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駒唄  作者: 無二エル
32/93

団体リーグ戦

 2日後 大学


 やたら顔を指されるようになった。

 どうもタイトル獲得の日の夜のニュースにちょっぴりだけ私が出たらしい。

 ニュースを見なかった人も、取りあえずなんか凄い事したと噂になってるみたい。


 サークル


「じょ、女王が来たよ!」

「どうも、女王です」

「「「きゃ~、かっこい~」」」←1年生

「ルカ!見てたよースゴカッター!」

「私ぃ、泣いちゃいそうでしたぁ」


 アババ見てくれたんだ?

 どう?私おかしくなかった?


「カッコ良かったよ!ボク見惚れちゃった!」

「凛とした袴姿ぁ、綺麗だったぁ」

「ソシテ、ツヨカッタヨー」


 そうでしょそうでしょ?

 もっと言ってもっと言って。


「玲奈と遥は?」

「記録係のお仕事だよぉ」


 何だ居ないんだ。

 彼女達にも自慢したかったのに。


「じゃあ君島先輩勝負なのだ。花音が勝ったら花音が女王なのだ」

「か、花音ちゃん、よお解らんわ」

「皆も団体戦はどうなったの?」

「まだ途中だよ!」

「3週に渡ってぇやるんだよぉ」


 ああ、そうなの?

 ごめんね、相変わらず良く知らなくて。


 大学リーグ団体戦とは。

 A・B1・B2・C!・C2の5つのクラスからなるリーグ戦。

 それぞれのクラスに7人一組の8チーム、C2だけは残り全部の大学が詰め込まれ、総当たりで戦う。

 今年から参戦した我が白湯女将棋はC2から始まる。

 C2はこれで12チームになったので、11チームと戦う事になり大変だとか。


「どれどれ、今の所1位なの?」

「うん、まだ初日が終わっただけだけどね」


 一人1勝で1点、さらに相手チームに勝ちこす事でチームとして1点。

 へえ、高得点取ってるね。


「遥ちゃんが言うにはぁ、C2くらいなら今の白湯女なら余裕だってぇ」

「まあそうだよね。玲奈と遥は個人戦も良かったし、元研修会の織華ちゃんも居るし」

「ぼ、ボクも勝ってるよ!」

「2年は全勝だよぉ」


 ええ?そうなの?

 4戦して全勝だったらしい。

 織華ちゃんも全勝。

 花音ちゃんだけ2勝2敗。


「2勝2敗に女王は渡せないわ?」

「ぐぅ、織華、鍛えて欲しいのだ」

「ええよ」


 来週と再来週は私も見に行くよ。

 私も当分奨励会以外予定が無い。

 女流玉座戦は、去年決定戦まで行ったからシード取れたし。

 もう棋戦対局は7月まで無い。


 あ、女流タイトル取ったし男性棋戦にも呼ばれるかな?

 いくつか出れる棋戦があったはず・・・

 でもスケジュールが来年の3月のリミットを跨ぐような棋戦は出るの厳しいかな。

 それを言ってしまうと、女王の防衛線も来年の4月からなんだけど・・・

 一度パパに相談してみようかな・・・あれ?

 スマホを見たらメッセージが来てた。

 連盟からだった。


―取材がたくさん入ってます。学校が終わったら連盟に来て下さい―


 またかあ。

 でも仕方ないよね。行かなきゃ。

 サークルの皆に別れを告げ連盟へ。

 ふう、マスクマスクと。



 連盟


「まあこんなところにまで自慢しに来たんですの?」

「自慢はしたいけど違うよ!」


 連盟の1階で玲奈と鉢合わせ。

 わざわざ玲奈に会いに来たわけじゃないよ。


「はいはい、おめでとうございます。女王様」

「だから違うんだってば、取材でね」

「・・・おめでとう。流歌」

「遥、今終わったの?」


 2人共早いね。

 女流の記録だったみたい。


「・・・取材の人たくさん来てたよ」

「そっか。2人は一緒に帰るの?」


 今日も玲奈の家の車が迎えに来てた。

 優しい玲奈は送ってあげるのだろう。

 遥は自分の車で来てる訳じゃ無いよね?止めるとこ無いし。


「待っていましょうか?」

「いいよ。いつ終わるか解んないし」

「・・・流歌、マスクして出歩いてるの?」


 ああ、これは念の為だよ。

 一応全国ニュースに出ちゃったからね。


「とは言っても別に芸能人でもないんだから」

「ですが、以前変な人に問い合わされたって言ってませんでした?」


 ああ、あれはまだ高二の頃。

 玲奈よく覚えてるね。


「心配ですわ・・・」

「・・・心配だね」

「でも慣れて行かないと。私はこれからもっと有名になるんだから」


 心配する二人を大丈夫だからと送り出す。

 ・・・でも確かに気を付けるに越した事ないよね。

 遅くなる時はタクシー使おうかな。

 あ、取材忘れてた。



-----------------



 家


「流歌、今日は遅かったな」

「うん、タイトル取ったから取材が多くてね」


 帰って来たら21時すぎてた。

 結局タクシー使っちゃった。


 そうだ、これからの事を相談しないと。



「男性棋戦?経験になるなら出りゃいいんじゃないの?」


 でもね、長期間に渡って行われるから・・・


「リミット超える?それは勝ち進んだ場合だろ?」

ムッ「パパは私がすぐ負けると思ってるの?」

「どのみち女王戦の防衛戦が来年4月ならリミット超えてるじゃないか」


 うう、そ、そうなんですけど。


「でもまあ取っちゃったもんはしょうがない。リミットは越えちゃってるけど防衛戦は戦いなさい」

「・・・それで、また防衛しちゃったら?」

「タイトル返上って出来るのか?」

「ええ?わ、解んない」


 ええ?タイトル返せって言うの?

