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駒唄  作者: 無二エル
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お悩み相談

 元々フィクションだけど今回は特にフィクションです

 3月下旬


 今日はテレビの収録日。

 私らの時代と言うトーク番組。


「お二人とも、よろしくお願いします」


 玲奈と話してたら挨拶された。

 囲碁棋士の仲村 霞ちゃんだ。

 

「こちらこそ、7つも歳が違うけどごめんね?」

「え?いえ」

「何故謝るのですか君島さん、仲村さんが戸惑ってるじゃないですか」


 確かに何故謝ったんだろ。

 なんか私と玲奈は元々面識あるし、仲村さんに疎外感を与えそうで。

 今日はその辺も気を付けなくては。


 さて、仲村さんを見るのは10歳の頃プロ入りしてニュースになった時以来だ。

 あの時はほっぺがふっくらしてあどけなさが残っていたけど、14になり顎がシュッとしていた。

 顔は整っている方だ。そして少しだが表情に鋭さを感じる。

 勝負の世界に4年間身を置いている貫禄だろうか。

 若いながらに修羅場を潜って来ているのかも知れない。

 

 収録が始まった。


「仲村さんは10歳で囲碁棋士になったんだよね?すでに4年も第一線で活躍してるんだから、一年目の私からみたら先輩になるのかな」

「い、いえ、先輩も何も業界が違うので」

「そうですよ君島さん」

「まあ最近爆多川賞を獲った玲奈は一番後輩だよね」

「それを言いたかっただけですか」

「お二人は普段も仲が良いんですよね?」

「はい、ですが君島さんは少し薄情な所がありまして」

「ちょ、ちょっと玲奈」


 テレビだよ?私のイメージを守って。

 玲奈は軽く目配せをして、イメージを損なわない範囲で面白おかしく私をいじった。

 コンプラもバッチリ。うーむ、やるね玲奈。


「ふふ、そんな事が」

「だからサークルでは私はヒエラルキーが低いの」

「ほとんど来ないからですよ」


 良い感じで和やかに収録が進んでいく。

 番組のコンセプトにもハマってそう。


「仲村さんは友達と遊ぶ時間とかあるの?」

「いえ、今は時間の殆んどを碁の勉強に使ってます」

「そうだよね、サークルに行く暇なんてないよね」

「仲村さんの話を利用して自分を正当化しないでくださいな」


 レスポンスが早い。知り合いだとやりやすいな。

 私の雑なボケでも拾ってくれるしw


「えと・・・三ノ宮さんの小説読ませて貰いました」


 お、仲村さんが話を振って来たか。

 よし玲奈、全力で拾ってあげましょう。


「感想聞かせて?」

「わたくしのセリフですそれ」

「面白かったです!主人公は、君島さんがモデルなんですか?」

「君島さんを反面教師にして作り上げたので参考にしたのは確かですわ」

「ありのままの私に何の不満があると言うの?」

「・・・不満は無いですわよ。わたくしは君島さんが大好きですわ」


 ・・・お、おう。

 ぼ、ボケのつもりだったんだけどな・・・

 ・・・・・・


「玲奈、自分で言っといてなんで赤くなってんの?」

「き、君島さんこそ」

「くすっ、仲良いんですね。羨ましいです」


 はは、あー恥かし。

 もう玲奈ったら、急にそんな事言われたら照れるに決まってるでしょ?

 え?もう収録終わりですか。

 こんなので良かったのかな、不安だ。



「君島さん」


 玲奈と帰ろうとしたら仲村さんに呼び止められた。

 なになに?どうしたの?


「ちょっとお話が・・・お時間貰えませんか?」

「いいけど・・・」

「わたくしは外しましょうか?」

「先に帰っても良いよ?」

「そういう訳には参りません。どうやって帰るのですか?」

「あ、すみません。一緒に来たんですか?」


 うん、玲奈の家の車で送って貰った。

 帰りもその予定だったんだけど。


「電車で帰るよ」

「いけません。君島さんは有名人なのですから」

「玲奈もでしょ?というか私はたまに公共の交通機関使ってるよ?新幹線とか」

「あ、あの、でしたら三ノ宮さんも一緒に聞いてください」


 いいの?

 じゃあ楽屋で・・・

 ・・・収録も終わったんだし、あんまり長居するのも良くないか。

 場所変える?


「仲村さんはどうやって来たの?」

「電車とバスです・・・私は顔を指されるような事も無いんで」


 ・・・・・・

 何か、切実な話のような気がする。

 よし玲奈、どっか落ち着いて話のできる場所に行こう。



----------



 玲奈の家の車に送って貰い、都内の個室のあるフレンチのお店へ。

 高そうな店。玲奈、いっつもこんなとこに来てんの?


「人払いをしましたわ。呼ぶまで誰も来ないので安心してくださいませ」


 更に、そんな事も出来るんだね。

 よく解らないけど気にしないでおこう。


「で、話って?」

「・・・君島さんは、囲碁界の現状をどのくらい知っていますか?」

「ほとんど知らないかな。あ、井川さんが強いってくらいは知ってるよ」


 井川 雄大

 数年前に囲碁のタイトルを全部独占した人。

 現在何冠だか知らないけど、まだトップでしょ?

