初めての団体戦
9月初旬
本日は女流玉座戦のの準決勝。
相手は渡来 愛女流玉位。
タイトルが色々ややこしいから一度おさらい。
女流のタイトルには、
・聖麗 new
・女王
・女流玉座
・女流名人
・女流玉位
・女流玉将
・倉敷紅花
現在7つのタイトルがある。
上から順にタイトルの位が高いと思ってね。
渡来さんは上から五つ目の女流玉位のタイトルホルダー。
男性棋士との対局でも良い勝率を残している。
強敵だ。
女流棋戦はそれ程注目度が高くないけど、それでも準決勝まで来ると、さすがに取材の数も増えて来た。
私の露出も増えて来た。
実生活ではまだ弊害は無いが、一度だけ街で顔を指された。
うーん、住みづらくなっていくのかなー。
「うーん、やっぱりちょっと派手なんじゃないかなー?」
連盟のトイレで自分の服装をチェック。
さすがに注目度が高くなるにつれ、対局で着る服も落ち着いた物を選んだ方が良いんじゃないかと思い始めてる。
今はママの見立ての服を着てるんだけど、将棋の対局をするにはちょっと派手すぎるんだよね。
スカートは短いのばっかだし・・・
でも以前には金髪パンチパーマに紫のシャツで対局してた人も居るし。
ちょっと考えすぎなのかな?
まあ、タイトル挑戦ともなれば、和服着用が必須になる。
そこに行くまではこのままでいいのかな。
よし、対局時間が近づいて来た。
対局室に行って準備しないと。
---------
振り駒で先手を引けた。
やった、ついてる。
でも渡来さんはあまり先後関係無いみたいなんだよね。
この日に向けて、出来る事はやったつもりだ。
渡来さんの棋譜を研究し、対策を練り上げた。
私に利があるとしたら、私の棋譜があまり無い事だろう。
ここまでの女流玉座戦の棋譜と、女王予選の棋譜しかないのだから。
それとも渡来さんは私の研究なんてしてないかな?。
どちらにしろ、今現在残ってる自分の棋譜での戦型では戦わないつもり。
それだけに先手を取れた事は運が良かったと思う。
ここまで比較的楽に上がれた事も運が良かったと思う。
手の内を隠す事が出来た。これは大きな武器になるはず。
早く始まらないかな。定刻が待ち遠しい。
流歌は落ち着いて対局に挑む準備が出来ていた。
--------------------
戦局は終盤、局面は先手有利。
渡来さんが食らいついて来る。
渡来さんの最後の攻めをしのぎきる事が出来れば、私の勝ちだ。
大丈夫、渡来さんは駒が足りない。
あと一歩で詰みに届かない。
それでも何かないかと探し続ける。
この時間は怖い物だ。
私に見逃しがあったらどうしよう。
私が知りもしない詰み筋があったらどうしよう。
渡来さんが神の一手を見つけたらどうしよう。
渡来さんの時間が減って行く。
その減り方が緩やかに思えるのは、自分に絶対の自信が無いからだろうか。
盤面に潜む悪魔に怯えているのだろうか。
渡来さんが駒台に手を添える。
「負けました」
―――――勝った。
------------------
3日後
今日はオール学生団体戦。
5人一組の団体戦。
エントリーだけで64?
って事は320人が戦うの?凄い大会だね。
「ええ?ここでやるんだ?」
会場に付いてみると、施設の屋内広場に机と盤が並べてあった。
天上がガラスになっている。
残暑の日光が注ぎ込む
これ中は暑くなるんじゃないかな。
『おいあの子・・・』
『実物も可愛いなぁ』
街では一度しか顔を指された事はないが、どうやらここではもうちょっと有名らしい。
まあ私の場合、歩けば誰もが振り返るんだけどね。ふふん。
「君島さん、調子に乗ってるとこ悪いんですが、飲み物を買ってきていただけませんか?」
うん、そうだね。
日中は絶対暑くなるよ、ここ。
水分補給は大事だよ。
あ、調子に乗ってるって誰がよ!
おや、連盟の会長が来てる。
遠くからだけど、ペコリと挨拶。
棋士も何人か来てる。
へえ、人気棋士も結構くるんだな・・・
スポンサーが大きなところなんだろうか。
「みんな、水を買って来たよ」
「る、流歌ぁ、ボク緊張しちゃって」
「え?トイレ?始まる前に行っておかないと駄目よ?」
「る、流歌ちゃん、男の子だらけだよぉ?」
「女の子だけのチームって私達だけみたいね」
那由と頼子は緊張が酷い。
那由は前回平気そうだったのに、モチベーションが変わったからだろうか。
「遥、緊張してない?」
「・・・平気だけど暑いね」
うっすら汗をかくクールビューティ。
差し込む光を恨めしそうに見あげる姿が絵になる。
「シャリー?平気?」
「オー、ジャパンの湿気、困るデース」
慣れてても嫌な物だ。慣れないシャリーはもっと辛いだろう。
あ、そんなに襟元広げたら・・・
胸の谷間が見える。
ただでさえ草食系の多い大会なのに平気かな。
「玲奈?!ブラウスが・・・」
「暑いですわ・・・」
汗で白のブラウスが肌に張り付いて透けてるよ?
・・・やっぱりアンタって。
「隠れ巨乳だったんだね」
「な、なんですか!巨乳だなんてハレンチな!」
いやだって、体の線がハッキリ出てるよ。
綺麗な刺繍のブラも・・・
「集中したいので変な事言わないでくださいませ」
「う、うん、ごめん」
ヒソ「・・・いいの?対戦相手の目の毒だよ」
ヒソ「ほ、本人がほっといてくれって言ってるし」
「・・・まあいいか。番外戦術みたいなもんだね」
そうだね。あのおっぱいで勝ち星増やせるかも。
頑張れ、玲奈のおっぱい。
対戦相手が決まった。
わあ、超有名大学から田舎の小学校まで・・・
カテゴリーが無いっておもしろすぎるな。
でもこれ、勝ち点方式だから弱いところとばかりあたれば、優勝も夢では無い?
