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駒唄  作者: 無二エル
48/93

はあ、公王の方も書いてはいるけど全然まとまらんのですよ

 私は女性初のプロ棋士になった。

 その後の反動は凄い物だった。


 今は連盟の事務局に来ている。

 仕事依頼が殺到。勿体ないけどほとんどを断る事になる。

 取材も殺到。これも選別しないととてもじゃないけど受けきれない。

 今は春休みだから別にやっても良いんだけど、あまりにも数が多すぎる。

 こんな事してたら将棋の勉強をする時間が無くなってしまう。


「CM?本当ですか?」


 CMまで来たの?私に?

 でもなぁ、まだプロとしての対局を一度もしてないのに。

 これで弱かったらどうすんの?企業としては面目立つの?


「因みに、どこの企業のCMですか?」

「ユニ○ロです」


 ママが個性が無くなるから絶対に着ちゃ駄目って言ってる洋服だ。

 よし、却下。


「勿体ないですね、ギャラが1000万なのに」

「えええ?!!!!」

「ではこちらはどうしますか?ソフト○ンクのCMなんですが、こちらも同じくギャラ1000万」

「大手ばかりじゃないですか。新人のペーペーにそんなに来るのおかしくないですか?」

「話題性はピカイチですからね」


 話題性か。

 今、私は旬なのか。

 でも、王太君とかはどうしてCMに出ていないんだろう。

 私ですらこれだけ大手から来るのなら、王太君に来てもおかしくない話なのに。


「藤谷先生は師匠の意向で、勘違いさせないよう制限しているそうです」


 なるほど。

 確かにCMでドカーンと儲けちゃったらおかしくなるのかも。

 将棋頑張らなくても良いやってなっちゃうのかも。

 今話題だから呼ばれるだけなのに、それがずっと続くと勘違いするのは良くないな。


「解りました。私もしばらくはCMはすべてお断りします」


 勿体ないけど弱くなるような誘惑の誘いには乗れない。

 でも将棋界に関係の深いような企業からのCMなら引き受けますよ。

 断ると角が立つでしょうし。まあ来ればの話ですが。


「では次に、将棋ワールドの企画なんですが、以前ドレスで将棋を指してみたいと言ったとか・・・」


 ああ、言いましたね。

 え?実現するんですか?


「はい、名人も快く引き受けてくれましたよ」


 相手は名人に決定なんだ。

 別に他の方でも・・・

 出来れば羽月さんでも・・・


「将棋界の貴族とドレスを来た新鋭棋士が都内の歴史ある洋風スタジオで優雅に対局、それが来月の将棋ワールドの表紙です」


 もう本決まりらしい。

 はいはい、解りましたよ。


「あと、4月から行われる女王のタイトル防衛戦は棋士になったのでタイトル返上という形になります。挑戦者決定戦を決める本戦決勝戦に残った2人で5番勝負を行ない、勝った方が女王です」

「あああ私の女王がぁぁああ」

「そ、そんなに残念ですか?気持ちは解らないでも無いですが・・・」


 女王の肩書きは好きなので。

 私にふさわしい肩書きだと思いませんか?

 なあおい、こっち見てよ。


「では報告はこれで終わりです。この後は取材を数社から受けてください」


 流されたか。

 はいはい、また同じような質問の繰り返しですね。

 取材も面白い話題なら良いんだけど、どこも似たり寄ったりで・・・



「君島さん、龍王戦6組3回戦の意気込みを聞かせてください」

「プロになって初の対局になるので注目されていると思います。プレッシャーもありますが頑張りたいです」

「えと・・・君島さんが正式にプロになるのは4月1日からだったと思いますが」

「ええ?そうなんですか?」


 し、知らなかった。

 なんか舞い上がってるみたいで恥かしい。


「例年そうなので、君島さんもそうかと」

「では、私は三段として次の龍王戦に望むのでしょうか?」

「い、いや、私に聞かれても・・・」


 記者さんが困っちゃった。

 まあどっちでもいいや。


「女王の返上も決まったらしいですね。残念です、君島さんにピッタリの称号だったのですが」

「ですよね?!・・・あ、いえ、棋士になる以上、棋士のタイトル目指して頑張ります」

「ははは、取りあえずは龍王戦ですか?次を勝てば女性初の3回戦突破と言う事になりますが」


 そうだ、女は6組3回戦突破したこと無いんだっけ。

 だったら取りあえずは突破したい。


「龍王戦は将棋界最高タイトル、簡単に手が届くとも思っていませんが、少しでも近づけるよう頑張りたいです」


 タイトル挑戦は無理でもランキング戦優勝と言う物がある。

 6組で優勝出来ればそれだけで賞金100万くらい、6組決勝に進出出来れば来期は5組になれるし。

 まあそこまで行くだけでも大変なんだけどね。


 6回勝てば優勝で、次は3回戦か。

 でも確か次は前期の三段リーグで四段になった人なんだよね。

 若さもあるし、勢いもある、戦型も最新の物を使って来るだろうし。

 新四段の初戦としては難しい相手だ。


 それでも乗り換えなければならない壁。

 女王戦も無くなったし龍王戦に専念しよう。



---------------------



 3月中旬 都内某所


 将棋ワールドの撮影が行われる。


「わあ、綺麗なドレス」


 まるで結婚式のような青の鮮やかなドレス。

 ツヤツヤ素材で光沢が美しい。

 肩丸出しで胸から下のエレガントな装い。

 髪もやたら盛られてデッカイコサージュをつけられる。


「こういったドレスは着た事ありますか?自分で踏みやすいので気を付けてください」


 勿論着た事ありませんよ。

 歩く時は前の方自分で持つんだよね?