 そして、将棋の女流と結婚した人でもある。

 その後、離婚しちゃったけどね。


「日本の囲碁界は、世界戦で結果を残せない事もあって、どんどん人気が無くなっちゃって」

「・・・世界戦?」

「日中韓台湾、囲碁の盛んな東アジアの国々の棋士で争う国の垣根を越えた国際大会です」


 ああ、中国韓国で囲碁が人気あるのは知ってる。

 ヒ○ルの碁で読んだ。


「外国でも盛んなのは羨ましいけどな。ほら将棋って日本でしか人気ないし」

「でも、将棋は何かと話題になる事が多いじゃないですか?面白い人も多いし」


 囲碁にも面白い人居たような。

 鬼頭先生と4949超会議で対談した人面白かったよ。


ちょう先生は確かに面白いですが、他はキャラが弱いんですよ」

「そ、そうなの?」

「話題と言えば、仲村さんが10歳でプロになった時は話題になりませんでした?」

「そうだよ、私ニュースで見たもん」

「・・・その後、私の事をどこかで見たり聞いたりしました?」


 ・・・ううん、全然。

 正直10歳から今日会っていきなり14歳になった印象。


「私は、そこそこの活躍しか出来てないんです」

「・・・そうなの?」

「10歳でプロになったと言っても、将棋界に負けない為の話題作りの特例処置で」


 仲村さんが言うには、当時しごろんフィーバーやら王太君ブームで話題は将棋界の事ばかり。

 囲碁なんて井川さんが史上初の七冠を制覇して盛り上がってもあっという間に鎮火したとか。

 そこで最年少囲碁棋士として投入されたのが仲村 霞ちゃん。

 一時的には話題になったものの、やはりすぐに鎮静化したとか。


「元々早すぎたんだと思います。それなのに無理にプロにされてしまって」

「されてしまった?自分の意思じゃ無かったの?」

「いえ、プロになりたかったのは確かなんですが、大人達には別の思惑があったようで」

「それが話題作りって事か」

「・・・それで、未熟な状態でプロにされてしまったと言う事ですか?」

「はい・・・今思えばバカでした。10歳の私は浮かれてしまって・・・」

「10歳じゃ正確な判断は出来ないよ」


 漠然と、史上最年少棋士になれるのは嬉しかったと。

 でも現実は甘くなく、肩書きで強くなる訳では無い。

 凄く弱い訳でも無いらしいが、世間の史上最年少囲碁棋士に対する期待は、普通の成績では無い。

 それこそ競技は違えど王太君ほどの活躍を期待されそうだな。


「そんな訳で、私のプロデビューは完全に失敗例みたいに言われています」

「失敗例って、まだ14歳なんだしこれからじゃないの」


 タイトルでも獲れば世間はすぐに手の平を返すだろう。

 簡単では無いだろうけど、まだまだいくらでも強くなれる年齢だ。


「囲碁界は元々アピールが下手なんです。20年ほど前に少年誌で連載された囲碁漫画で爆発的な囲碁ブームを作れたはずなのに、そのチャンスも逃してしまって」


 ヒ○ルの碁だw

 そっか、取り込むチャンスだったのに逃したと。


「台湾にとても綺麗な女性棋士が居るんです。その人は当初日本でのプロを目指したんですが、当時の日本囲碁界で特例は認められず・・・」

「・・・え?仲村さんは失礼だけど、特例でプロになったんだよね?」

「はい、それなのにその人は認められなくて・・・それが今や台湾の女性棋士でトップの実力になっています」


 あらら、先見の明が無かったと。

 さらに綺麗な人だと言うのなら、話題作りに持って来いだったのに。


「その人の名前は?」

「白華華さんです」


 スマホで見てみる。

 おお、可愛い系だね。

 身長172?私と一緒だね。


「台湾ではモデルもやってる人ですよ」

「玲奈、この人と私、どっちが綺麗?」

「うーん、写真ではなんとも」

「・・・君島さんの方が綺麗ですよ。私は実際に会ったことあるんで。脚も君島さんの方が全然長いです」


 そう、なら満足。

 って、なんで張り合ってしまったのかしら。


「自分が活躍出来てない現状もあって、私は今後の囲碁界が心配で・・・」

「今後については将棋界だって安泰じゃないよ」


 囲碁も将棋も主催は新聞社が主だ。

 絶賛先細り企業。

 でも確か囲碁のタイトル戦の方が賞金高いんだよね。

 新聞社の優先度合いは囲碁の方が上なのではないだろうか・・・


「ここまで聞いて、君島さんには囲碁界がどう見えますか?」

「え?・・・解らないと言うのが本音だけど・・・でも確か囲碁棋士って引退が無いんだよね?保証されている状況下では頑張らない人も多いんじゃないかな」

「そうなんですよ・・・」


 引退が無いならどれだけ負けても気が楽だ。

 囲碁の給料形態は知らないし聞けないけど、すでに勝つ事を諦め小遣い稼ぎにシフトしてる人が一杯居そう。

 つまりは、悪い言い方をすれば囲碁界は役に立たない者をたくさん抱えていると言う事。


