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駒唄  作者: 無二エル
26/93

ファン

 年が明けた。

 今日はオール学生将棋選手権 個人戦。


「今回は都内なんだね」


 団体戦の会場は神奈川だったけど、今回は大学からも近い。

 近代的な建物の中へ入って行く。

 うわあ、凄い人だなー。300人以上は居そう。

 小学生から大学院まで、入り乱れた大会。

 その個人戦の戦いがここで行われる。


「まずは予選ですわよ。2勝で通過、2敗で失格」


 個人戦は2日で行われる。

 予選通過しないと1日で終わってしまう。


「みんな、調子はどう?」

「・・・やれることはやったわ」

「ボクも!連盟に出入りするようになってから、学べる事も多いし」

「玲奈ちゃんが、プロ棋士からぁの指導を教えてくれるのもぉ、大きいよねぇ」

「シャリーも、楽しんでマース」


 皆、ぐんぐん成長している。

 とくに玲奈の成長が凄い。

 遥と同じくらいの強さになったんじゃないかな?

 シャリーの成長は緩やかだが、それでも着実に力をつけてるし、なにより楽しんでくれてる。


 あ、連盟の棋士の皆さま方だ。軽く会釈をする。

 あれ?近づいて来た。

 

 私以外の白湯女将棋部の面々と軽く談笑。

 ・・・私は独りぼっち。

 な、何よ、記録係で仲良くなったの?聞いてないわよ?


「じゃあ頑張ってね。あ、君島さんも女王戦頑張って」

「オタッシャデー」

「棋士の皆さんもぉ、大会の運営お疲れさまですぅ」


 みんなが手を振るけど、私も手を振って良い物か迷う。

 な、なんか、疎外感。


「なによー、みんな仲良さそうに」

「あら君島さん、嫉妬してるんですか?」

「遥まで、いつもはクール気取ってるくせに」

「・・・そ、そんな事無いよ。でも藤屋さんには、この前指導対局して貰ったし」


 そんな事して貰ったの?

 藤屋ふじや ごう九段に?

 藤屋システムの開発者だよ?

 将棋界に革命を起こし、龍王も3期取った面白い人。

 解説者としても大人気。


「なんだか癒着の匂いがするわ?白湯女将棋部、審判と馴れあい勝ち進む」

「ええ?ボクは不正なんてしないよ!」

「セイセイドウドウ、勝負ナリー」

「冗談よ」


 あー羨ましい。

 みんなうまくやってるんだなぁ。

 私なんて記録係が嫌でしょうがなかったのに。


「君島さんも女王戦頑張れって言われてたじゃないですか」

「うん、でも最後についでって感じだった」

「き、気にしすぎだよぉ」


 別にそこまで気にしてないよ。

 それより今日は皆の応援だった。

 白湯女将棋部として頑張って来てね。


  第一局

 玲奈○ 遥○ 那由● 頼子● シャリー●


「つ、強いよぉ」

「ボクは善戦したんだけど・・・」

「すぐオワリマシター」


  第二局

 玲奈○ 遥● 那由○ 頼子○ シャリー●


「玲奈は通過?シャリーは・・・残念だったね」

「オー、不甲斐ないデース・・・」

「敗退者は指導対局指して貰えるみたいだよ?」

「イッテキマース!」ダッ

「遥はまた研修会員と当たったの?」

「・・・うん、団体戦の時と同じ子」


 あらら、運が無いなぁ。


「・・・勝てそうだったんだけどね。終盤ねじり合いになって押し切られた」

「そっかぁ・・・大丈夫、切り替えて次頑張って!」

「・・・うん」

「那由と頼子も1勝おめでとう!次も頑張って!」

「うん」「はぁい」


  第三局

 遥○ 那由○ 頼子●


「頓死ぃ・・・」

「よ、頼子、元気出して」

「ボクの相手は優勝候補だったみたい、でも女に弱いみたい」

「わたくしも第一局で当たりましたわよ?」


 おお、こっちは運がいい。

 哀れな優勝候補、女に免疫無くて敗退。


「・・・でも、全体的に結構レベル高いよ」

「一応全国大会だもんね?でも、白湯女将棋部から3人決勝進出だよ!」


 凄いよ!決勝トーナメントは何人でやるの?

 32人?その中に3人入ったんだよ?

 那由なんて9か月前まで駒を触った事も無かったのに・・・


「す、すみません!サインください!」


 え?私だ。

 小学生の女の子が私に向かって扇子を出している。


「えと・・・私はまだ棋士じゃないよ?」

「し、知ってます。でも、綺麗で強くて憧れで・・・」

キュン「あ、憧れ?」

「女流玉座も決定戦まで行ったし、女王戦も・・・奨励会でも頑張ってるし、いつも星取表見ながら頑張れーって」

キュウン「応援してくれてるの?」

「・・・はい」


 そう言って、頬を赤らめる少女。

 やばい、嬉しすぎる。

 広げた扇子で顔を半分隠し、「サイン、だめですか?」と上目遣い。

 か、可愛すぎる。


 でもサインなんて書いた事無い。

 それに、サイン第一号は玲奈にあげるって決めてるし・・・


「私、サイン書いた事も無いし、多分ヘタクソだよ?」

「そ、それでもいいんです!流歌ちゃんが書いてくれたモノなら!私、励みにして将棋頑張ります!」

キュウウン!「でもいいのかな?棋士でも無いのにそんな偉そうな事」

「いいじゃないですか、君島さん。小さな子の夢を壊してはいけませんわ」


 玲奈・・・

 玲奈がそう言うのなら。

 筆無いしマジックで良い?

