍に下る命令は、「10~50キロの速度超過を取り締まれ」となる。
当然だが、51キロ以上の速度超過は取り締まり出来ない。
「ネガティブリストにしたら自由だ!」と言ってる人達も、この事を知らない。
軍隊はシビリアン・コントロールによって、法令ではなく政治の決定によって動くので、この様な事になる。
何故か?
軍隊の行動は司法や刑法などの枠外にあるから、政治が行動の許可をしなければ行動の根拠が発生しない事による。
軍隊の行動は政治決定がその根拠になるが、警察は法令を基に動く。
この二つはまるで別物。
ネガティブリストとは、政治の決定の下で、守るべき法令や制限を定めたもの。警察の様に法令を理由に組織が自由意思で行動するわけではない。
ここのところが誤解されている。
戦前がどの様な体制、制度であったかも何故か勘案されていない。
戦前はシビリアン・コントロールは存在したのか?
曲がりなりにも政治に決定権があったのは、統制権干犯以前の話になる。
誰が、シビリアン・コントロールを崩したのか?
そこに言及する識者は少なく、護憲には皆無ではないのか?
戦前は政治が自らシビリアン・コントロールを放棄した。
この事実から逃げて議論など出来ないではないか。
今はどうだろうか。
憲法に責任を押し付けて逃げてはいないか?
軍事行動の決定権は政治にあり、責任も政治が負わなくてはならない。
今、それが出来ていないのに、改憲による自衛隊明記で、政治が責任を負うのか?
今出来ていないのに、出来るわけ無いじゃないか。
まずは、今できる自衛隊法の改善、是正を行い、自衛隊の行動決定と結果の責任を政治がすべて負う。その体制が出来てからでなければ、改憲論議は始められない。