 その辺は難しいよね。棋士にも生活はあるし、組織も一度所属させたなら途中で放り出さず最後まで面倒を見ろとの声もあるし。

 その一方で、弱いならプロの意味が無い、表舞台から退かせろとの声もある。

 どっちの意見も解るけど・・・


「えと、ここからは特に内密にお願いしたいんですが、私は自分が客寄せパンダとして使われた事もあって、囲碁界に貢献の無い人達を負担に思うようになってしまって」


 ああwズルいと思ってるんだねw

 矢面に立てば、期待や不満を一斉に浴びる立場になる。

 思う様に活躍出来なかったのなら、批判も多かっただろう。

 それなのに全然目立たたない場所でおこぼれでお金を貰ってる人達も居る。

 そういう人達を負担に思うのは当たり前かもしれない。


「えと・・・言いにくいんですが、君島さんもそうなんじゃないかなって」

「ああ、客寄せパンダって事?」

「君島さんは特例で棋士になった訳ではありませんわ?」

「いいよ玲奈、仲村さんが言いたい事は解るし、私もその通りだと思ってる」


 私だって客寄せパンダだ。

 女性初の棋士でこの美貌、持って来いの役回りだ。


「現時点では将棋界を背負ってやろうじゃないのくらいに思ってるけど、それはまだ1年目だからで、4年も経てば負担に思い始めるのかも知れないね」

「・・・・・・」


 仲村さんは何も言わない。

 でも肯定の顔だ。

 仲村さんの中でも起こった変化なのかも。


 なるほど、似たような立場に対しての警告だったのかな。

 もしくは憤りを共有したかったとか。


「でも私ってナルシストだからかな。自分が目立つ事に何の不満も無いんだよね」

「き、君島さんたら」

「な、ナルシストなんですか?」


 ええまあ、ナルシストの自惚れ屋です。

 だから客寄せパンダでも良い。

 私の美貌に興味を持ってほしい。で、ついでに将棋も興味持ってほしい。


「そ、そんな考え方があっただなんて」

「君島さん、仲村さんが衝撃を受けてますわよ?」

「仲村さんも可愛いんだから開き直って回りが騒ぐ現状を楽しんだ方が良いと思うけどね」


 所詮はオーディエンスの戯言だ。

 センターに立とうと思うなら、様々な感情に晒されるのは当然だ。

 そしてどんな形であれ、注目される事はプラスになると思う。

 まずは知って貰わないと始まらないからね。


「強がってますわね、そんなに打たれ強くもないクセに」

「う、五月蠅いな!でも、そんな時は玲奈が助けてくれるでしょ?」

「もちろんです」

「・・・そんな考え方があっただなんて」

「あれ?仲村さん?同じ事言ってるよ?」

「呆れてしまったのではないですか?」


 なんでよ!前向きな考え方で素敵じゃない!

 何かを足枷だと思い始めたら歩みが遅くなるよ?


「その通りかもしれませんわね。君島さんもたまには良い事を言いますわ」

「まあね、いつも良い事言ってる人ってそれが標準になってしまうから可哀そうだよね」

「皮肉で言ったんですが」

「解ってるよ」

「ふふっ」


 仲村さんが笑ってる。

 どうしたの?


「いえ、私は小さな事で悩んでいたのだと気付かされました。モヤモヤが急に晴れて今は清々しい気分です」

「そう?なら良かったけど」

「今日はお話し出来て良かったです」


 表情が随分変わったな。

 最初に感じた表情の鋭さは影を潜め、随分穏やかな笑みをたたえるようになった。

 

「じゃあせっかくだしフレンチ食べてく?」

「そうですわね、奢りますわよ?」

「い、いえ、私の話を聞いて貰ったんで私に奢らせてください」

「14歳に奢らせる訳にも」


 玲奈が合図してスタッフを呼ぶ。

 割り勘で良いじゃないの。

 メニューは・・・うわたっか!


「一番安いコースで24000円?恐ろしいわね」

「ええ?わ、私そんなに使ったら怒られるかも」

「だから奢りますわよ」


 そんな訳にはいかないよ。

 玲奈、私は貴方がお金持ちだから友達でいる訳では無いのよ。


「よし、ここは最近またCMが来た私が奢るわ?」

「自慢を織り交ぜて奢って貰っても楽しくありませんわ」

「ほら、爆多川賞作家なんて明日消えるかもしれない訳だし」

「食レポがヘタクソな人に料理の味なんてわかりませんでしょ?」


 言ったわね玲奈。

 久しぶりにツネってやりたい衝動になったわ。

 まあ、大人なのでやりませんけどね。


「ふふっ、本当に仲良いんですね」

「このタイミングでそれを言うのはどうなのかしら?」

「仲村さんはなかなかイジワルですわね」

「ええ?そんなつもりじゃないんですよ?」


 はいはい、取りあえず食事しましょ?

 支払いは譲らないからね。

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