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駒唄  作者: 無二エル
51/93

お引越し2

公王はまだ全然まとまりません

 大学


「君島さん、部室を引っ越しますわよ」

「ええ?またなの?」

「新入生が15人入りましたの」


 そんなに?!

 面倒見切れんの?


「仕方がないじゃないですか。これも君島さんの影響なんですのよ」


 ううんむ、そう言われると。

 仕方ない、手伝うか。


「初めましてー」「わあ、本物だー」「綺麗~」


 まだ初々しい高校生のような一団の黄色い声に囲まれる。

 プロになって知名度上がったから去年以上だな。


「何処に引っ越すの?」

「最上階ですわ」


 今までの部室も広かったけど、さらに広い部屋があるらしい。 

 課外活動で使うような部屋では無いが、私がプロになった事で学校側も特別に許可してくれたんだとか。

 これで来年もっと増えたらどこに行かされるんだろう。

 2部屋とかに分けないと無理になって来そうだけど。


「その代わり君島さん、来年の学校案内の表紙になって欲しいそうですわ」

「ええ?うん、まあいいけどさ」


 連盟通さなくて大丈夫かな。

 まあ私は白湯女所属でもあるからね。


「遥とシャリーは?」

「例によって足りない備品の買い足しですわ」


 新しい部室に行くと、那由と頼子と花音ちゃんと織華ちゃんとその他2年生が掃除してた。

 うーむ広い。

 これだけ広いと誰も居ない時寂しそうだな。


「君島先輩、勝負なのだ」

「はいはい、引っ越し終わったらね」


 山ほど居るからあっという間に引っ越しが終わる。

 ふう、モニター重かったな。


かちゃ「最上階は遠いデース」

「シャリー、重かったでしょ?遥も」

「・・・平気だよ」

「「「こんにちはー」」」


 遥とシャリーと何人かの新入生が戻って来た。

 これで全部なの?


「今年はどうなの?有望な子は居る?」

「あら君島さん、お気づきになりませんの?相変わらず薄情ですわね」

「え?」

「あのー私、東京で研修会員やってる青山あおやま 木葉このはです」


 誰よ貴方・・・ああ、見たことあるかも!


「うう、やっぱり私の事知りませんでしたか」

「そうは言っても奨励会と研修会って違う日に行われてるじゃない」

「女流棋戦で対局した事もあるんですが」

「う、うん。そうだったかも・・・」


 女王戦の予選かどこかで一度、対局した子だった気がする。

 き、気まずい。

 忘れてたって事はやっぱ私って薄情なのかな。


「クラスは?」

「C2です」


 ふむ、女流一歩手前の実力か。

 因みに女流になる気はあるの?

 将棋は好きだけど、女流の収入ではちょっと?