 そんな・・・


「どのみち棋士になっても女流棋戦には参加できなくなるんじゃねえの?」

「あ」

「お前よぉ、当初の目的忘れてないか?なんで来年の防衛戦の事考えてんだ」


 そうだ。私はそれまでに棋士になって、どのみち女王を返上するんだ。

 浮かれてて忘れてた。

 女王と言う肩書きが好きすぎて返す気無かった。


「だから男性棋戦に出てもいーよ。どのみち棋士になるなら影響無いだろ」

「・・・もし・・・なれなかったら?」

「そん時考えればいいよ」


 そうだね。それでいいか。

 状況によっては連盟に迷惑かけちゃうかもだけど。


「それよりお前は今日タクシーで帰って来たな。500万賞金貰ったからって贅沢は良くないぞ」

「あ、それはね・・・」


 こうなったらついでだ、そっちも話しておくか。



「うーん、心配なら免許とればどうだ?車遊ばせてるから使って良いぞ?」

「免許?」

 

 車の免許?それで移動しろって?

 パパも電車通勤だから車はたまにしか使わない。

 でも棋士って免許取らない人が多いんだよね。

 詰将棋とか考え出すと事故っちゃうんだって。

 私は授業中とかもあまり将棋の事考えないけど・・・

 家とかで集中して考えないと効率悪いと思ってるから大丈夫かな?


「でも駐車料金とか考えれば、タクシーの方が良くない?」

「タクシーにもストーカー居るって聞くけどな」


 ああ、聞いた事あるね。

 結構年配の元アイドルの人がストーカー被害にあってたなぁ。

 それを機に他の芸能人も家の目の前では降りないようにしたって言ってた。

 うーん・・・


 私は可愛い。

 親を安心させる為にも一番安全な方法を選ぶか。


「そうだね、免許取ろうかな。1カ月くらいで取れるんでしょ?」


 そんな訳で免許取ることになった。

 丁度棋戦が無い時で良かった。


 


 願書を出し、6月から免許を取りに行く事になった。

 放課後や、授業の空き時間を利用すれば1か月で取れそう。

 うーん、またサークルになかなか行けなくなるな。

 おめーの席ねぇがら!!!とか言われたらどうしよう。



 次の日曜日、団体リーグ戦の応援に行く。

 滅茶苦茶顔を指される事となる。

 将棋に興味がある人の中では超有名人になってしまった。


 でもこれも一過性の物なんじゃないかと思う。

 学校ではすぐに全然指されなくなった。

 ちょっと盛り上がった後は当たり前になってしまうのが人間だ。

 私が新たに凄い事をしなければこのままトーンダウンするだろう。


 白湯女の所属するC2はチーム数が多いから長引いてる。

 他のクラスより1局多く指すのか。


 え?待ち時間に指導対局ですか?

 貴方達はAクラス?・・・いいけど。

 5面指し、平手で?(ああ、負かして手柄にする気だな)

 じゃあ全力でやりますからね。


 つ、強い。やっぱりこんなにレベル高いのか。

 全員、奨励会4~6級くらいの強さは十分ある。

 5面指しは失敗だったかな。


 でもこっちは奨励会二段で女王、平手で負けるわけには行かない。

 少しでも甘い手を指そうものなら一気に攻め立てる。

 1つ、2つ、勝ち星を挙げて行く。


 悔しそうだ。勝てると思っていたのかな。

 将棋界ではやはり女は舐められているのだろう。

 でもだったらなんで5面指し?

 ズルい事して勝とうとして・・・

 気に食わない。5面全部勝ってやった。

 流石に元気なくなってた。


「君島さん、お待たせしましたわ」

「ああごめん。こっちこそ応援に来たのに」


 結果はどうだった?1位独走?

 さすが白湯女将棋部。


「また私だけ2敗したのだー」

「2勝もしたやないの」


 今日はシャリーと那由も1敗したみたい。

 でもその他は全勝を続けているのか。

 C2とは言え凄いね。


「来週で決まるんだね」

「C1への昇格はほぼ決まりましたわ。君島さんも絡まれるのが嫌なら来週は別に来て下さらなくても」


 ええ?そんな寂しい事言わないでよ。

 私も白湯女将棋部の一員だよ?

 心配してくれての事なのは解るけど・・・


「来るなら来るで私達の健闘をしっかり見ていてほしいですわ」

「本当だよね!まったくあいつらと来たら」


 もう大丈夫だと思うよ。恥をかかせてやったから。

 Aクラスが5人がかりで私から1勝も挙げれなかったんだから。

 身の程を知ったと思う。

 他の人達も見てたから女王の実力が解ったと思う。

 あまり、私の事を舐めないで欲しい。

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