「・・・強いところが3校入ってるよ」
「そ、そうなんだ。玲奈、今回は優勝狙うの?」
「いいえ、自分達を見つめ直し、まだそこまでの力は無いと判断していますわ」ぼよん
「・・・・・・」
「わたくし達も今回は、謙虚に1勝1勝を積み重ねようと決めたんですのよ」ぼよんぼよん
「・・・・・・」
「負けても5回は戦えるなんて良い大会ですわよね。おーっほっほっほっほ」ぼよんぼよんぼよん
擬音が邪魔をして、玲奈の言葉が全然耳に入って来ない。
と、取りあえず頑張ってー。
参加者が席に着く。
応援席からは遠くて盤面見えないなぁ。
しかし暑いな・・・
連盟会長が来た。
「あの子達が記録係をやってくれるのかい?」
「はい、みんな良い子ですよ」
「助かるよ。手当が安いのに引き受けてくれて」
会長は手当てが安いと思ってるんだね。
給金を引き上げて記録係を確保するのは無理なんですか?
「ああ、連盟も火の車でね」
赤字続きだとは聞いた事あるけど・・・
・・・運営の事は私には解らない。
口出すなんておこがましいか。
「ああ、遅くなったけど、女流玉座挑戦者決定戦進出おめでとう。申し訳ない、こっちを先に言うべきだった」
「いえ、ありがとうございます」
今の会長は人格者みたい。
これが2代前の米倉会長だと親は絶対私の将棋界入りを許さなかったと思う。
私はおもしろくて好きなおじいちゃんだったんだけどね。
残念ながら病気でお亡くなりになられた。
「それでは、失礼するよ」
「はい、挑戦者決定戦も頑張ります」
「期待しているよ」
あ、1回戦が終わったみたい。
「か、勝ちましたわ!」ぼよんぼよん
「え?おめでとう!」
「私は負けぇ」「ぼ、ボクも」
「シャリーは勝ったデース」
「ええ?おめでとう!」
遥は?勝ったの?凄い、3勝じゃない!
でもシャリーが勝って、頼子と那由が負けたのか。
「・・・シャリーの相手は数合わせだったみたい」
ああ、そう言う事か。
団体戦だからそう言う事あるよね。
「でも勝ちは勝ちだよシャリー!」
「イエース、嬉しいデース」
「ぼ、ボクも次は」「わ、私だってぇ」
次は?小学生?
よーし、この波に乗って頑張って来て!
「え?遥が負けたの?」
「・・・研修会員らしいよ」
どの子?・・・ああ、観たことあるかも。
研修会員でも、上位の方は強いからね。
奨励会員はアマの大会に出る事は出来ないけど、研修会員は出てもOK。
「・・・でも他の皆が勝ってくれてよかった」
「勝てたよぉ!流歌ちゃん!」
「おめでとう!」
「ボクも初勝利、でも相手の子泣いちゃった」
「あらら、しょ、小学生だもんね」
シャリーは2連勝じゃない!
え?また一番弱い子と当たった?
ラッキー?なのかな。
続いて3回戦。
「ぜ、全敗ですわ」ぼよん
「あらら(おっぱいパワーが効かなかったか)」
「・・・相手は一昨年の優勝校。棋士が指導に来てるんだって」
「ああ、そんな学校と当たっちゃたんだ・・・」
「・・・ごめん、言い訳だね。甘い手を指した自分が悪いんだ」
「自分を責めるのも良くないよ?気を取り直して次も頑張って!取りあえずお昼休憩だよ!」
昼食休憩。
主催者からお弁当が出た。
「今の所、7勝8敗?」
「・・・のこり2校も強いけど、食らいついて見せる」
「ぼ、ボクも、あと1勝くらい・・・いや、2勝狙わないと」
「気負っちゃ駄目だよ?自然体を心がけて」
「うわぁ、日差しが強くなって来たよぉ?」
(おっぱい頑張れ)
4戦目
玲奈○ 遥○ 那由● 頼子○ シャリー●
「凄い!頼子、勝ったの?」
「えへへぇ、相手のミスだけどぉ・・・」
「それでも凄いよ!」
5戦目
玲奈○ 遥○ 那由○ 頼子● シャリー●
「また3勝?!那由良くやった!」ぎゅぅぅう
「うわあ!汗でビショビショだから汚いよ?」
汚い訳無いでしょ。
戦い抜いた誇り高き乙女達。
「13勝12敗?勝ち越しじゃない!」
「流歌ちゃん、落ち着いてぇ」
「だって創部一年目でだよ?凄くない?」
「オー、シャリーは最初だけデシター」
「そんな事無いよ!2勝だって凄い事なんだから」
そして4勝を挙げたおっぱい。
玲奈、本当に強くなったんだね。
「いえ、わたくしも相手のミスが多かったように思いますわ」ぼよんぼよん
「・・・・・・」
「それも序盤から・・・何か皆さん心ここにあらずといった感じで」
「そ、そう。そうだ、記念写真撮ろうよ!あ、写真撮って貰って良いですかー?」
64校参加した初の団体戦の順位は29位だった。
上出来だよ。5カ月前まで初心者が3人居たんだよ?
「流歌さん、記念写真を私のスマホにも・・・ま!まあ!服が透けてるじゃないですか!」
「今頃気付いたの?」
「お、お嫁に行けませんわーーー」
記念写真は削除させられた。
せっかくの皆の思い出だったのに。