 この手袋もするんですか?

 駒持てるのかなこれ。


 名人もやたら眩しい白の・・・あれはなんて言う衣装なんだろ?

 中世の貴族が着るような衣装を着せられてた。

 対局中お互いが眩しくて番外戦術合戦をしてるみたいになりそう。


「名人、本日は私の思い付きの一言に付き合って頂いて・・・」


 名人は笑いながら構わないよと言ってくれた。

 本人もまたとない機会だから楽しんでいるみたい。

 それならいいけどさ。


 ここで対局するんですか?

 わあ、レトロな洋館にクラッシックな家具。

 これ、名人の私物じゃないですよね?


 そして中央の小さい装飾のゴテゴテしたテーブルに不釣り合いな将棋盤が置いてある。

 盤も洋風に出来なかったのかな・・・おっと、また贅沢言っちゃった。


 クラッシックな椅子に座り、ポーズを取らされる。

 貴族の優雅な午後をイメージしろ?そんな事言われても。

 良く解んないけど、けだるそうなポーズで良い?名人の前で失礼じゃない?

 おお、名人はなりきってるなぁ。


 ひっきりなしにストロボが焚かれる。

 もうちょっと局面進めろ?はいはい。

 対局と言っても勝ち負けは関係無いんだねこれ。


 悩まし気な表情で長考しろ?

 もう言いたい放題ですね・・・

 はっはーん、こう腕を組むと私のBカップでも少しだけ谷間が出来る。

 それ狙いでしょ?違うの?

 名人何笑ってんのよ。


 午後の光が差し込む穏やかなレトロな空間で、撮影は2時間ほど続いた。



---------------



 龍王戦6組 3回戦


 さて、プロになったんだか、なってないんだか解らない時期の対局だ。

 相手は新進気鋭の四段。

 半年前にデビューしたまだまだ新人と言って良い棋士。


 本来なら初戦まではもっと準備期間がある。

 私と一緒にプロになった子は確か5月が初陣だ。

 私の場合は奨励会員の時から棋戦に出てたんだからしょうがない。

 勝ってるからこうやって対局が回って来る訳だし。


 相手の棋譜調べて来たけど、ここまで勝率6割くらい。

 勝ち越してはいるけど、新人ならもうちょっと元気でも良いのにな、と思えるような成績。


 対局が始まった。

 ・・・え?もう立つの?

 ・・・・・・また立つの?

 随分離席が多いね。


 ああ、ちょっと小太りだから正座が苦手なのかも。

 親近感わくなぁ、あ、私は太ってないけどね。

 5時間と言う長い持ち時間の対局はお互い辛いよね。


 うーん、棋風も研究の通りだ・・・

 この戦型だとここが弱点なんだけど。

 攻めてみようかな?そんなに簡単に行くのかな。


 攻めてみた。

 相手は深くため息。

 え?効いたの?反撃の策は無いの?

 

 その後、指し続ける物の、戦況は私側に寄り続ける。

 相手に詰みが見えたところで投了して来た。


 あっけない。

 なによ、これがプロデビュー戦なら良かったのに。

 華々しく一面を飾れたのに。

 中途半端な時期の1勝なんて、誰も見てくれないわ。


 次は・・・4回戦は4月中旬か。

 これが本当のプロデビュー戦か。

 と言うか、実質ランキング戦の準々決勝じゃないの。

 ちょっとデビュー戦白星を狙うにはハードル高すぎるような。

 はあ、黒星デビューは嫌だなぁ。

 回りが一気にトーンダウンしそう。

 王太君みたいにデビューから29連勝は無理としても、出来るだけ良い成績を残して流歌ちゃんブームを・・・


「君島さん、女性初のランキング戦3回戦突破おめでとうございます」

「はい、ですがまだ奨励会員とアマの記録に並んだだけです」

「おお、ではまだまだ上を狙っていくと?」

「もちろん、出る以上は常に上を狙いたいと思っています」

「期待しています」


 ふう、今日の取材はあっさり終わった。

 連盟職員さんが来た。


「君島さん、急な話なんですが、明日聞き手をお願い出来ませんか?」

「え?」

「本来出演予定だった女流の方が体調不良で・・・」

「それで私ですか?でも・・・」


 4949生放送の仕事らしい。

 でも本来聞き手は女流のお仕事。

 私はプロになるのに。


「だからと言うのもあります。プロになってしまえば、もう君島さんには聞き手を頼みづらくなるので」

「・・・解説は誰なんですか?」

「高梨 満雄九段です」


 キャー、大好きな先生だ。

 ・・・そっか、でも言われてみると、聞き手の時しか棋士の先生には会えないんだな。

 これが解説となると、会うのは女流になってしまう訳だ。

 うーむ、それってどうなのかな?


 男性棋士との仕事の方が勿論勉強になるだろう。

 それにペーペーだと中々解説の仕事なんて回って来ないだろうし。


 プロになればその内解説の仕事も回って来ると思っていたけど、聞き手は女だから女同士のコンビになるのか。

 女流の心情はどうだろうか?

 相手が年下ならまだやりやすいけど、年上の女流だとプライドもあるだろうし・・・

 年下の女相手に聞き手なんかしたくないと思うもんじゃないかな。

 うーん。


「えと・・・君島さん?」

「あ、はい、明日ですね。取りあえずやります」

「良かった、おねがいしまーす」


 難しいよね、その辺。

 人間関係が一番難しいって以前パパが言ってたっけ。

 明日、高梨先生に聞いてみようかな。

 困っちゃうか。やめとこ。

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