気の緩み
1月下旬 6回目の三段リーグ
2連敗してしまった。
対局前はおかしな状況だった。
夕日杯で現役タイトルホルダーに勝った私を、今日の対戦相手は畏怖してるようにも見えた。
私はと言えば・・・気が抜けてしまった感じ。
三段リーグを一番に頑張らなければならないのに、夕日杯で燃え尽きてしまった気がした。
ぼーっとしながら、星取表を見る。
・・・上位はあまり崩れてない、一気に7位まで落ちてしまった。
瞬時に現実に引き戻される。
え?7位?わ、私は何してんの?
7位?嘘でしょ?何で?何でこんな事に・・・
今日どうやってここまで来たかも良く覚えていない。
朝、何を食べたかも・・・
心ここにあらずで挑んでしまった・・・
ま、まずは、冷静に状況を判断しないと。
今日までで12戦、その中で10勝2敗が7人か。
もう本当、今期の三段リーグはどうなってるんだろ?
3敗が3人、4敗が3人か。
合格の可能性があるのはここまでくらいかな?
上位との対戦は残っているかな。
・・・一人とは残ってる。
ええ?その外は他力本願になっちゃうの?
ああ、何でこんな事に。
どうして今期はこんなに上位が強いの!
と言うか今日の私の不甲斐なさは何?
なんでボーっとしてんの?
馬鹿だった。
思えば夕日杯の本戦2回戦もあっさり負けてしまった。
あの時から私は気が抜けていたのだろう。
どうすれば・・・いや、勝ちを目指す他ないけど。
相手が落ちるのを期待する他ないなんて。
・・・やっぱり三段リーグ一本に集中するべきだったのかな?
ああ、嘆きの念が出るばかり。
こんな気持ちの中で、自分は取りこぼさず、更に相手の失脚を待つだけになるなんて。
三段リーグはあと3回6局。
頭が痛い、胃が痛い、もう体中が痛い気がする。
次が大事だ。
このままズルズルが一番駄目だ。
取りあえずは流れを変えて、成り行きを見ないと。
追い詰められた。
再度気合を入れ直し、向かって行かないと。
そう言うのは簡単だけど、もし残り全勝しても駄目だったら・・・
駄目駄目、またネガティブになってしまう。
上位の転落を期待する他ない。
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1週間後 2月初旬 7回目の三段リーグ
君島 流歌 現在10勝2敗で7位。
今回は随分間隔が狭い。
立ち直るにはもっと時間が欲しかった。
でも時は無情に来てしまう。
今日1局目の相手は現在5位の人。
この人を引きずりおろせれば、何かが変わるだろうか。
残りも勝手に落ちてくれるだろうか。
そんな訳無いという考えがチラチラして邪魔だ。
こっちはもうそれに賭けるしかないのに。
それに上位に当然勝てると思ってるのがおかしい。
この三段リーグの上位に居る人だよ?
その中で10勝2敗で来てるだけでも奇跡的なのに。
上位6人にも奇跡が来ているのかなぁ?はあ、頭痛い。
対局が始まった。
前回連敗した私の事をどう思ってるかな?
それまでの連勝はまぐれもあった。でも夕日杯はまぐれでは、あそこまで勝ち上がれないよ。
自信を持って、一手一手を丁寧に指していく。
それが相手にも伝わって行く。
今日は簡単には負けないからね。
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その日、私は2勝をあげる事が出来た。
上位を一人、引きずり落とす事も出来た。
なのに何故?
私の順位は未だ6位だ。
他の上位が全然崩れなかったの?
もう私に上位との対局は無いんだよ?
上位同士はどうなの?今日は対戦無かったの?
・・・上位同士も、すでに直接対決はほぼ終わっており、今後あまり対局が無いみたい。
こ、これは、下位に期待しなきゃ駄目って事?
嘘でしょ・・・
下位は惨憺たる状況だ。
上位が星を食いすぎなのだ。
下位12人くらいが真っ黒だもの。
下位だって降段点取りたくないでしょ!
頑張りなさいよ!
私以外の対局で奮起しなさいよ!
