03_食後の会話
朝食を食べ終わったあと、ミッシェルとシャオがいろいろな質問をしてきた。私が本当にソフィアでないことを確認するためだ。質問の内容は、好物、訪れた街、そこで出会った人の名前、故郷、両親の名前などである。二人はまだソフィアがふざけているだけではないかと疑っているようだったが、質問をしていくにつれて、二人の表情が曇っていった。そして、二人は真面目な顔で考察を始めた。
「なぁ、お前がソフィアでないとするならよぅ、お前ってだれなんだ」シャオが首を傾げながら言う。
「私は、彩音と言います」
「アヤネ? そうか、それではアヤネ、お前はどこからきたんだ」
「東京のホテルです」
「トウキョウってなんだ、聞いたことがないぞ、で、そこでお前はなにをしてたんだ」
「就職活動です……」
「就職活動? なんでそんなことをする必要があるのだ?」
「生きていくためです、平凡に暮らしていくためです」
「ふーん、それで? うまくいったのか?」
「いいえ、ことごとく敗れてしまって、もうお先真っ暗です。グシュン……」
シャオが困ったような顔で俯いている私に「よしよし」と頭を撫でてきて言った。
「あー、すまん、すまん」
「シャオ、これは本当にソフィアではないな」ミッシェルがシャオに言った。
「あぁ、そうだな、ソフィア様は頼りにはならなかったけど、こんな泣き虫じゃない」
「これは何かの呪いか? どう思う?」
「だとしても、こんな症状、見たことがない、人格が変わってしまうなんて……おい、アヤネ、頼むからソフィア様の恰好でメソメソしないでくれ、なんだか変な感じた。見知らぬ土地にいきなり連れてこられて、さぞかし不安だろうが、原因が分からない以上、どうすることもできんのだよ、とりあえず、この城を出て外の空気でもすうとしよう、そうすれば、きっと少しは落ち着くだろうよ」
私はうなずいてシャオの顔をみていた。シャオは、先ほどの人懐っこい印象から打って変わって、知的な雰囲気を漂わせているように見えた。
「それと、その葬式みたいな服は着替えてくるといい、お前は一度この城を出たら勇者ソフィアなのだからな、それらしい恰好と振る舞いをしてもらわなければならない、今日は祝いの日なのだからな、メソメソしだしたら、直ぐに城にワープさせてしまうから、そのつもりでな」
「わかりました……でも、私はこのあたりの生まれではないので、正しい服装というものが分からないのです。できれば服を選んでほしいのですが……」
「世話がやけるなぁ」シャオが溜息をついていると、脇にいたメイドがこっちに来て言った。
「あの、恐縮ではございますが、その役割、私に任せてもらえないでしょうか、その、ソフィア様のために作った服があるのですが、なかなか言い出せなくて、タンスの肥やしになっているものが幾つかありまして」
「そうか、それじゃ、頼んだぞ」