 そうだよね。


「よし、じゃあ対局する?」

「君島さん、まだ挨拶も済んでないのに」


 そうだね、じゃあちゃっちゃとやろうよ。


 1年生の中には木葉ちゃんの他にも、将棋経験者がチラホラ居た。

 地方の子供大会で優勝経験があるけどしばらくやめてた子や、アマの級位者が何人か。

 うーむ、今年はずば抜けて強い子は居ないけど、粒ぞろいと言った印象。


「それにしても部員が31人に増えたかー」

「一人は殆んど来ませんけどね」

「こ、今年からは違うよ?私もやっとプロになれたし」

「これからが大変なのではないのですか?」


 うん、その通りなんだけどね。

 いよいよ最高峰での私の戦いが始まる。


「・・・これだけ増えたのなら、サークル内で順位戦でもやったら?」

「いいね遥、面白そう」

「・・・まあアタシは6月からインターンが始まるから、参加出来るか解らないけど」


 そっか、遥と那由は就職に向けて忙しくなるんだっけ。

 上手く行くと良いね。


「・・・春季大会まではアタシ達も頑張るからね」

「そっか、個人戦、団体戦とあるんだっけ。団体戦は次勝てばB1だったよね?」

「・・・うん、ここから先は厳しくなるけど、クラスを上げてから就職活動に専念したい」


 遥が言うには、B1まではなんとか行けるかもだけど、A級は修羅の道だとか。

 大学将棋ってレベル高いもんね。


「ねえ、玲奈や遥って、個人では今どれくらいの強さになるのかな」

「プロの先生が言うには、アマチュア四段くらいはあるそうですわよ」


 じゃあ女流2級くらいに相当するのかな。

 アマチュア五段に到達するのは相当大変なので、層の厚いクラスとも言える。

 大学将棋ではごろごろ居るレベル。


「・・・アタシはそれくらいだけど、玲奈はもっと強いと思うよ」

「そうなの?遥がそこまで言うなんて」


 遥が言うには、自分も強くなってるけど、玲奈の伸び率は更に大きいらしい。

 すでに遥を抜かして部内トップに立ってるとか。

 玲奈は謙遜してるみたい。


「まだまだですわ」

「・・・アタシは玲奈が春季大会で優勝しても驚かないよ」

「秋季大会はベスト4だったもんね」

「前にも言いましたがあれは対戦相手に恵まれましたのよ」


 遥がいくら褒めたところで玲奈は控えめに振る舞う。

 うーむ、私には無い謙虚さだ。


「まあ週一でプロの方に教わってるので強くなってあたり前ですわよ」

「私もプロになったしこれからはもっと強くしてあげるられるよ」

「君島さん、自宅に来ていただくプロの方は教え方も上手ですわよ?正直君島さんの教え方とは雲泥の差なので、その辺も練習した方が良いかと」


 ええ?そうなの?

 困るよ。これからはそういう仕事も来るかもしれないのに。


「流歌ちゃんはぁ、傍若無人なトコぉあるもんねぇ」

「優しくないデース」

「な、何よ。みんなそう思ってたの?言ってくれればいいのに」

「お弟子さんも出来たのでしょう?もっと愛情を持って接しないと」


 愛情ならあるわよ。多分。

 でも、私ってどうも薄情なところがあるみたいだからな。

 自分では気づかなかったけど、そういう面が態度に出ているのかも・・・

 

「・・・アタシは、今まで通りで良いと思うけどな。説明も解りやすいよ」

「ボクも」「ウチもです」

「意見が分かれたわね。どうすればいいのよ」


 うーん、相手によって適した接し方が違うと言う事?

 じゃあ玲奈・・・ちゃん、将棋をお指しになりませんか?


「気持ち悪いですわ!」

「どうしろって言うのよ」


 合わない事してもボロが出るだけだ。

 私の個性を尊重してください。

 そんな訳で今日もみんなをズタボロにして良い?

 そういうとこ直せ?仕方ないわね、新入生も居る事だし、手加減してあげるわよ。


「じゃあ勝負なのだ」「わたくしも二面指しでお願いしますわ」

「花音ちゃんは相変わらず挑んで来る姿勢が素晴らしいね」


 将棋も強くなってるし。

 結局一番伸びるのは打たれ強い子なんじゃないかな。

 玲奈も何だかんだ打たれ強いしさ。


「君島さんは打たれ弱いじゃないですか」

「五月蠅いわね、私はよく泣くけどそれを強さに変えてるのよ」


 メンタルは強い方では無い。

 皆の助けが無いと起き上がれない時もある。

 支えて貰えないと私は生きてすらいけないのかもしれない。


 いいのよ。別に一人で強くなったとか、生意気な事を言うつもりもないし。

 これからも泣くだろうし、回りにも迷惑をかけるかもしれない。

 それは申し訳ない気持ちにもなるけれど、支えてくれる人が居るなら同時に心強くもある。

 女が一人で戦って行くには、プロの世界は厳しすぎる。

 私に何が返せるとも解らないけど、これからも寄りかからせてよ。

 いつか借りは返すからさ。


「お互い様ですわ。取りあえず学校案内の件は頼みましたわよ」

「そっか、私はもう玲奈に売られてたんだっけ」

「売るだなんて人聞きの悪い。本当は君島さんよりも、将来ノーベル賞を取るであろうわたくしにしておいた方が箔が付くと学校側にも言ったのですが」


 はいはい、学校側に先見の目が無かったねw

 でも本当にノーベル賞取ったら、学校案内のパンフにもプレミアが付いたかもしれないのにね。


「今は学校一の有名人の座は君島さんにお譲りしますわ」パチン

「むむ・・・玲奈、本当に強くなったね」

「こっちも王手なのだ」パチン

「なんと、花音ちゃんまで」


 2人の伸び率が凄い。

 これは駒落ち減らさないと駄目だな。

 遥と那由が忙しくなっても、まだまだ白湯女将棋部は安泰だと思えた。

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