はあ、何やってんだろ、私。
虚しい・・・
君島 流歌 現在12勝2敗で6位。
残りの例会は2回、4局で運命が決まる。
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家
将棋の勉強に身が入らない。
こんな事しても無駄なんじゃないかと、つい思ってしまう。
自分の力で打開できる状況では無くなってしまった。
私の上に5人、この5人が残り4連勝する確率ってどれくらいあるの?
4連勝自体はそこまでハードルが高い訳じゃ無い。
このまま行っちゃうんじゃないの?
上位が負ける想像が出来ない。
2位で良いんだ。せめて4人が落ちてくれれば・・・
甘いよね、そんな上手くは・・・
はあ、もう0時か。
全然勉強出来なかった。
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2月中旬 龍王戦 6組ランキング戦 2回戦が行われた。
相手はプロ編入試験でこの世界に入った40代で四段の人。
プロ編入試験とは、アマの大会で一定の成績を残した者に与えられる特例処置。
受けるにも50万円かかるというから驚きだ。
40で将棋界にか・・・凄い情熱だよね。
普通に会社務めで頑張っていた方がお給料良いような。
元奨励会員って人が多いんだよね。
やっぱり夢を諦めきれない物なのだろうか。
・・・私はと言うと、モチベーションが複雑だ。
ここで頑張ってもプロになれないのなら・・・
でも羽月さんのタイトル、勝てば近づけるような気もするし・・・
途切れそうな思いの中で辛勝。
悔しそうな目の前の人を見ながら、情熱では負けているかもしれないと感じた。
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学校
玲奈に会った。
なんか気まずい。私は全然サークルに顔出してない。
玲奈も気を使ってる。三段リーグの状況知ってるからだと思う。
「そ、そう言えばさ、オール学生個人戦はどうなったの?」
もう1か月近く前の事だ。
今頃聞くなんて薄情だと自分でも思う。
「わたくしと東郷さんはベスト16、近藤さんとシャリーさんはベスト32でしたわ」
玲奈と遥はベスト16で那由とシャリーがベスト32か。
今回は頼子が駄目だったか。
いや、そもそも予選突破するだけで凄いんだけどさ。
「凄いね、女の子が4人も・・・」
「まだですわ、神楽坂さんがベスト4に入りましたのよ」
「ええ?!」
織華ちゃんが?
す、凄い事じゃない!
「すでに研修会時の実力を取り戻し、彼女は更なるレベルアップをしていますわ」
「はは・・・そうなんだ。羨ましい」
「・・・君島さん、貴方だって」
玲奈の言葉が途中で止まる。
どうしてそんな心配そうに見てるの?
私、今どんな顔してる?
「・・・他にも居ますわ。他校ですが千野塚さんもベスト16に入りましたのよ」
千野塚・・・?
希羽ちゃんか。私が最初にサインを上げた女の子。
今確か小学6年生で子供名人戦3位。
今年も大会に来てたんだ。
え?小学生でそんなに上位に入ったの?
「そうでした、千野塚さんから言伝を頼まれていたのを思い出しましたわ」
「え?」
「・・・君島さんの活躍を見て、私もプロを目指す決心をしました。4月から中学生になりますが、8月の奨励会試験を受けてみようと思います。それで、不躾なお願いではありますが、君島さんが四段になった暁には、私を弟子にしてくださいませんか?・・・だそうです」
「!!!」
・・・・・・こ・・・言葉が出ないよ。そんなの。
わ、私、まだそんな・・・
で、弟子?確かに最近は若い棋士でも弟子を取るけど、まだプロになってもいないのに。
それに、新四段で弟子を取るってのも。
「千野塚さんは君島さんがプロになる事を疑ってないようでしたわ」
「・・・あ、そっか、その時はまだ私、全勝だったから」
「まだありますわ。オール学生個人戦と同日に行われた夕日杯で、貴方は渡邊さんに勝ってましたわ」
「・・・」
「携帯中継を見ながら、物凄い盛り上がってたんですのよ」
「・・・」
「千野塚さんなんて、まるで自分の事のように凄い凄いと、涙まで流してましたわ」
「うっ・・・」
私まで泣いてしまう。
そんなにも応援してくれてたなんて。
それなのにその後の対局で気を抜いてしまい、私は負けてしまった。
「君島さん、辛いなら頼ってください。何かわたくしに出来る事は無いんですか?」
玲奈の優しい言葉。
頼っていいのかな?
迷惑じゃないのかな?
私はその優しさを返せるのかな?