 何でもいいって?じゃ、じゃあ。


揮毫きごうもお願いします!」

「む、難しい言葉良く知ってるね」


 揮毫きごうとは。

 棋士がサインをするときはまず言葉を書く。

 よくあるのは『希望』とか『大志』とか『夢』とか前向きな言葉。

 ・・・私の揮毫はもう決めてあるんだよね。


―――『追究』

 解らない事、未知の物をどこまでも深く調べて極めると言う意味。

 そして『追求』の意味も重ねてる。

 羽月さんを追い求める自分の姿を重ねてる。


「君島さん、棋士の揮毫は右から書き始めるのですわよ」

「あ、危ない。そうだった」


 古い書き方になるんだよね。

 危ない危ない。

 

「で、出来た。これで良い?」

「わあ、ありがとうございます!」

「変じゃない?もうちょっと上手く書けって思ってない?」

「君島さんは小心者なところがありますわよね」


 うるさいわね。

 心配しなくても、女の子はすっごく喜んでくれた。

 はあ良かった。緊張したー。

 数日後、ネットオークションに出てたらどうしよう。

 多分相当凹む。


「良かったですわね。可愛いファンが居て」


 うん、本当に嬉しかった。

 こっちが知らないだけで、見てくれてる人は居るんだな。

 自分を応援してくれてる人は居るんだな・・・

 名前くらい聞いておけば良かった。


「そろそろ帰りますわよ」

「流歌ちゃん、にやけ過ぎだよぉ」

「ええ?そんな事無いよ!」

「ねえ流歌、ボク明日に備えて特訓して欲しいんだけど」

「じゃあ大学行く?」

「シャリーは明日、ブブゼラで応援シマース」

「・・・シャリー駄目だよ」


 そんな感じで初日は終わった。



-------------



 オール学生将棋選手権 個人戦 二日目


 今日は32人で行われるトーナメント戦。

 会場は同じだが、狭い部屋に変わった。


「でも、すでに全国の学生のベスト32なんだね」

「あら、それは言いすぎですわ?」

「・・・遠い人は来ないからね」


 そっか、交通費が大変な人は来ないか。

 宿泊費もかかるし。

 結局は関東の学生中心の大会なのかな。


「・・・強豪の不参加も多いけど、でもここから先はどのみち強いよ?」

「ぼ、ボク、大丈夫かな?」


 トーナメント1回戦、3人共負けた。


「あああ」

「君島さん、がっくりしすぎです。わたくし達の力はまだまだですから」

「と言うか、女の子がボク達しか残って無かったね」

「・・・女が3人も残ったのは始めてみたいだよ」


 ええ?それって凄い事じゃない!

 強いんだね、白湯女将棋部。


「ねえ次は?玲奈、次の大会はいつなの?」

「・・・コホン、次は希望者だけになりますが、4月下旬に行われる春季関東大会です」

「希望者?って事は、レベル高いの?」


 前回スルーした秋季関東大会と主催者が同じで、同等くらいレベルが高いらしい。

 あと3カ月でどこまで強くなれるか。


「レイナー、シャリーは女流にデテモイイ?」

「そうですわね・・・それを逃すと9月まで大会がありませんし・・・」


 春季関東大会にも個人戦・女流戦・団体戦(7人制)とある。

 女流の大会はなるべく出ないつもりだったらしいけど、そんなに空いちゃうんじゃね。

 

「いいですわ。各自各々のレベルを考えエントリーしてくださいませ」

「ボクはどっちにしようかな・・・」

「頼子はぁ、女流にしよぉ」

「オー、ヨリコ、マケナイヨー」

「・・・新入生が入ったら、団体戦はどうするの?」

「出ますわよ」


 え?出るの確定なんだ?

 レベル高いなら他の人の意見を聞いた方が良いんじゃ・・・


「リーグ戦ですの。私達は初エントリーなので一番下から始まるんですのよ」


 将棋の順位戦みたいに、カテゴリー分けされてるらしい。

 A・B1・B2・C1・C2の5つ。

 大会ごとに成績順に入れ替えが行われる。

 

「へえ、そんな面白そうな・・・」

「ルカ、シャリーを特訓ダヨ。新入生に負けたらコマルヨー」

「そうだね。やる気でた?」

「モトモトアルヨー!」ぷんぷん


 そっかあ。そんな事やってるんだね。

 面白いなぁ。


「もう、君島さんは大学将棋の事を全然知らないんですから」

「もっとぉ、興味持ってよぉ」

「ええ?きょ、興味あるよ?私も出れるなら出たいくらいだよ」

「ボクたちも頑張ってるんだよ?」

「し、知ってるよ。今日も頑張ってたし」

「・・・奨励会員様は、下々まで目が届かないんだよ」

「遥まで!やめてよまた疎外感感じちゃうでしょ?」

「オー、村八分デスカー?」


 こ、孤高の虎です!

 でもちょっぴり寂しがり屋さんだよ!

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