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駒唄  作者: 無二エル
67/93

ハワイ

 8月上旬


「ハ~~~ワ~~~イ~~~~!!!」

「わ?!那由、急に大声出さないでよ!」


 毎年恒例夏合宿。

 今回の舞台はハワイだ。


 就職活動中の遥と那由も来てくれた。

 どう?上手くいってる?


「・・・何社かインターンに行ったよ」

「将棋部でテレビに出たから結構目立つ存在になっちゃったよ」


 ああ、白湯女将棋部の取材ね。

 反響の大きい企画だった。


「でも歴史のある会社では将棋が出来るとウケが良いよ!」

「・・・逆に新しい会社は駄目ね。誰も興味を示さない」


 そうなんだ。

 でも人より有利な材料あるだけマシじゃないの。


「流歌の事聞かれる事も多くてね」

「そうなの?私の名前を利用出来るならしてくれてもいいよ」

「・・・それもちょっとね」


 おお、二人にその気は無いらしい。

 そうだね、自分の持ってる物以外で評価されても後々辛いかも。


「・・・那由、流歌の写真無いかって聞かれない?」

「あるある!下手にありますよなんて言えないよね」


 え?どゆこと?


「欲しいって言われるからね」

「・・・今の時代、怖くて渡せないよね。どこで共有されるか解ったもんじゃないよ」


 ああ、そういう事。

 じゃあ逆に迷惑かけてるんじゃないかな。

 インターンの立場だと断るのも大変そう。


「ううん、逆に良かったよ!そんな事言う人が居る会社には入りたくないし」

「・・・なんというか、人間の本性を見る事が出来るよね」

「なるほど」


 タダで手に入れた物を自慢する人とかいるよなぁ。

 欲に駆られると素が出るのかも知れない。


「着きましたわよ」

「わあ」


 空港からバスに乗り高級別荘地へ。

 バス停から徒歩5分で玲奈の家の別荘に付いた。


「で、でっかいね」

「この辺のお宅はどこもこんなものですわよ」


 綺麗に整備された閑静な別荘地。

 砂浜沿いに大きな邸宅が並んでいる。

 玲奈の家の別荘はその一つ。

 はあ、なんだか圧倒される。

 別荘の持ち主はみんなお金持ちなんだろうな。


「とは言え、31人では流石に狭いと思いますわよ」


 白湯女将棋部31人が全員来た。

 サークルに熱心じゃ無い子も旅行なら来るらしい。

 どうせモブとしての役割しかないのに。

 あ、玲奈が塩ビ盤出してる。


「ではさっそく将棋を・・・」

「さっそく海だね!」


 よし、脱いでしまえ。

 去年の刷り直しだ。


「はあ、もうしょうがないですわね」

「あっさり諦めたね玲奈」

「君島先輩、ウチの水着どうやろか?」

「おお・・・今年は最初からなんて大胆な・・・」

「外国だしぃ、頼子もちょっと背伸びしたぁ」

「シャリーはブラジリアンビキニデース」

「それお尻に食い込むやつでしょ?」


 今年はみんな最初から大胆だった。

 外国だからって浮かれてるなぁ。


「・・・流歌のはおとなしめだね」

「裏切者なのだ」

「著名人になっちゃったからね。行動には気を付けないと」


 ならば納得と皆が頷く。

 私だってちょっとは大胆なの着たいわよ。

 

「浜辺空いてるッスよ」

「別荘地なので留守のお宅が多いと思いますわ」


 今回はプライベートビーチじゃないけどほぼ貸し切りだ。

 少し向こうで犬と遊んでる人が見えるけど豆粒だ。

 こんなに広いビーチを贅沢に使えるなんて。


 白湯女将棋部メンバーが駆けだしていく。

 南国の海で好き勝手にはしゃぐ31人の女の子達。

 将棋なんてやってる場合か。

 太陽が沈むまで遊び続けた。



--------------



「君島先輩、指して貰えますか?」

「木葉ちゃん焼けたねぇ」

「元々焼けやすいんです」


 1年生の木葉ちゃん。

 研修会にも通っているC2の女の子。


「C1になりましたよ」

「へえ、じゃあなろうと思えば女流になれるんだ?」

「いえ、規定が変わったんですよ?女流はB2からになりました」


 ああ、変わったんだ?