「じゃ、じゃあ、愚痴を聞いてくれる?私頑張ってるのに・・・」
「いいですよ」
「泣いても良い?出来ればそのFカップの胸で泣かせてほしい」
「かまいませんとも」
「あと、私を叱って、もう少しで挫ける所だった」
「解りましたわ」
玲奈の事だ。本当は三段リーグが終わるまで、黙っているつもりだったのだろう。
でも私の顔を見て、起爆剤が必要だと思ったのかも知れない。
はは、私、そんなにひどい顔をしてたのかな。
「勝っても勝っても全然上が落ちて来ないんだよ!腹立つ!」
「今回は本当に稀なケースみたいですわね。連盟の職員さんも奨励会がいつも以上にピリピリしてると・・・」
「はあ、何人か事故らないかな?」
「いけませんわよ。そんなの後味悪いじゃないですか」
「じゃあ泣くから服脱いで」
「えええ?!!ふ、服の上からじゃ駄目なのですか?」
「駄目、玲奈の胸に顔を埋めて泣きたいの」
「そ、そんな・・・それにここじゃあ」
部室に行こうよ。
今の時間なら誰も居ないかもよ。
・・・ほら居なかった。
「じゃ、じゃあ、しょうがないですわね」
「早く早く、もう涙がちょちょぎれそうだよ」
「は、はあ」
上着を脱ぐ玲奈。
・・・おお、相変わらずの見事な。
「ぶ、ブラもですの?」
「え?いやそこまでは・・・」
「で、ですわよねえ」
あはは。
玲奈私を何だと思ってんの?
じゃあいただきまーす。がばっ。
「きゃあ!!そ、そんないきなり!!」
「うおお!な、なんという圧迫感・・・息が苦しい」
「そんな顔を・・・あっ!」
玲奈の胸に顔を埋め、左右に振る。
はー、巨乳って凄いなー。
「まったく、いやらしい胸してやがんな!」
「な、なんですかその口調、ああ!も、揉まないで!」
いいじゃないの。
ほらこうやって胸の谷間に顔を埋めて、左右から手で圧迫すると凄いよ。
なるほどね、男ってこうやって楽しんでるのね。
挟めると挟めないとじゃ大違いだこれ。
「せ、先輩方?何してはるん?」
ぷはー「おや、貴方は確かHカップの織華ちゃん。傷ついた先輩を慰めてくれないかしら?」
「え?え?」
織華ちゃんが来た。
じゃあ服脱いで。
「えええ?!!!」
「そんなに驚く事かしら?挟めるものを持ってるくせに、挟まないなんて勿体ないじゃない」
「な、何の話やの?」
「こっちは一生挟めないかも知れないんだよ!」
「な、なんでキレてはるの??」
織華ちゃんの胸も堪能した。
ふう・・・
「うう、き、傷物にされましたわ」
「ウチの純潔が・・・」
「はあ、私頑張るよ。頑張るって言っても4勝して、他の結果を待つしか出来ないんだけどね」
「君島さん・・・」「先輩・・・」
「とにかく負けない。もう1敗もしない」
「・・・」「・・・」
「それで駄目ならパパに土下座して期間延長を申し出るよ」
「君島さん・・・わたくしも一緒にお願いしますわ」
「え?君島先輩、期限が決まっとるん?そんな・・・ここまで来たんに」
織華ちゃんは知らなかったか。
ひょっとしたら玲奈にしか言ってなかったかも。
「う、ウチも・・・ウチも一緒に土下座します!」
「ありがとう。Hカップに土下座されて考え変えないようならパパは男じゃないよね」
「可愛い娘ですもの。きっと考えを変えてくれますわ」
「それでも、最大限の努力は見せないと。残り全勝、16勝2敗で私は三段リーグを終えたい」
今期で決めれたらそれに越した事は無い。
でも駄目だった時は・・・助けてください。
お願いします。
ガチャ「あれぇ?流歌ちゃん来てたのぉ?」
「れ、玲奈と織華どうしたの?そんな恰好で」
那由と頼子が来た。
二人の胸をジ――。
「じゃあね!」
「なんで帰るのぉ?!」「何か凄い馬鹿にされた気がするよ!」
うっさいわね!貧乳に用は無いの!
私は頑張るの!