 確かに最近増えすぎてるって言われてるもんな。

 そう言えば水上さんもB2昇格で女流になったって言ってたっけ。

 まあ木葉ちゃんは女流になる気は無いんだっけ。


「でも白湯女将棋部に入ってから調子いいですよ。新人戦でも勝てましたし」

「・・・あれ?そう言えば新人戦があったんだね」

「君島さん」


 あ、みんなの白い眼が私に集まる。

 えーん、忘れてたよー。


「貴方と言う人は」「本当に薄情だね!」「木葉ちゃん頑張ったんだよぉ」


 ごめんごめんて。

 で、結果を教えてよ。


 木葉ちゃんがベスト32。

 他の子も初戦はぼちぼち勝てたみたい。


「呉波ちゃんは?」

「初戦で負けたッス」


 呉波ちゃんも1年生の中ではそこそこ強い方なのだが、1回戦で強い人と当たったらしい。

 うーん、組み合わせの妙は仕方ないね。

 一敗失格の大会だとそういう事があるからなぁ。


「じゃ、じゃあ次はオール団体戦だね!(多分)」

「君島さん、無理に興味があるフリしてくださらなくても良いですわよ」

「な、なんでよ!興味津々だよ!」


 多数のジト目が私に降りかかる。

 うう、居心地悪いなぁ。


「まあまあ、君島さんも忙しい人ですから」

「解ってますわ。冗談ですわよ」


 木葉ちゃんが助けてくれた。

 ありがとう!

 まったくこの将棋部の面々と言ったらすぐ私を責めるんだから。


「君島さん」

「反省してまーす」


 ごめんて玲奈。

 せっかくの旅行なんだし楽しもうよ。

 お風呂一緒に入る?お背中流しますよ。

 身の危険を感じるから良い?なんでよ。

 ちょっとくらいFカップを揉ませなさいよ。

 旅行一日目の夜が深けていった。



--------------



 二日目 アララララショッピングセンター


 2日目はお買い物に来た。

 31人で移動となると大騒ぎだね。

 バスもあっという間に一杯になっちゃうし。


 しかし日本人だらけだね。

 私はここでも顔を指される。

 サングラスでカモフラージュしてるのに。


「そんなに脚を出して変装も何も」

「南国なんだから仕方ないじゃないの」


 それでも集団行動してると向こうも声をかけては来ない。

 こんなに女の子がたくさん居ると気後れしちゃうよね。


 さて、来ては見たけど欲しい物が全然無いな。

 ブランドとかはそんなに興味ないし・・・

 まあいいや、他の皆に付き合おう。


「お昼どうします?」

「ハワイだしパンケーキで良いんじゃない?」

「パンケーキなんて食事じゃないよ!ロコモコ食べようよ!」


 那由の勢いに負けレストランへ。

 ・・・うーん、私は食事が合わないな。


「ハワイは軟水なので安心ですわ」

「ああ、玲奈は硬水が合わないんだったね」

「まあ君島さんが私の苦手な物を覚えていて下さるなんて」

「い、嫌味言わないでよ」


 時々チクチクとイジめられるなぁ。

 クスン。


 午後も買い物だが自由行動。

 私は疲れたからあのアイスクリーム屋さんで休んでるよ。

 一人には出来ないからと遥とシャリーと織華ちゃんが付き合ってくれた。


 スマホを向けようとする日本人を遥が注意してくれる。

 ありがとう、嫌な役させちゃってるね。

 てか本当にどうして黙って盗撮しようとするのかな・・・


 日本人は一般的礼儀正しいと言われている。

 でもこういうことがあると疑問に思えて来るよ。

 欧米人なら写真良いかい?って気軽に聞いて来ると思うんだよね。

 節度を守ってくれるなら撮らない事も無いのに。


「シャリーから見てどう思う?」

「日本人はシャイダカラネー、それにヘンタイが多いとはオモウヨー」

「へ、ヘンタイ?」

「下着盗む人イルデショー?あんなのどうスルノー?」


 ああ、あれって日本特有の犯罪なのかな。

 確かに変態だ。


「織華ちゃんは盗まれた事ある?」

「外に干さないから無いですよ。でもこの前何気なく外を見たらドローンが飛んでましてん」

「え?どういう事?」

「わかりまへんけど、怖くて慌ててカーテンを閉めました」


 撮影されたかも知れないって事?

 織華ちゃんのアパートは4階だから油断してたらしい。

 そういう事もあるのか・・・


「・・・流歌は有名人なんだから家の前で変な人に待ち伏せされたりしないの?」

「今のところないかな。でも変なのがウロウロしてたらパパにどやされると思うよ」

「・・・でも、いつもお父さんが居る訳でも無いでしょ?」


 うん、平日は夜しか居ない。

 うーん、昼間に変な人が来たらどうしよう。

 と言うか私の家ってバレてるのかな?


「閑静な住宅街だから治安は良い方だけど・・・」

「・・・用心に越した事はないよ」

「そうですね。セキュリティーのしっかりしたマンションにでも引っ越した方がええと思いますわ」

「ええ?家を出ろって言うの?」


 一人暮らしって事。

 やだやだ、私寂しがりやなんだから。


「・・・薄情なくせに寂しがりやか」

「人に興味は無いけど自分はかまって欲しいんやね」

「オー、自己中ってヤツデスネー」

「忘れたころにチクチクイジめて来ないでよ」


 もう、すぐに蒸し返すんだから。

 それに織華ちゃんのHカップには興味あるよ。

 胸を隠さないでよ。なによ変態を見るみたいに。


「ルカもヘンタイだよー」

「私って人の事言えなかったんだ」


 被害者だと思ってたけど加害者でもあったらしい。

 うーん、目から鱗だ。

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